選考者に刺さる:成功するポートフォリオ作りのヒント

コンセプトアーティスト&クリエイティブアシスタントの Arturo Gutierrez氏 が、成功するポートフォリオと その作り方について考察します!


Arturo Gutierrez
コンセプトアーティスト、クリエイティブアシスタント&コーディネーター


ポートフォリオは必要か?

ポートフォリオ作りが複雑になる主な理由としては「その目的をわかっていないこと」が挙げられます。「ポートフォリオ」と言うと、まるで 決まりきった単一のものを意味しているかのようです。しかし、忘れがちですが、ポートフォリオには さまざまな意味があり、何を求めるかによって、その内容もまったく異なります。

ArtStation は、ポートフォリオを紹介するのに適したプラットフォームの1つです。
そして、その中でも、さまざまなポートフォリオのスタイルがあります
© www.artstation.com

会社やアーティストが「ポートフォリオ」を提示する場合、期待される品質のサンプル作品が含まれている一定のスタイルが一般的でした。そして、もし、採用すれば、成功すると思わせるような「市場で成功しているような作品を盛り込むことが有益だ」と考えられていました。

私は、素晴らしいポートフォリオを持っている多くのアーティストと話して「ポートフォリオ」を批評してもらう良い機会を得ました。そして、それらには、いくつかの共通点が見られました。

Ryan Lang氏 のポートフォリオにはテーマが複数あります。
個人作品から大作映画まで、さまざまなライティング条件を示す作品が含まれています
© www.artstation.com/ryanlangdraws

ありがちな発想

「あなたのポートフォリオは、そこに含まれる最悪の作品以上の評価を得ることはない(最悪の作品の評価に留まるだろう)」 この考え方 は、哲学者トマス・リードの『Essays on the Intellectual Powers of Man』(1786年)の一節、「論理的思考のあらゆる連鎖において、最終結論は最も弱い鎖よりも強くなることはない」に遡ります。これは共同努力を評価するときによく使われる手法です。つまり「5つの平凡な作品よりも 3つの優秀な作品があった方がよい」でしょう。もちろん、5つの素晴らしい作品があれば言うことはありません。しかし、作品の良し悪しは自分ではわかりませんよね?

Lian氏 のポートフォリオは熟練した描画と構図を示しています。
素晴らしいポートフォリオを作るのに 多くのイメージは必要ありません
© www.artstation.com/yanli

採用担当は忙しく、選考の時間は少ない

ポートフォリオは釣り針と一緒です。鋭く、形がよくなければ、魚はすべて逃げてしまいます。会社や採用担当者は、提示される無数の作品をさばくため、素早く評価しなければいけません。彼らは、市場に存在する多数の中から 1人を選びたいと思っています。おそらく、選考プロセスの後半になるまでは、十分に それぞれの作品に目を通し、理解する時間はないことでしょう。あなたは「ミミズの餌でサメを釣ろう」としたことはないでしょうか?

Nivanh氏 の作品には一貫性があります。
彼は 世界中のスカルロボット欲を独り占めしています。膨大な量です!
© www.artstation.com/nivanhchanthara

それはポートフォリオではない

よくあることですが「ポートフォリオ」として紹介しているものが(良いもの、悪いもの、未完成品、入れられるものはすべて入れた)ただ作品を集めたものの場合があります。1つめの問題は「量」です。多くのアーティストは「4~5作品で十分だ」と言います。2つめの問題は「取捨選択」です。過去から現在へのタイムラインがよく示されているものが多いのですが、受け取る側が見たいのは「現在の実力」です。棒人間から完全に描写された人物に進歩したのは素晴らしいことですが、それは内心で自分自身を褒めるに留め、外に出すものは「最高の最新作」を選びましょう。

ポートフォリオに載せる作品については、これさえ押さえておけば十分でしょう。
さて、次の疑問として、どんなポートフォリオにするとよいでしょうか?

これもかなり一貫性のあるポートフォリオです!
自分の好みをよくわかっていて、腕前も抜群です!
© www.artstation.com/zz-heng

狙いを定める

「ポートフォリオ」は目的によって使い分けましょう。仕事が欲しいなら「プロフェッショナル ポートフォリオ」になります。とにかく個人作品を見せたいだけなら「パーソナル ポートフォリオ」です。これらを同じ観点から批評・評価することはできません。「パーソナル ポートフォリオ」は、その作品およびアーティスト特有の範囲でのみ、真に批評・評価できることでしょう。これについて「べき論」を主張するのは愚かなことですが、「プロフェッショナル ポートフォリオ」とは完全に別物です。

趣味としてやっていることも、次第に仕事に影響して、
専門的技術を向上させることでしょう
© www.artstation.com/vbulgarov

自分の志望を意識する

「プロフェッショナル ポートフォリオ」は、自分の興味・利益に従ったものにしましょう。アーティストは「自分の入りたい市場」を観察するべきです。Blizzard で働きたい人は、Blizzardっぽくないイメージを作るのをやめましょう。アーティストは「ポートフォリオ」で紹介しているものに沿って採用されます。戦車や乗り物のデザインで生計を立てたいなら、オークやエルフを追加するのはやめましょう。もし、オークやエルフを描き続ければ、いずれ、オークやエルフを描く仕事で採用されることでしょう。

オークやエルフを描く仕事がしたければ、
オークやエルフを描き続けて、ファンタジーに没頭してください
© www.artstation.com/mischeviouslittleelf

落ち着いて考える

急いでいる状態だと煮詰まってきます。私たちは皆、今すぐ仕事が欲しいので、どこに手間をかけるべきかをしっかりと考えず、夢中で制作しています。

タブレットやスケッチパッドから少し離れて、考えましょう。「あなたが本当にペイントしたいものは何ですか?」気乗りしないものを制作して、他人の関心を引こうとするのはやめましょう。作りたいものが何であれ、実力さえ 伴えば 市場は開かれています。どんなテーマに興味を持っても、「優秀であれば 必ず結果は伴う」と私は信じています。

このポートフォリオは突出しています。
スタイルは非常に個性的で、主流の描画スタイルと比較して適度に擬人化されています
© www.artstation.com/kudaman

自分のやりたいことに全力を注ぎましょう! しばらく 他のことをすべて忘れてください。次の一手を検討し、行動に移しましょう。大胆になって、不要なものを削ぎ落としましょう。

これは素晴らしいポートフォリオです!
他のテクニックを試そうと考えたことはありますか?
やりたいことは、本当にデジタル制作だけですか?
© www.artstation.com/andreablasichsculpture

もう1点

ペインティングやドローイングを続ける限り、ポートフォリオは「永遠に未完成のまま」です。それは終わらないタスクであり、更新は絶え間なく続きます。私のポートフォリオは、かつて非常に個人的なもので、変化しながら乱雑になり、サイトからサイトへ次々と移転していました。そして現在に至りますが、この状態も長くは続かないでしょう。これを知っていれば、あなたも自分のポートフォリオを提示する恐怖から解放されるはずです。「目的は腕を磨くこと」です! 他人から批評してもらうことは、プロフェッショナルとして、ポートフォリオ作りに欠かせないことでしょう。

すべて進行中! 私のポートフォリオです。
そして、常に改善しようと努力しています。
あなたの「ポートフォリオ」へと続く沢山の道があることでしょう!
© www.artstation.com/arturo

編集部からのおすすめ

ポートフォリオの作り方については、特集記事「コンセプトアーティストになるためのポートフォリオの作り方」(制作:INEI inc.) もおすすめです。


翻訳:STUDIO LIZZ (Atsu)
編集:3dtotal.jp