ナラティブを描く:SFイメージ『VERSUS』のメイキング

コロンビアの イラストレーター&コンセプトアーティスト Juan Pablo Corredor Martinez氏 が、ショートストーリーを元に制作した SFイメージ『VERSUS』のメイキングを解説します


Juan Pablo Corredor Martinez
イラストレーター&コンセプトアーティスト |コロンビア


ストーリー

校庭で、鬼ごっこ、サッカー、野球、トレーニングなどを何年も続けてきた生徒たちは、ついに本番を迎えた。両チームのキャプテンは、くじ引きでジェリーとサマンサに決まった。2人の中堅選手が、順番にチームメイトを選んでいく。友情は関係ない。ジェリーの親友はマークだが、彼は射撃が苦手で、武器はサムライソードだった。ジェリーは「フェリックス」と言い、落ち着いた表情で彼に目を合わせた。すると、射撃の名手のフェリックスは笑顔で隊列に加わった。「サマンサ、次は君の番だ」 軍曹が促した。サマンサはメリッサの方を見て、「私は..」と手と声を震わせた。しかし、出かけた言葉を飲み込んで目をそらし、下を向いたまま「ジェイソン」と言った。6フィート7インチのジェイソンは大股で歩き、サマンサの後ろに立った。こうしてユニフォームに身を包んだ生徒たちが1人ずつ選ばれ、チームを区別する色つきのビブスを渡された。「さあ行け!」と軍曹は叫んだ。「チームレッドは西へ、チームブルーは東へ。HQSを見つけて、補給物資を探せ。制限時間は30分、警笛が鳴ったら終了だ。最後まで立っていたチームを勝利とする」

Q. ストーリーで注目すべき重要な要素は何でしょうか?

考慮すべき要点は非常に明確で、「緊張感」「ダイナミズム」です。このストーリーは、しばらくの間一緒にトレーニングして、その過程で友達になった生徒同士の対決です。感情(友情)か目標(勝利)かのどちらかを選択するという非常に難しい瞬間となっています。同時に、将来のチームメイトの能力を確認して、同点に備える様子も見て取れます。

Q. 最終的にどのようなゴールを目指しているのでしょうか?

ゴールは、さまざまな要素を組み合わせて、「ドラマチック」「ダイナミック」なムードを伝えることだと感じました。まず、ライティングと構図が課題になるでしょう。緊張感のあるシーン、動きのあるシーンを作っていきたいと思います。

01 アイデアとリファレンス

ゴール(鑑賞者に伝えたいもの)を設定し、ムードを決めます。インスピレーションなしにプロジェクトを始めることはできません。映画・絵画・ミュージックビデオなど何でもよいので、お気に入りのイメージをチェックします。とはいえ、自分が刺激を受けたイメージをすべて使ってムードボードを作り、最初から楽しむことを心がけましょう。

まず、必ずリファレンスを収集します

02 サムネイルを集める

面白い結果を出すためには、邪魔するものがない状態で脳を働かせる必要があります。サムネイルにすれば、ディテールや描写を気にせず、さまざまなアイデアを出せるでしょう。アートボードとして使うさまざまなスペースを Photoshop ファイルに設定し(5×5cm 程度)、ブラシ(不透明度:100%、グレー)でさまざまな構図のアイデアを描くだけです。1枚のサムネイルに10分以上かけてはいけません。

シンプルにすることを心がけます

03 線を描く

サムネイルの中から1つ決めたら、新規レイヤーに基本的な線画を描きます。そうすれば、被写体の構造やプロポーションについてより具体的に考えることができます。この段階では、キャラクターのための適切なアナトミーリファレンスが必要になりますが、簡単に見つからないこともあります。実際、私は DAZ 3D というソフトで 3Dモデルにポーズをつけて、それをリファレンスにしました。

サムネイルを整える

04 基本色を設定する

基本的なカラースキーム(配色)を決めたら、すぐに色をつけていきます。まだディテールには手をつけず、全体像を想像するための出発点としてラフに保ちましょう。私はソリッドブラシ(不透明度:80-100%)で、ローカルカラーといくつかの光源を描いています。

全体的なカラースキームを決める

05 ボリューム

構図を完全にコントロールするために、それぞれの要素を異なるレイヤー(あるいはレイヤーグループ)に配置することを強くお勧めします。今回は4人のキャラクターを扱うので、それぞれに独自フォルダが必要でした。光源とそれぞれの色を明確にすることを念頭に置き、ハードブラシとソフトブラシを切り替えながら、さまざまなエッジとボリュームを作っていきます。

ボリュームを作り、立体感を出す

06 ディテールを追加する

描写とディテールは、最も時間のかかるパートです。ブラシを交互に使って、マテリアルやコントラストのポイントを変えながら、構図内の要素を完成させていきます。どの部分がシーンにとって最も重要であるかを意識して、それらを適切に描写するようにしてください。これにより、鑑賞者にしっかりとした焦点を示せます。このシーンでは、2人のメインキャラクターのリーダーシップが強調されています。

ディテールレベルによって、見てほしい場所がわかるようになっています

07 ベクターシェイプ

私は元グラフィックデザイナーなので、Illustrator でソリッドな形やグラフィック要素を正確に作成し、さらに面白く感じる要素を加えることにしました。たとえば、イメージをまとめるための技術的な図形やロゴをデザインし、それらをすべて Photoshop に配置して、[光彩(外側)]のようなレイヤースタイルを加えます。

ベクターシェイプを加えると、絵の完成度が上がります

08 仕上げ

イメージはほぼ完成です。描き終えたら、色補正を行なって最終的な印象を変更しましょう。まず、黒で完全に塗りつぶした「覆い焼きカラー」レイヤーを追加し、滑らかで透明なブラシでいくつかの色を塗り、明るい部分を強調します。次に[カラーバランス]調整レイヤーを作成し、シャドウとハイライトの一部を変更します。最後に、フレアを加え、ドラマチックに仕上げたら完成です。

 

調整を加えて、最終イメージをまとめます


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編集:3dtotal.jp