【インスピレーション】原作の世界観を忠実に再現。ドラマ『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』の VFX 舞台裏

ポストビズのロボット

エピソード8 では 2体のロボットが対戦します。「このシーンでは、ほとんどの作業がフルCGで行われました」と Knoll は明かします。「森の中で撮影を行い、ロボットの代役を立ててフレーミングをサポートしたショットがありました。これはポストビズに最適なシーンになると思ったので、ナサニエルとジョディにこの方法でやってみないか尋ねたところ、2人とも気に入ってくれました。そこで私はエディターに相談し、Rodeo FX のチームに早い段階で承認されたカットを渡して、ロボットファイトの大まかなアイデアをまとめてもらいました」。

「その部分がカットに影響することもあるので、編集室でジョディがディレクターズカットの作業に使えるように、早く終わらせたかったのです。こうして、何もない森のショットの代わりに、シーンをビジュアライズし、ロボットの見え方をみんなで確認することができました。そこからナサニエルとピクチャーロックして Rodeo FX に引き継ぎ、ブロッキングパスと最終アニメーションを担当してもらいました。エピソード8 では、たくさんのショットワークを素早く行わなければなりませんでした。特にロボットファイトのショットには、大規模なアニメーションが使われました」。

 

島に捨てられたロボット(エピソード7. 怪物)

プラクティカル エフェクト(実物を利用した特殊効果)

シリーズ全体のストーリーの中心となるのは、地下施設に封印された謎のエイリアンの遺物 “エクリプス” です。「実際に多くのセットを建てる計画があると聞いて、興奮しました」と Knoll は言います。「エクリプスもその1つで、ほとんどのシーンに実物が使われています。セットチームがオンセットで行なったことに合わせて、私たちはエクリプスの上部を拡張しました。物語に登場する地下施設はカナダのウィニペグのステージにあり、必要に応じてセットの拡張を行いました。」

 

エクリプスは実写のセットを拡張して作成されました

Legacy Effects は実物の2本足の味方のロボット(ジェイコブ)を制作しました。私たちは、ロボットを作るための議論に参加し、その可動域のビデオを分析しました。誰もが自分の仕事に誇りを持って取り組んでいたので、私たちはその仕事を引き継ぎ、必要に応じてさらに発展させたいと思いました」。

「クローズアップやタイトなショットでは、実物のロボットのパフォーマンスを維持しています。エピソード2の終わりでは、人形師が実物のロボットで的確な演技をしてくれたので、CG に切り替える必要はありませんでした(リグのクリーンアップを行なっただけです)。しかし、走り去るロボットはフルCGショットで作成されました」。

 

父は家族を守るためロボットの力を借りる(エピソード5. コントロール)

リモートグローブでロボットを操作する少女

 

Rodeo FX のVFXスーパーバイザー Julien Hery による解説

撮影

撮影を担当したのは、Ole Bratt BirkelandLuc MontpellierJeff CronenwethCraig Wrobleski ら、イギリス、アメリカ、カナダの撮影監督チームです。

「私たちは腕利きの撮影監督を起用し、美しい自然光を一貫して維持するために、ボールパスと HDRカバレッジの設定を行いました」と Knoll は話します。「屋内で見られるものは、ほとんどがステージ上で作られたもので、屋外のものは現場の近くで作られています。町の中でやったことの多くは、実際にどのように見えるかのチェックでした。ショットにふさわしくない建物があれば、2D で塗り直すか、別の構造物を置くかのどちらかの方法をとりました」。

 

男はパラレルワールドでもう1人の自分と出会う(エピソード6. 異次元世界)

反重力

パイロット版では、空中へ崩壊する家や逆方向に降る雪など “反重力” の瞬間が訪れます。「本作の挑戦的なVFXショットの多くは、パイロット版にありました。雪が空に舞い上がり、家が崩壊していく大きなショットには典型的なエフェクト シミュレーションを使ったので、ディテールまで神経を使わなければなりませんでした。このような超現実的な瞬間や出来事を目の当たりにしても、私たちはそれらをリアルに感じてもらいたかったのです」。

 

パイロット版の空中へ崩壊する家

VFXのプレッシャー

「最大の難関は、圧縮されたテレビ番組のスケジュールの中で、高品質のVFXワークを制作することでした」と Knoll は言います。「一般的なストリーミング番組に比べ、作品を完成させるまでの時間が短かったので、調査する暇がほとんどありませんでした。しかし、一貫性のある統合された見映えの確認に時間をかけたかったため、自分たちがやっていることに素早くロックインする必要がありました。それから、ロボットファイトの出来には自信があります。あまり目立たせずに、迫力のある瞬間にしたかったので大変でした」。

「私たちは『トランスフォーマー』のような領域には踏み込まず、これまでの7つのエピソードでロボットに行われてきたことに忠実でありたいと考えました。Legacy Effects がロボットで成し遂げた素晴らしい仕事(プラクティカル エフェクト)をさらに発展させ、味方のロボットが戦うクモ型ロボットのアイデアを考えました。フルCGアニメーションのショットは 40あります。アニメーションは 5週でロックし、ライティングは3週で完成させました。その見た目は美しく、ロボットの影も素晴らしい出来栄えになっています」。

 

世界観を伝える「宙に浮く」機関船

「クモ型ロボットを、最小限の動作で威嚇しているように見せるのは難題でした。全体的には、エピソード8 を誇りに思っています。オープニングショットの凍った小川のように、私たちが行なった環境の仕事はバラエティに富んでいます。この小川はアート部門が森の中に実際に作ったもので、長い間、凍っていたように表現する必要がありました。シーズン全体は素晴らしい仕上がりになっていますが、特にエピソード8 を見てもらいたいですね。それは、いろいろな手法で美しく仕上げられています」。

 

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』 VFXブレイクダウン

■本作は Amazon Prime Video で視聴できます。
 『ザ・ループ Tales from the Loop 』

 


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編集:3dtotal.jp