コンセプトアーティストになるためのポートフォリオの作り方 01:目的とルール


大曽根 純(INEI inc.)
コンセプトアーティスト


はじめに

初めまして、INEIコンセプトアーティストの大曽根 純です。「コンセプトアートの事をもっと知りたい!」「コンセプトアーティストになりたい!」という方に向けて 情報発信をしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

私自身は、海外でコンセプトアートを勉強した後に INEI に入社しました。私が勉強していた時は、コンセプトアーティストになるために必要な知識や技術を集めるのがとても大変でした。例えば、ポートフォリオ作りにしても、直接、プロの方々に聞いてアドバイスを貰ったり、海外のチュートリアルをたくさん探して情報を得るしかなく、それだけ時間と労力が掛かりました。

そのため「これからコンセプトアーティストになりたいと思っている人に少しでも何か力になれないか?」ということを考え、この「コンセプトアーティストになるためのポートフォリオの作り方」を書き始めることにしました。

これまでに得た経験と知識や、INEI代表の 富安 に言われたことなども含め、情報をシェアしていけたらと思います。コンセプトアーティストに興味がある方々の参考になれたら幸いです。

掲載の予定

まずは、ポートフォリオ制作について、全5回に分け、書いていきたいと思います。

コンセプトアーティストになるためには、自分の実力をアピールするための作品集が必要です。そして、それを作ることはコンセプトアーティストを目指す人にとって、最初の難関かもしれません。

なぜなら、プロとしてのある程度のレベルが求められるため、キャリアのない駆け出しのクリエイターにとっては「ポートフォリオひとつですべての評価が決まる」と言っても過言ではないからです。もちろん、人によって作品のテイストは違いますので、ここでは、ポートフォリオを作る上でのルールや組み立て方、さらには、レジュメの書き方までをお話ししていきたいと思います。

第1回: 目的とルール
第2回: 作品選びの注意点
第3回: 組み立て方
第4回: デザイン
第5回: レジュメ・カバーレターの作り方

第1回: 目的とルール

ポートフォリオ(作品集)の目的は、相手に自分の実力を知って貰い「この人にプロジェクトに参加してほしい!」「是非うちの会社に来てほしい!」と興味を持って貰うことだと思います。

例えば、希望しているゲーム会社のアートディレクターに、自分がどんなデザインが出来て、どんな種類のテイストで、その会社のプロジェクトにどう貢献出来るか を上手にアピール出来たら、仕事に繋がるかもしれません。そのため、ポートフォリオに加える作品ひとつひとつに全力をかけ、時間をかけて、じっくりと組み立てる必要があります。

1. 形式について

ポートフォリオの形式としては、オンラインと PDF の両方を作っておくと便利です。

オンラインポートフォリオの良い点は、 作品のクオリティアップや修正をその都度、簡単に行えるので、常に最新を維持できることです。オンラインに作品を載せる場合、自分の WEBサイトを1から作っても良いのですが、作品投稿サイトを利用すると時間をかけずにに作ることができます。

例えば ARTSTATION というサイトでは、独自ドメインで自分の WEBサイトを作れるサービスもあるので参考にしておきましょう。

PDF に関しては、目当ての会社に合わせてポートフォリオをカスタマイズする時に使うことができます。例えば、複数の会社に応募する際に、それぞれに合わせた作品を載せることで、よりフォーカスしたポートフォリオを作成できます。

また、会社によっては、作品をファイリングしたものを郵送のみで受け付けているところもありますので、各会社のリクルートページをよく確認しておくことが重要です。

2. 枚数について

ポートフォリオに加える作品数については、最も迷う所かもしれません。これも特に正解はなく、プロの方々のポートフォリオを見ても、皆それぞれ違います。つまり、大事なのは「量」ではなく「質」ということです。

今まで努力してきた訳ですから、自分が作った作品すべてを載せたい!という気持ちは分かるのですが、それはやめておきましょう。その中に1枚でも妥協した作品が混ざっているなら、それは載せるべきではありません。覚えておくことは、見る側の標準が、あなたの1番クオリティの低い作品にいってしまうということです。

例えば、パースの狂っている作品を載せてしまうと、第3者からは、「この人はパースの狂いを見抜けない人なんだ」というイメージがついてしまいます。そのため、載せる作品の数は絞りに絞り、本当に良い作品だけを集めましょう。

目安としては「最新・最高の作品10枚」を基準に考えるといいかも知れません。私の経験だと、納得のいく作品が10作品仕上がると、それを基準に新しい作品を加えるか、クオリティアップに集中するか決めることが出来るようになりますし、自信にもつながります。

次回は「作品選びの注意点」についてです。
(掲載作品:INEI Inc. / 文:大曽根 純


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