ブレードランナー風の 3Dライティングを再現:「Digital Emily 2.2.049」
08 ライトを 1つずつ確認する
ルックデヴでは すべてのライトで調整する前に、各ライトを個別に見ておくとよいでしょう。私は V-Ray RT でライトを1つずつ調整し、変更を即座にフィードバックしています。たとえば、後ろにあるライト(モデルから見て右を照らす)を少し青くして、ライティングの色にコントラストを出しました。これはリファレンスにない表現ですが、最終レンダリングに良いタッチが加わると感じたからです。
シーン内のすべてのライト
09 ライティング手法
私のライティング手法は、レンダリングで rawプレートをシミュレートすることですが、そのためには[AA filter]を1以上にする必要があります。たとえば、左のハイライトは 1.3 程度です。明るいライトが写っている場合は、光源に応じて 10?20 程度まで上げましょう。これにより実際のプロダクションで、CG を rawプレートにマッチングするのが容易になります。
グレーディング前の rawレンダリング
10 リファレンスに合わせる
レンダリングしたら、Nuke で簡単なグレーディングを行い、リファレンス画像に合わせます。最終的に直感を試したかったので、私は この時点でリファレンスを見るのをやめ、自分なりのグレーディングで最終イメージに仕上げました。
リファレンスと並べて配置し、グレーディングを施します
11 グレーディングのポイント
グレーディングによって、最終プレゼンテーションは rawレンダリングの結果よりも はるかにリアルな感覚(フィール)になります。私は Nuke の ColorLookupノードでグレーディングしますが、その前に、LogToLinノードでカラースペース(色空間)を LOG に変換します(あとで、リニアに変換し直すのを忘れないでください)。
グレーディングでは、各チャンネルを個別に見ていき、コントラストとピクセルの強度をリファレンスに合わせます(レンダリングイメージとリファレンスを並置します)。このとき、レンズ内で発生する効果をシミュレートする必要があるでしょう。たとえば、「青チャンネルはコントラストが高く、グレインが強い」といった効果です。また、レンズのゆがみやフィルムグレインも追加し、リファレンスに見られる効果に合わせています。
このプロジェクトでは、完全な映画のフレームを再現していません(映画から切り取ったフレームに忠実にする場合、より多くのぼかしと大きな粒子が必要になります)。最終的に 5Kの解像度でレンダリングしたので、彼女はとてもシャープになり、肌のディテールまで見えるようになりました。
Nuke の ColorLookupノード
プロのヒント1:HDR の加工
屋内照明の場合は、HDR からすべての光源を取り除き、シーンに間接光を投射するだけにします。影を落とすライトはすべて手作業で作ります。
元のHDR(左)とライト除去したもの(右)
プロのヒント2:ライト
ライトの挙動をもっとリアルにするため、シミュレートするライトに応じた HDR を追加してください。そうすることで、すべての反射光に真実味が出ます(フラットな白いハイライトだと、不自然に見えます)。
HDRイメージの切り取り方によって、ハイライト部分にも影響があります。たとえばライトの周辺のグローをとらえるために、その外側を多めに切り取ると、目の映り込みを改善できるかもしれません。光の拡散やシャープさをコントロールするには、ライトの設定で「指向性(directional)」アトリビュートを使用します。
ライト HDR
プロのヒント3:高度なライトコントロール
さらにライトをコントロールするときは、[ランプ]を使用します。HDRのグレーディングでも細かくコントロールできますが、V-Ray RT で調整しながらリアルタイムに結果を確認できる[ランプ]の方が使いやすいでしょう。ライトHDRを[ランプ]に接続し、その[ランプ]をライトに接続します。ライトの X と Y の両方の強度をコントロールしたいなら、[ランプ]を2つ使用することもできます。
Maya の[ランプ]ノード
プロのヒント4:デジタルヒューマンのライティングを合わせる際の問題点
デジタルヒューマンのライティングでよくある問題は「目のハイライトと顔の影を同時に合わせるのがとても難しい」ということです。まず目を見て、ハイライトを合わせれば完成だと思っていたのに、顔を見ると、すべての影がリファレンスとはまったく違うものになっているのです。これにはさまざまな要因が考えられますが、大きな違いとして、目のレンズの形が一致していないことが挙げられます。
あるいは、顔の造形も違うかもしれないので、何が一番大事か考えるようにしましょう。チートして 2つのレンダリングで問題を分割するのも 1つの解決策ですが、通常は妥協点を探ったり、コンポジット(合成)で目の反射を少し変えたりします。
プロのヒント5:グレーディングのコツ
RGB の各チャンネルをできるだけ合わせますが、露出を変えてグレーディングをチェックし、正しく調整されているかどうか判断しましょう。そのためには、まず露出を上げてシャドウの部分を見て、次に露出を下げてハイライトの部分を見ます。こうして、それぞれ正しい値になっていることを確認します。
編集部のおすすめ:CG におけるライティングの基本を学ぶには、書籍『CGライティングの最強の教科書』を。映像制作における色調補正、カラーコレクション、カラーグレーディングを学ぶには、書籍『カラーグレーディング 101:映像制作における色調補正の基礎』をおすすめします。