【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード57:踏んだり蹴ったりの謎
ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!(※今回は少々品のない表現が含まれています。ご注意ください)
エピソード57:踏んだり蹴ったりの謎
「踏んだり蹴ったり」 これは、ひどい災難が立て続けに起こった時に使われることわざである。前から思っていたのだが、これはおかしいと思う。 なぜなら、踏んだり蹴ったりしたら 逆に気持ち良くすっきりするのではないか? それで 意味がまったく逆というのは納得がいかない
本来の意味から言えば、「踏まれたり蹴られたり」じゃなきゃおかしいではないか。これならば、そんな目にあって災難なので納得がいく。訂正すべき言葉だと思うが、しかし、これは古くから伝わる言い伝え。何か深い意味があるに違いない。きっとこれは、それを踏んだり蹴ったりしたら気分が滅入る何かを省略しているのではないか?
それを、このことわざの頭につけたら その意味を成すに違いない。ためしに いろいろあてはめてみようと思う。
「キリスト踏んだり蹴ったり」
徳川政権時代、隠れキリシタンを見つけるため十字架やキリストやマリアの絵などを人々に踏ませ、それが出来ない者はキリシタンとみなし弾圧の対象になった。まさに この人たちからすれば踏んだり蹴ったりであろう。しかし、これだと あまりにも一部の人たちに限定された言葉になってしまう。そういう言葉が何百年もたった今でも使われてるのは何かおかしい気がする。他にきっと、もっとユニバーサルな物があるはずだ。
「恋人踏んだり蹴ったり」
キリシタンに対するキリスト。一般の人の大事な物の対象はやっぱりこれか。自分の彼氏や彼女を踏んだり蹴ったりしたらさすがに気分も悪いだろう。いや待てよ、時にはスッキリする事もあるか? いや、それより、昔、嬉しそうに笑いながら 自分に強烈な蹴りを入れてくる彼女もいたぞ。いかん。こんな事 暴露してどうする! これでは、また、すっきりする意味になってしまう。よく考えろ!
「しこ踏んだり蹴ったり」
ちがーーーーーう!! 踏んだりという言葉にただ合うだけじゃないか。しかも、隠れキリシタン限定どころか 相撲取り限定で もっと少人数ではないか。さらに しこは蹴らない。 自分で突っ込んでないでもっと考えろ!
「石原さとみ踏んだり蹴ったり」
あんな綺麗なスーパー女優を踏んだり蹴ったりしたら さすがに気分が悪いだろう。しかも、そのことが発覚したら、全国のファンからドンナ恐ろしい仕打ちを受けるか。まさに踏んだり蹴ったり。 おお、まさに この意味のままじゃないか。踏んだり蹴ったりの上につく言葉とは、石原さとみの事だったのか!
って、よく考えたら、この言葉は、石原さとみが生まれるはるか昔から使われていた言葉じゃないか。もっと昔からあるもの...。それなら、「小野小町 踏んだり蹴ったり」か?
いかん! 何かどんどん離れていってるような気がする。よし! もう1度原点に戻って。基準は、誰にでも通じるもので、それを踏んだり蹴ったりしたら それ自体が災難。そんな物あるのか? いや、ちょっとまて...
あっ、これか、この事か! 何でこんな簡単な物が今まで気づかなかったんだ。これなら誰にでも通じて意味もぴったりだ。それは...
「うんこ 踏んだり蹴ったり」
おお! これならば納得! うんこを踏んじまったら、こりゃあ ついてねぇや。しかも、昔の人はぞうりを履いていたので 誤って踏んだら、はみ出て、じかに足についちまう危険性も大。その上、腹が立って、さらにそれを蹴ろうものならたまらない。つま先にまでうんこがついてしまうこと必至である。 うんこを踏んじまった上に さらに蹴っ飛ばしてしまう。ぞうりの底にもつま先にも、へたすりゃ、足の甲や側面にまでうんこがこびりつき、彼女には臭くて嫌われ、上司にも臭くて怒られ、友達にも臭くてからかわれ、まさに 踏んだり蹴ったり。
これほどまでに「踏んだり蹴ったり」ということわざがマッチする物があるだろうか? これなら納得である。きっと、これを体験した人が、家に帰る前に足を綺麗に洗い臭いを落として、そして、帰って、奥さんにぽつりと言ったのだろう。いやあ、今日はホントに踏んだり蹴ったりだったよ。 きっと、その日の惨めな思いをこの言葉に凝縮して伝えたのだろう。しかし、何を踏んだり蹴ったりしたのかは、みっともなくていえなかったのに違いない。やはり、このことわざの言葉は正しかった。昔の人の怨念が中途半端な言葉でありながら、正しい意味で残っている稀な例であろう。
最後に、このわかりにくいことわざに変わり、もっとわかりやすい、なおかつ、もっと強烈なことわざを考えてみようと思う。
「ぼっとん便所から うんこぼっとん」
誤って ぼっとん便所に落ちてしまい、恥ずかしいので助けを呼ぶのに躊躇しているところ、誰かが慌てて便所に入ってきて、よける間もなく、上から絞りたてのうんこを さらにくらってしまうさま。この上ない災難。 踏んだり蹴ったりの最強バージョンですね。
「棚からボタうんこ」
棚を見上げたら突然うんこがボタッと落ちてきたさま。これも災難。 踏んだり蹴ったりのミディアムバージョンですね。
「いちうんこ去って またいちうんこ」
落ちてきたうんこをせっかくよけたら、また次のうんこが落ちてきたさま。立て続けに続く災難。 踏んだり蹴ったりと同格レベルですね。ありありとその光景が眼に浮かびます。
「聞いて極楽 見てうんこ」
なぜ、女子は、紹介する女友達を「可愛い娘だよ」というのでしょう? その日は頑張って乗り切るしかないですね。と、まあ、このように、ことわざというものは いくらでも考えられる物なのですね。皆さんもうんこにはくれぐれも注意しましょう。私が言いたいのはそれだけだ。
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