熟練アーティストによる人体を描く秘訣:効果的な 頭部の描き方

コンセプトアーティストやイラストレーターの必須スキルである人物ドローイング。限られた時間の中で、人体の造形や魅力的なポーズを瞬時に捉え、キャンバスに落とし込むために必要なものは何でしょうか。そのテクニックの一部を紹介します


Kan Muftic

1976年、ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボ生まれ。1992年4月、国内で勃発した激しい政治的紛争のため、サラエボを離れる。その後、さまざまな映画、TV、ゲームのプロジェクトに参加して現在に至る。参加作品は、映画『ドクター・ストレンジ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、ゲーム『Destiny』など。現在は、アニメーションディレクターとして、Netflix の番組制作に参加。
1976年、ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボ生まれ。1992年4月、国内で勃発した激しい政治的紛争のため、サラエボを離れる。その後、さまざまな映画、TV、ゲームのプロジェクトに参加して現在に至る。参加作品は、映画『ドクター・ストレンジ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、ゲーム『Destiny』など。現在は、アニメーションディレクターとして、Netflix の番組制作に参加。

問題となりやすい領域

本書のテーマが人体ドローイングであるにもかかわらず、まだ解剖学(アナトミー)に触れていません。個人的な見解では、あまり解剖学を知らなくても意外と良いジェスチャードローイングを制作できます。

私の場合、人物のウェイト配分とジェスチャーが最も大切です。なぜなら、コンセプトアーティストの仕事には、人々によって環境を息づかせる、動きにおけるキャラクターデザインの役割の説明、衣装デザイン、ストーリーボードの作成が含まれているからです。

コンセプトをよりはっきりと伝えるのに、素早いジェスチャースケッチが最適の方法というわけです。また、満足のいく結果を出しながら、厳しい締め切りを守るのにも役立ちます。

多くの人々が人体ドローイングを避けるのは、解剖学の複雑さによるところが大きいでしょう。解剖学は壮大なテーマであり、1つの章にすべてを収めることはできません。しかし、解剖学の知識が増えれば増えるほど、絵は見映え良く、美しくなります。

私は解剖学が大好きです。自分の作品をどれほど向上させてくれるか知っているだけでも、十分やる気が出ます。「人体」は非常に魅力的であり、その複雑な機能の探求に飽きることは決してありません。

しかし、本書のテーマは解剖学ではありません。世の中には解剖学を学習できる数々の素晴らしい書籍があります。本書はエンターテインメント業界で働く人々をターゲットとした、人物のクイックスケッチに関するものです。とはいえ、解剖学をじっくり学習する時間や余力のない人がいることを認識しています。

そこで、本章では取り組むのが難しい人体のいくつかの領域に焦点を当てます。こういった領域では、私自身を含め多くの人々が苦戦しているのを見かけます。それらの理解と向上に集中すれば、人体ドローイングとキャラクターデザインのスキルに、この先も恩恵をもたらしてくれるでしょう。

頭部

頭部は人体ドローイングに不可欠な部分です。頭部のスケッチを数多く描くことは、キャラクターデザインやクライアントにアイデアを売り込むときに役立ちます。鑑賞者が頭部を見たとき、すぐにつながりができるため、アーティストには大きな責任が伴います。とりわけ頭部や顔の間違いに対して、鑑賞者はあまり寛容ではありません。肖像画の芸術は、美術史の中でも常に偉大な分野として考えられてきました。

 

ここではこの難しい領域に深入りすることなく、頭部の基本構造に注目し、ライフドローイングを効果的に行う方法を考察します。以降の図とステップに従い、まず、頭部の側面図を描きましょう。これによって対称性(シンメトリ)を気にせずに、顔の主要な要素に慣れることができます。その次に、正面から見た顔の簡単な描き方を説明します。