【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード11:神のお告げ『バイオハザード4』

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード11:神のお告げ『バイオハザード4』

もしかして、もしかして、私はゾンビに変わろうとしているのだろうか? そうだ!きっとそうに違いない!

随分と昔の話になるが『バイオハザード4』(カプコン、2005年) が出た時、友達の家で少し遊ばせてもらった。めちゃくちゃ面白かった。しかし、私はソフトを持っていなかった。欲しくてしょうがなかった...。これから記す事は、その後、私が体験する事になった世にも恐ろしい恐怖の記録である。

その日は金曜日だった
仕事場で私はなぜか悶々としていた
仕事が結構暇だった。頭痛も少しする

風邪か?
きっとそうだ! 私は風邪をひいてるのだ!
そう判断した私は早退する事にした

時間は朝10時
帰り道に、なぜか、体がゲーム屋へ
まるで、見えない何かに操られているようだ...

決して、これは決して、私の意思ではない
仕事をサボってゲームをするなんて...

そんな思いと裏腹に、家に帰ると手には『バイオハザード4』のソフトが。
なぜだろう... 記憶がない... 風邪... きっと風邪のせいに違いない!

「記憶がなくてもソフトがある」という事はまぎれもない事実
きっと、これは神が私に何かを伝えようとしているに違いない
もちろんそれはゲームの中に...

そう判断した私は早速プレイする事にした
本当は頭が痛くてやりたくもなかったのだが...

神からのお告げを待つ事8時間
頭痛だんだんひどくなる
お告げは何も聞こえない
仕方がないのでその日は寝る事にした
明日に期待しよう...

頭痛だんだんひどくなる、お告げは何も聞こえない翌日、目が覚めた。昨日受けれなかった神からのお告げを受けるために Play Station のスイッチを入れる。今日は土曜日。時間はたっぷりある

お告げを待つ事10時間
さすがに疲れた
今日もお告げは聞けなかった...
明日に期待しながら眠りにつく

その夜、私は夢を見た
ゾンビを殺しまくる夢
いったい、これは何なのだろう?
誰かが何かを私に伝えようとしているのか?
それともこれがお告げ?

夢の中、とにかく必死に撃ちまくり、殺しまくった
クリティカルヒットが出たときの頭の爆発がたまらない。快感すら覚える
私はどうかしてしまったのだろうか...?

翌日
あまり眠った気がしない
しかし、私には神のお告げを聞くという義務が ゲームのスイッチを入れた

さらにそのまま10時間
今日もお告げは聞けなかった...

目がチカチカする
鼻水も出てくる
いったい私の体はどうなってしまったんだ...

その夜、再び私は夢を見た
まるで昨晩の続きのようにゾンビを殺しまくっている。でかい怪物まで現れだした
ゾンビの頭を爆発させるのが爽快でしょうがない
ああ... このまま私は本当にどうかなってしまうのだろうか...

翌日
月曜日だ
仕事に行かねばならない
ん? どうしたんだ?
足が前に進まない
頭が痛い... 風邪か...? いや...

もしかして、もしかして、私はゾンビに変わろうとしているのだろうか?
そうだ!きっとそうに違いない! これは仕事どころではない
なんとしても、神のお告げを聞かねば、本当にゾンビになってしまう!
わらにもすがる思いで Play Station のスイッチを入れる

気がつくと夜10時
どうやら記憶を失っていたようだ
目の前のテレビの画面には私の4日間の記録が出ている
殺したゾンビ1000体以上...

なぜか私は、何かをやりきったような満足感と爽快感に浸っていた
目のチカチカは相変わらずあるが、なぜか気分がいい
どうやら私はゾンビにならずにすんだようだ
この4日間の体験は決して無駄ではなかった

明日は... 明日こそは仕事に行けるだろう...

これは私が体験した、神のお告げを求めてさまよった4日間の記録である。信じてくれとは言わない。決して、決して、仕事をさぼって、ひたすらゲームをしていたわけでは...
(つづく?)

【後日談】
その時に勤めていたスタジオはしっかりしたところで、休みは病欠扱いになり、遊んで... いや、お告げを求めている日もちゃんと給料が出たのでした。それから、もちろん、その時は休んでも仕事に差し支えないタイミングであったことは言うまでもない。... というのはもちろん内緒である。

 

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