【インタビュー】Yeti と Houdini で毛を操る:グルーミング スペシャリスト Meline Pischedda 氏

フランスの Meline Pischedda 氏 は 3Dアーティスト、グルーミング スペシャリストです。そのワークフローと素晴らしい作品を見ていきましょう


Meline Pischedda
グルーミング スペシャリスト|フランス


Q. 自己紹介をお願いします

こんにちは。Meline Pischedda(メリーヌ・ピシェダ)です。南フランスのアルルにある 3Dアニメーションスクール MoPA(旧Supinfocom)で、3D映像を学んでいます。常にあらゆる種類のアートに惹かれており、インテリア建築とグラフィックデザインを専攻し、卒業しました。MoPA の研修でグルーミングを知り、髪、毛皮、羽毛を専門にすることにしました。また、キャラクター FX にも非常に興味があります。

Q.「Rajah」の制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?

グルーミングスキルを向上させるため、Instagram でコンセプトを探しました。そこで、「ライオン・キング」「美女と野獣」のアニメーター アーロン・ブレイズ氏 のある絵に出会い、子供の頃を思い出しました。それが「Rajah (ラジャー)」です。私は彼の絵の大ファンです。なぜなら、3Dで解釈するのに十分なディテールがあり、ライティングもとてもよくできているからです。

まず、ZBrush でラジャーを Tポーズでモデリングし、ポーズをとらせます。次に、リトポと UV のため、Maya に切り替えます。作業を終えたら、Substance 3D Painter にインポートしてテクスチャを作成し、さまざまな密度マップをペイントします。それを Maya でまとめ、Yeti でグルーミング、ファー シェーディングを施し、ArnoldACES(Academy Color Encoding System)でレンダリングしました。Nuke でのライティングと構図については、友人の Alexandre Mougenot に手伝ってもらいました。このプロジェクトは、本当に楽しかったです。

「Rajah (ラジャー)」(コンセプト制作:アーロン・ブレイズ

Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?

最大の難関は、体型とグルーミングの両方から、形を正しく整えることでした。このモデルの課題は、ラジャーの茶目っ気ある笑みを維持すること、グルーミングで最も難しかったのは、頬、顎、胴体です。少しでもコンセプトに近づけたかったので、最終的な形にたどり着くまで、しばらく模索しました。この作品のおかげで Yeti が上達し、とても楽しめました!

「Lion (ライオン)」

Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?

主に Maya(Yeti、XGen)、HoudiniBlender3ds MaxOrnatrix)を使っています。Houdini や Blender で長いガイドや複雑なヘアスタイルを作るのが好みです(コントロールもしやすいです)。Yeti は、ファーやショートヘアに最適だと思います。しかし、総合的に考えると、グルーミングにはノードを使うほうが、わかりやすく、便利に感じています。このような理由から、私は Yeti と Houdini を使うことが多いですね。

「Reverse Tiger」(コンセプト制作:アーロン・ブレイズ

Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください

私は1つのプロジェクトに集中して取り組むようにしています(時には、複数のプロジェクトを進めることもあります)。プロジェクトが完成したら、クレイ、ガイド、キャラクターのターンテーブルを sRGB(リニア)でレンダリングします。すべての変化を見るために、ちょっとした合成ビデオも作ることもあります。もう1つのプロジェクト「Reverse Tiger」も、アーロン・ブレーズにインスパイアされて作成しました。このように、すべての素材を準備しておけば、ショーリールやポートフォリオを最新の状態を保ちたいときに、いつでも掲載することができます。

 

★ショーリール:Groom Showreel 2021(1分16秒)

Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?

Facebook では「CG Grooming Artist」というグループに参加しているため、他の人たちのヒントやさまざまなソフトでの苦労の跡を見つけることができます。Instagram では、「Character Design Challenge」というハッシュタグをフォローしています(*Facebook は「Character Design Challenge」)。そこは、無限に湧いてくる創造性の源なので、2Dコンセプトを3Dアートワークとして再現するのに利用しています。

 

★オラウータンのターンテーブル:Orangutan(7秒)

Q. 芸術的な目標はありますか?

さまざまなスタイルを受け入れるようにしています。私がスタイライズされたプロジェクトに取り組む理由は、いくつかの形を試し、とてもユニークなものを作成できるからです。その一方で、リアルなキャラクターのグルーミングを見ると、とても驚かされます。動物の毛が好きですが、特に Houdini を学んでからは人間のヘアスタイルにも興味が湧いています。

「Dancing Girl」

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

コンセプト アーティストでは、LoishLydia ElaineHedvig H-SDavid Ardinaryas Lojaya の作品が好みです。それぞれに独自のスタイルがあり、キャラクターの形で遊ぶ手法が素敵です。

3Dアーティストでは、Yuriy DulichGabriela SalmeronMassimo Righi の作品のリアリズムを尊敬しており、グルーミング アーティストを目指すきっかけになりました。いつか、彼らのレベルに到達したいですね。

Q. 近年の作品についてお聞かせください

「Rajah (ラジャー)」の次に、架空の虎を基にした作品「Reverse Tiger」を公開し、最後に「Hairfect King」を公開しました。これは、「Aaron Blaise Special Felines(アーロン・ブレイズ スペシャル ネコ科動物)」三部作の最後の作品です。他のプロジェクトについても、アイデアは山ほどあり、ある有名なキャラクターを再解釈しています。もっと毛皮をまとって、近々登場予定ですので、お楽しみに!

「Hairfect King」(コンセプト制作:アーロン・ブレイズ

 


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編集:3dtotal.jp