まるで写真のような CG の肖像画「Pamela Spriggs のポートレート」のメイキング

凄腕の3Dキャラクターアーティスト Ian Spriggs氏が、その家族のポートレート(肖像画)の制作ワークフローを紹介します(Maya、Mudbox使用)


Ian Spriggs
3D キャラクターアーティスト


ステップ01:モデル

モデルの取り掛かりはかなり大変です。今回は、Maya でリギング済みのキャラクターをベースメッシュとして制作を開始しました。ポーズをつけ、低解像度の服のジオメトリを追加します。この段階ではプロポーションに集中して、頭の中にある良い感じの構図を思い描きます。

私はいつも、ポートレート制作にはリファレンス写真を利用します。また、カメラツールが好きなので、スカルプト段階では Mudbox もよく使用します。カメラの焦点距離とリファレンスの焦点距離を合わせることで、モデルが写真の雰囲気に近づきます。小さなディテールにとらわれ過ぎないように作品全体を見ながら作業して、大まかにディテールをつけていきましょう。

モデル

ステップ02:スカーフ

このポートレートのスカーフには、かなりの時間を要しました。織り込みには、ステンシルとスカルプトしたディテールで表現する予定でしたが、思いどおりにならなかったので、すべてモデリングしました。必要に応じて、あらゆるサイズに複製できるタイリング可能な織物パターンと2種類のスカーフを作成しました(①首周りでドレープのついた(ひだで覆われた)もの / ②平面(ラップ用))。

ドレープバージョンと平面バージョンの間で[ブレンド シェイプ]を作成し、織物パターンで平面バージョンをラップします。きちんと見えるまで何度か試行錯誤を繰り返しましょう。ジオメトリで大き目の織り糸を作成、ランダムに配置して、細かい織り糸はヘアで追加しています。イスも、タイリング可能なジオメトリで作成、Maya のデフォーマで形状を曲げています。

スカーフ

ステップ03:テクスチャマップ

顔のテクスチャリングには、事前に撮影した写真を使用。通常、直射光とハードシャドウのない360度の人物写真を撮ります。Mudbox のモデルにこれらの写真を投影し、その後、線、ホットスポット、シャドウをすべて手動でペイントします。Mudbox の[フラット ライティング]はこの作業を正確に行える優れた機能で、シェーダに気を取られることなく、テクスチャマップがどのように反映されるのかをチェックできます。

服には、タイリング可能なテクスチャを用意して、ディテールと摩耗を手動でペイント。テクスチャが平坦過ぎるときは、大抵すべてのテクスチャに汚しのパスを加えます。こうすると無機質な感じにならず、生き生きとしてリアルに見えます。

テクスチャマップ

ステップ04:ヘア

ヘアは、リファレンス写真に合わせて、ポリゴンプレーンを配置して作成します。次に、プレーンを NURBS カーブに変換、nHair を追加してV-Ray のヘアマテリアルを適用します。ランダムにするとリアルに見えるので、まとまっている部分とバラけている部分を入れます。平坦に見せないことが大事なので、全体的に色のバリエーションも少し入れましょう。この作品では、まつ毛、スカーフ、襟、袖口にもヘアを使っています。

ヘア

ステップ05:ライティング

ライティングのインスピレーションは、巨匠レンブラントやフェルメールから得たものです。この作品では「人物が背景に同化するリアルな空間」を醸し出すライティングにしたいと思いました。ライティングをシンプルにして、背景にディテールを追加することで、女性が家に実在するように感じられるようにしました。他の部分さえも想像できるかもしれません。

私はいつも、キーライト、フィルライト、リムライト、ドームライトを使います。適度にコントラストを作り、後ろの壁のライトで人物のシルエットがさらに浮かび上がるようにしています。また、鑑賞者の視線が顔に向くように、体のコントラストを比較的低めにします。

ライティング

ステップ06:レンダリング

私はいつも、テストを繰り返します。ここで、これまでの作業がどのように作用しているか分かります。「構図がよくない」と感じたので、元のモデルに戻って、ポーズを調整。また、すべてのテクスチャにセカンドパスを設定し、シェーダの設定も変えています。人物に「誇らしさと強さ」を見せつつも「優しさと幸福感」といった特徴を出したかったので、今までで最も挑戦しがいのあるポートレートとなりました。本作で素晴らしい母の姿を感じとってもらえたら幸いです。

レンダリング

最終モデル

編集部からのヒント

フォトリアルなCGキャラクターの制作テクニックを学習するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』『MAYA キャラクタークリエーション』をおすすめします。


翻訳:STUDIO LIZZ (Nao)
編集:3dtotal.jp