コンセプトアーティストになるためのポートフォリオの作り方 04:デザイン


大曽根 純(INEI inc.)
コンセプトアーティスト


第4回: デザイン

ポートフォリオをデザインすることはとても大切だと思います。私も色々な書籍を参考にしながら、最初は「どんなカッコいいデザインにしようか?」と考えていました。しかし、一番重要なのは、シンプルに「自分の作品の良さを伝えられるデザインにすることだ」と思うようになりました。

なぜかというと、あくまでも、ポートフォリオにおける主体は「掲載するコンセプトアート作品であり、その装丁ではない」からです。つまり、カッコよくデザインすることが目的ではなく「自分の作品を一番良い見え方にするためにデザインする」という捉え方が良いかもしれません。今回は、見やすいポートフォリオデザインにする上で、私が心がけたことを紹介します。

1. レイアウトについて

 

まず、レイアウトについてですが、出来るだけ規則に合わせて 作品を配置するようにします。 例えば、上の図の ①と②を見比べたときに、どちらの方が作品をより綺麗に見せることに成功しているでしょうか。 おそらく、①の方がスッキリと見やすいので、大多数の人は ①の方が綺麗だと感じるのではないでしょうか。

それと比べて ②は、謎の葉っぱの装飾があったり、作品がグリットに沿っていなかったり、ごちゃごちゃ配置しているだけに見えてしまいます。これでは、せっかく頑張って作った作品の魅力も半減してしまいます。これは避けたいですね。

 

上の図の例は、実際に INEI の作品をグリッドに合わせてレイアウトしたものですが、きちんと並べることで より作品自体の魅力が伝わりやすくなっています。 もともと密度の高い作品がシンプルにレイアウトされているだけで プロフェッショナルな印象を与えるので、特に重要ではない情報を付け加える必要もないと思います。

ちなみに、前回の 03:組み立て方「3. カラーストーリーを組み立てる」でお話ししたように、このページでは、オレンジから紫に色がシフトしていくように配置することによって、全体でのまとまりが出るように意識しています。

2. フォントについて

 

 

魅力あるポートフォリオ作りを目指す上で「フォント選び」は重要な要因になると思います。例えば、ファンタジー作品が自分の一番の強みで「その魅力を前面に押し出したい!」という人は Papyrus などのフォントでファンタジックなイメージを出してみるとか、色々なジャンルをまとめて1つにしている場合は Helvetica などの超ベーシックなフォントを使用してもいいかもしれません。

気をつける点として「判読性が低いものや、ポップ体、筆文字、手書きなどは避けた方が良い」と思います。読みにくい文字は、それだけでマイナスの印象になる可能性がありますし、ポップ体は若干ふざけた印象に、筆文字や手書きはクセが強すぎる場合があるからです。

フォントについてアカデミックに勉強したい人には『タイポグラフィ・ハンドブック』(小泉 均 著) 、自分にあったフォントの組み合わせを探している人には『フォント マッチングブック』(パイ インターナショナル 編著) といった書籍が参考になるかと思います。

3. 背景色について

 

作品自体の色味を伝えるためには、基本的に、背景は無彩色(グレイを含む 白〜黒)にした方が無難です。例えば、極端ですが、図のようにピンクの背景だと、作品の色とケンカして、あまり品の良いイメージとは言えないでしょう。背景の色が 作品の色調の豊かさを見えづらくしているとも言えます。

ポートフォリオ作りでは「ページの世界観よりも、作品が如何に綺麗に見えるかの方が大事」だと思いますので、その辺も気をつけてみましょう。ただ「それではつまらない。もっと自分の個性を出したい」という人は、フォントの色を変えてみるとか、どこかに、差し色を加えてみたりして、見え方を変えると良いかもしれません。

4. まとめ

以上、ポートフォリオをデザインする際に私が気をつけたことを紹介しました。ざっくりまとめると「損をしない」ことが大事なのではないかと思います。 すでに述べましたが、レイアウトをラインやグリッドに揃え、フォントは視認性が高く かつ 自分の作品の雰囲気に合うものを使用。背景は作品を邪魔しない無彩色にするなどして、出来るだけ、マイナスになりうる要因を排除していくだけで、作品を見てもらいやすくなると思います。

そのためには「デザインを自分のためにする」というよりも、人のため、つまり「人がどう思うのかを考えること」が必要になってきます。 そして、それは、プロになってからも「クライアントや届けたい相手のことを配慮する」という意味で全く一緒のことです。そこがしっかりと出来ている人を採用側も積極的に採りたいと思うのではないでしょうか。

今回は、私が気をつけたことをメインにして、テクニカルなところには深く触れませんでした。レイアウトやフォントについて詳しく勉強したい方は、書店のデザイナー向けのコーナーに行き、参考書を手に取ってみることをおすすめします。

次回は「レジュメ・カバーレターの作り方」についてです。
(掲載作品:INEI Inc. / 文:大曽根 純

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