【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード28:全力で休む! – パイレーツ・オブ・カリビアン

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード28:全力で休む! - パイレーツ・オブ・カリビアン

映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』に登場する人魚の制作責任者として、天国(ハワイ、カウアイ島)で、地獄(3週間毎日が締め切り)の日々を闘いつづける片桐さん。やがて、その闘いにも...

>>エピソード26:この1杯のために のつづき

この仕事に関わって、毎日締め切りの中での長時間労働。さすがに、ここまで働き詰めは心にも体にも悪い。何しろ、寝てる以外は仕事しているのだから。さすがに集中力が弱って、毎日追われる締め切りに気が狂いそうになってきていたので、5週間目くらいの日曜日に1日だけ休む事にした。ただ、この休みは、この前みたいに たらたら したくない。「全力で休みを満喫したい! 全力で!」 そう決心した私は、来るべきその日の計画を立てる。

「午前中に乗馬ツアー(ランチ&川遊び付き)、午後は海でスノーケリング、夕方からパイナップル農場に行き、それから、どこどこで夕飯..」と綿密に計画を立てて、レンタカーを予約して、いざ出発。参加したいアメリカ人クルーを引き連れて、ツアーコーディネーターまでしてしまった。そこまで全力で遊びたかったのだ。そして、無事計画通り、全力で休日を満喫したのであった。

『ジュラシック・パーク』の撮影場だけあって、自然がものすごい!

空気がきれいだからなのか、虹がめっちゃ濃い。しかも 2重に!

これで本当に思ったのだけど、休むと、そのあとの仕事の効率が本当に良くなる。世の中の働き過ぎのサラリーマンたちも、思い切って、試してほしいと思います。

さて、残りは後2週間。ラストスパートだ! これから人魚のペイントに入るわけだが、パーツはまだ全部そろっていない。パーツの組み立て方などあれこれ指示をしながら、ペイント開始。

海の生き物の透明感が出るようなペイント

主にペイントはエアブラシを使用するわけだが、エアブラシは一定時間に噴ける量が決まっているため、それがもどかしい。気持ちが焦っているため、ついつい、指に力が入ってしまう。だんだん、指と腕が痛くなってくる。エアブラシの重さも苦痛に感じてくる。あれこれ持ち方を変えながら、2週間のエアブラシ地獄。何もしなくても指が痛い! おかげで、その後1年間、利き腕の腱鞘炎に悩まされる事になるのである。

そんな苦労をして、ようやく終える事ができたわけだが、よかったところは、誰にも干渉されずに自分の意志ですべてできた事。今まで、これほど自由にできた事はかつてないほどの自由さでした。この人魚を見た多くの人たちからは「今まで見た作り物の中でも1番いい」という意見も多く、自分にとっても、こんな時間と状況では最高の物ができたのでした。

この人魚を見た多くの人たちからは「今まで見た作り物の中でも1番いい」という意見も多く..

しかし、ゴージャスで、ダイナマイトで、リッチで、セレブなプールには結局入れずに、撮影のためカウアイ島を離れ、オアフ島に向かうのであった...(つづく)

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■片桐裕司さんのブログ
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■ハリウッドで活躍するキャラクターデザイナー 片桐裕司による彫刻セミナー
http://chokokuseminar.com/ ※仙台/名古屋(9月)申し込み受付中

映画『ゲヘナ 死の生ける場所 (Gehenna Where Death Lives)』予告編 (2分8秒/ 監督:片桐裕司 / 日本語字幕)