【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード14:スーパーマンのパンツ

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード14:スーパーマンのパンツ

「パンツをなくしても、パンツがないという事で、結局、パンツの話題になるんじゃないか」と心の中でパンツったが、ここはクールに「目立たせない方が無難でしょう」と答えました

さて、今回は『マン・オブ・スティール』(2013年)のお話。

この映画では、私は、コスチュームデザイナーのもとで、スーパーマンのコスチュームを粘土でデザインしました。このデザインで最も焦点をあてていたのが「パンツをどうするか」という事。原作や今までの映画では、スーパーマンの 赤いパンツ に 黄色いベルト はトレードマーク。昔はそれでよかったが、現代ではあまり通用するデザインではないですね。

監督のザック・スナイダー が言っていた事は、もしパンツをかっこ良く作っても、映画を見たファンたちは「いやあ、スーパーマンのコスチュームのパンツは格好良くデザインしたなぁ」「それより、コスチューム全体はどうだった?」「え? あれ... なんかあんまり覚えてないけど、でもあのパンツのデザインはうまくやったなぁ」などと印象がパンツしか残らないだろうと危惧しており、それならば「いっその事、パンツはなくしてしまえ」という考えでした(つまりスーパーマンがフリチンになるわけだから、R指定から成人向け.. そういう意味ではない)。

監督から意見を聞かれましたが「パンツをなくしても、パンツがないという事で、結局、パンツの話題になるんじゃないか」と心の中でパンツったが、ここはクールに「目立たせない方が無難でしょう」と答えました。

この映画ではコスチュームのデザインを見るための「マケット」と呼ばれる全身像と、実際のスーパーマンのスーツの「筋肉の形」をちょこっと造形しました。

「スーパーマンが飛び立つ瞬間を作ってくれ」という難しいリクエスト。"一粒300米" じゃありません

デザインが確定されずに仕事が進まなかった時に『パシフィック・リム』の話が来て、『マン・オブ・スティール』の仕事は短期間で終わりました。

その後、映画が出来上がって見てみると上手く撮影されていて、パンツのエピソードを一切思い出さなかったほど全く気になりませんでした。"さすがは、ザック・スナイダー監督" といったところです。

 

★バックナンバーはこちらから

■片桐裕司さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/hollywoodfx/

■ハリウッドで活躍するキャラクターデザイナー 片桐裕司による彫刻セミナー
http://chokokuseminar.com/

映画『ゲヘナ 死の生ける場所 (Gehenna Where Death Lives)』予告編 (2分8秒/ 監督:片桐裕司 / 日本語字幕)