【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード63:勇者たごさく – ゲームのキャラに変な名前を..

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!(※今回は少々品のない表現が含まれています。ご注意ください)


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード63:勇者たごさく - ゲームのキャラに変な名前を..

かつて中学生であった私は『週刊少年ジャンプ』で紹介された、見たこともないゲームの特集に夢中になった。まさに「なんじゃこりゃぁ!!」と中学生の私が叫んでしまうほど、そのゲームは衝撃であった

時はファミコン全盛期。様々なゲームをプレイしてきたが、今までこんなゲームは見たことがない! そのゲームの名前は『ドラゴンクエスト』

『ドラゴンクエスト』(1986年)

実は私は、店で速攻予約をして発売日に買ってしまったほど リアルタイムにプレイしていた『ドラクエ』のファンです。ロールプレイングゲーム(RPG)の魅力の1つは、主人公や仲間のキャラクターに好きな名前を付けて、自分が物語の疑似体験ができる事であろう。主人公には自分の名前やニックネーム、または、デザインに恥じない かっこいい名前などをつけて楽しんでいる人がほとんどだと思う。しかし、私の場合は少し違う。 

今までに私がつけた『ドラクエ』の主人公の名前をざっと羅列してみよう。「ごんべえ」「たごさく」「どぴゅっ」「すかとろ」「へんたい」などである。こうする事によってゲームに新たな楽しみが生まれてくる。たとえば、

「あなたこそ伝説の勇者たごさくさまです」
おいおい。たごさくだぞ。たごさく。たごさくのくせに勇者か。だっせーな。けけけ。

「すかとろの攻撃。ドラキーはひらりとみをかわした」
はっはー。よかったなぁ。攻撃食らわなくて。どんな攻撃か想像したくないぜ。

「どぴゅっは死んでしまった」
おー。もうその年でか。

「どぴゅっはいきかえった」
なんだか元気な生き返り方だな。くくく。

「ごんべえさま。このローラも一緒に旅に連れて行ってください」
ローラとごんべえか。ギャップがたまんねー。

「へんたいは不思議なおどりをおどった」
うぉー。いったいどんな踊りなんだ!わくわくするぜ。

などとしょっちゅう突っ込みながらゲームを楽しめるのである。
と、これまでは『ドラクエ』の話。

同じRPGである『ファイナルファンタジー』(FF)を、7作目が出た時、ようやく初めてプレイしたのだが、そこでは『ドラクエ』をはるかに上回るすばらしい出来事が起こったのである。

『ファイナルファンタジーVII』(1997年)

『ファイナルファンタジーVII』では、最初は「クラウド」とか ちゃんとした名前が付いていたのだが、途中から名前を変える選択肢が出てくるのである。しかも、4文字の名前しかつけられなかった『ドラクエ』と違って、なんと 6文字もである! これを利用しない手はない! 知恵を絞って、悩みに悩んでつけた主人公の名前は「おんなたらし」。せっかく『ドラクエ』より 2文字も多くつけられるのである。決して... 決して 後悔したくなかった。

とにかく、主人公は「クラウド」から一転、「おんなたらし」に格下げである。そして、仲間の犬のキャラは「ちんかす」とつけた。残るはヒロイン。この可愛いヒロインをどのように笑いに変えられるか? そう、彼女の名は当然「やりまん」。言うまでもない。

さて、おんなたらし と ちんかす と やりまん の物語はすすみ、中盤あたりにさしかかったところ、私が期待していた出来事が遂に起こった。何と やりまん がこんな台詞をはいたのだ。「もう。おんなたらし ったら本当に おんなたらし なんだから」思わず私はガッツポーズをとっていた。「ありがとう。この名前をつけて本当によかったよ」 心の中で私はつぶやいた。名は体を表すっていうからな。ククク

そして ストーリーは進み、やりまん はそれだけでは飽き足らず、前回の台詞を遥かに超える さらにとんでもない台詞をはいたのである。それは犬のキャラである ちんかす に向けてかけられたセリフ。何か辛いことがあって、ちんかす が落ち込んでいる時に 喝を入れるためにヒロインがはいたセリフである。重ねて言うが、これは喝を入れるためである。「うじうじしないの ちんかす! おとこらしくない!」

「ひでーーー!!」私は思わず 画面に向かって叫んでしまった。ヒロインに ここまで言われるなんて もうたまらない。そ... そこまで言わなくても... と ちんかすを 思わず かばってしまったのである。

その他にも RPG ではないが、『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』というアドベンチャーゲームをプレイした時のこと(※ネタバレ注意)。


『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』(1988年)

「記憶を失った主人公が綾城家に隠された秘密を暴いていく」というゲームで、この主人公は、苗字を入れたフルネームをつけることができたので、私は 「ばるぼあ ろっきー」 と国際的な名前にしました。そして、クライマックスで、実は、記憶を失った主人公が綾城家の跡取りだったことが判明し、自分の本当の苗字は「綾城」だったと思い出します。

その時のセリフは「僕は ばるぼあ ろっきー じゃなかったんだ。綾城 ろっきー だったんだ!」
おいおい、なんかおかしいって最初から気づかなかったのかよ! 

とまあ このようにゲームのキャラに変な名前をつけてみると ゲームがさらに楽しめます。皆さんもクリエイティブにプレイすることをお勧めします。ついでに、ゲームにまつわる過去のエピソードもご覧ください(エピソード11:神のお告げ『バイオハザード4』

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