【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード14:スーパーマンのパンツ
ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!

エピソード14:スーパーマンのパンツ
「パンツをなくしても、パンツがないという事で、結局、パンツの話題になるんじゃないか」と心の中でパンツったが、ここはクールに「目立たせない方が無難でしょう」と答えました
さて、今回は『マン・オブ・スティール』(2013年)のお話。
この映画では、私は、コスチュームデザイナーのもとで、スーパーマンのコスチュームを粘土でデザインしました。このデザインで最も焦点をあてていたのが「パンツをどうするか」という事。原作や今までの映画では、スーパーマンの 赤いパンツ に 黄色いベルト はトレードマーク。昔はそれでよかったが、現代ではあまり通用するデザインではないですね。
監督のザック・スナイダー が言っていた事は、もしパンツをかっこ良く作っても、映画を見たファンたちは「いやあ、スーパーマンのコスチュームのパンツは格好良くデザインしたなぁ」「それより、コスチューム全体はどうだった?」「え? あれ... なんかあんまり覚えてないけど、でもあのパンツのデザインはうまくやったなぁ」などと印象がパンツしか残らないだろうと危惧しており、それならば「いっその事、パンツはなくしてしまえ」という考えでした(つまりスーパーマンがフリチンになるわけだから、R指定から成人向け.. そういう意味ではない)。
監督から意見を聞かれましたが「パンツをなくしても、パンツがないという事で、結局、パンツの話題になるんじゃないか」と心の中でパンツったが、ここはクールに「目立たせない方が無難でしょう」と答えました。
この映画ではコスチュームのデザインを見るための「マケット」と呼ばれる全身像と、実際のスーパーマンのスーツの「筋肉の形」をちょこっと造形しました。
「スーパーマンが飛び立つ瞬間を作ってくれ」という難しいリクエスト。"一粒300米" じゃありません
デザインが確定されずに仕事が進まなかった時に『パシフィック・リム』の話が来て、『マン・オブ・スティール』の仕事は短期間で終わりました。
その後、映画が出来上がって見てみると上手く撮影されていて、パンツのエピソードを一切思い出さなかったほど全く気になりませんでした。"さすがは、ザック・スナイダー監督" といったところです。
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