感情の描き方 – 小さなディテール で 生き生きと –

イタリアのアートディレクター/スーパーバイザー Sylwia Bomba が、小さなディテールで、キャラクターの感情を 生き生きと表現する方法 について紹介します


Sylwia Bomba
アートディレクター/スーパーバイザー|イタリア


はじめに

書籍『The Artist's Guide to the Anatomy of Human Head』の著者の一人であり、アーティストの Sylwia Bomba(シルヴィア・ボンバ)が、小さなディテールで、キャラクターの感情を生き生きと表現する方法について紹介します

この短編チュートリアルでは、私の個人的なペイントプロセスを紹介します。ワークフローを見ていきながら、私が描く際「どのように判断しているか」を説明したいと思います。ポートレート(肖像画)を描くのは、見せたい雰囲気が明確で、自分の内なる感情をよく理解できていれば簡単です。チュートリアルからは多くのことを学べますが、それと同様に「自分の内面や感情から学ぶこと」も大切です。

01 主な形

最初に「何を伝えたいか」を理解。それを「どうやって実行するか」について分析します。

1. 繊細なブラシで主な形をスケッチ
2. 焦点を当てたい顔の表情を描いていく
3. ヴェール(頭部を覆っている薄い布)の暗示的な線を通して、鑑賞者の視線を小さなトンボに引き寄せる

ここまで終えたら、ブラシストロークをきれいに整えます。

最初に、自分のアイデアを表現するのに最適な形を考えます

02 基本色

クリーンアップを終え、最初の基本色を塗る準備が整いました。シーンのドラマ性を強調するため、背景にはダークトーンを使います。ご覧のように、肌の色には似た暖色系の 3色だけを使います。顔を より明るい光で照らすことで、コントラストを作り出し、鑑賞者の注意を引きます。また、左手は意図的に少し大きくしています(遠近法により、鑑賞者に より近く見えるようにするため)。

肌と背景の基本色を作ります

03 ディテール

顔に ディテールをさらに加え、トンボの形を よりはっきりさせます。このポートレートの主な目的は、表情を通して「魂」を表現することなので、目に少し光を加え、涙を示唆します。目の周りの赤みは、少し前まで泣いていたかもしれないことを暗示しています。時には、小さな違いや欠点が魅力的に見えることもあります。そのため、歯に少し隙間を入れてみました。

この段階で、顔のディテールを明確にし始め、ブラシのストロークを試していきます

04 描き込む

顔と髪の ディテールをさらに描きこんでいきます。ヴェールをもう一度スケッチ。彼女の無垢なイメージを表現する最善の方法を模索します。小さなあごに、ほとんど目に見えないくらいの涙を加えると、彼女の感情が強調されます。また、目の周りに少し暗いトーンを加えることで、やや疲れた様子や、あまり顔を洗っていないような印象になります。子供には シワがあまりないので、額の筋肉を 実際よりも緊張させてみることにしました。

非現実的なトーンでクリーンアップ

05 仕上げ

すべてのステップは「ディテールの追加と削除のバランスを見出すこと」です。私はいつも「Less is more (少ないほうが豊かである)」を意識し、適用するようにしています。奥行きを出すために、影になっている左手をぼかし、顔にはコントラストと光を加えました。額の影は神秘的で、ここが より大きな環境であることを暗示しています。こうして、すべてを見せる代わりに、ちょっとした示唆を与えたかったのです。顔が肖像画の焦点になるように、さらにディテールとブラシストロークを加えて完成です。

顔にピントを合わせるため、体の一部をぼかします

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編集:3dtotal.jp