【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード63:勇者たごさく – ゲームのキャラに変な名前を..
ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!(※今回は少々品のない表現が含まれています。ご注意ください)
エピソード63:勇者たごさく - ゲームのキャラに変な名前を..
かつて中学生であった私は『週刊少年ジャンプ』で紹介された、見たこともないゲームの特集に夢中になった。まさに「なんじゃこりゃぁ!!」と中学生の私が叫んでしまうほど、そのゲームは衝撃であった
時はファミコン全盛期。様々なゲームをプレイしてきたが、今までこんなゲームは見たことがない! そのゲームの名前は『ドラゴンクエスト』。
『ドラゴンクエスト』(1986年)
実は私は、店で速攻予約をして発売日に買ってしまったほど リアルタイムにプレイしていた『ドラクエ』のファンです。ロールプレイングゲーム(RPG)の魅力の1つは、主人公や仲間のキャラクターに好きな名前を付けて、自分が物語の疑似体験ができる事であろう。主人公には自分の名前やニックネーム、または、デザインに恥じない かっこいい名前などをつけて楽しんでいる人がほとんどだと思う。しかし、私の場合は少し違う。
今までに私がつけた『ドラクエ』の主人公の名前をざっと羅列してみよう。「ごんべえ」「たごさく」「どぴゅっ」「すかとろ」「へんたい」などである。こうする事によってゲームに新たな楽しみが生まれてくる。たとえば、
「あなたこそ伝説の勇者たごさくさまです」
おいおい。たごさくだぞ。たごさく。たごさくのくせに勇者か。だっせーな。けけけ。
「すかとろの攻撃。ドラキーはひらりとみをかわした」
はっはー。よかったなぁ。攻撃食らわなくて。どんな攻撃か想像したくないぜ。
「どぴゅっは死んでしまった」
おー。もうその年でか。
「どぴゅっはいきかえった」
なんだか元気な生き返り方だな。くくく。
「ごんべえさま。このローラも一緒に旅に連れて行ってください」
ローラとごんべえか。ギャップがたまんねー。
「へんたいは不思議なおどりをおどった」
うぉー。いったいどんな踊りなんだ!わくわくするぜ。
などとしょっちゅう突っ込みながらゲームを楽しめるのである。
と、これまでは『ドラクエ』の話。
同じRPGである『ファイナルファンタジー』(FF)を、7作目が出た時、ようやく初めてプレイしたのだが、そこでは『ドラクエ』をはるかに上回るすばらしい出来事が起こったのである。
『ファイナルファンタジーVII』(1997年)
『ファイナルファンタジーVII』では、最初は「クラウド」とか ちゃんとした名前が付いていたのだが、途中から名前を変える選択肢が出てくるのである。しかも、4文字の名前しかつけられなかった『ドラクエ』と違って、なんと 6文字もである! これを利用しない手はない! 知恵を絞って、悩みに悩んでつけた主人公の名前は「おんなたらし」。せっかく『ドラクエ』より 2文字も多くつけられるのである。決して... 決して 後悔したくなかった。
とにかく、主人公は「クラウド」から一転、「おんなたらし」に格下げである。そして、仲間の犬のキャラは「ちんかす」とつけた。残るはヒロイン。この可愛いヒロインをどのように笑いに変えられるか? そう、彼女の名は当然「やりまん」。言うまでもない。
さて、おんなたらし と ちんかす と やりまん の物語はすすみ、中盤あたりにさしかかったところ、私が期待していた出来事が遂に起こった。何と やりまん がこんな台詞をはいたのだ。「もう。おんなたらし ったら本当に おんなたらし なんだから」思わず私はガッツポーズをとっていた。「ありがとう。この名前をつけて本当によかったよ」 心の中で私はつぶやいた。名は体を表すっていうからな。ククク
そして ストーリーは進み、やりまん はそれだけでは飽き足らず、前回の台詞を遥かに超える さらにとんでもない台詞をはいたのである。それは犬のキャラである ちんかす に向けてかけられたセリフ。何か辛いことがあって、ちんかす が落ち込んでいる時に 喝を入れるためにヒロインがはいたセリフである。重ねて言うが、これは喝を入れるためである。「うじうじしないの ちんかす! おとこらしくない!」
「ひでーーー!!」私は思わず 画面に向かって叫んでしまった。ヒロインに ここまで言われるなんて もうたまらない。そ... そこまで言わなくても... と ちんかすを 思わず かばってしまったのである。
その他にも RPG ではないが、『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』というアドベンチャーゲームをプレイした時のこと(※ネタバレ注意)。
「記憶を失った主人公が綾城家に隠された秘密を暴いていく」というゲームで、この主人公は、苗字を入れたフルネームをつけることができたので、私は 「ばるぼあ ろっきー」 と国際的な名前にしました。そして、クライマックスで、実は、記憶を失った主人公が綾城家の跡取りだったことが判明し、自分の本当の苗字は「綾城」だったと思い出します。
その時のセリフは「僕は ばるぼあ ろっきー じゃなかったんだ。綾城 ろっきー だったんだ!」
おいおい、なんかおかしいって最初から気づかなかったのかよ!
とまあ このようにゲームのキャラに変な名前をつけてみると ゲームがさらに楽しめます。皆さんもクリエイティブにプレイすることをお勧めします。ついでに、ゲームにまつわる過去のエピソードもご覧ください(エピソード11:神のお告げ『バイオハザード4』)
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