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コンセプトアーティストになるためのポートフォリオの作り方 02:作品選びの注意点

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大曽根 純(INEI inc.)
コンセプトアーティスト


第2回: 作品選びの注意点

INEIコンセプトアーティストの大曽根です。「コンセプトアーティストになるためのポートフォリオの作り方」と題して前回から書かせて頂いていますが、たくさんの方々に読んで頂きありがとうございました。

前回の 01:目的とルール では「ポートフォリオの目的」について触れましたが、今回は「作品選びの時に気をつけること」を私なりに書いてみようと思います。もし、具体的にもっと知りたい方や、ここが分からない等の質問があれば、SNS や INEI のウェブサイトからメッセージを頂けると幸いです。

また、「ここで紹介していることが100%正解」という訳では全く無いので、ポートフォリオ作りの参考程度にして頂けたらと思います。

1.「コンセプトアートっぽい壮大な絵」ではない

 

私がポートフォリオ制作をしていた時に、常に気をつけていた事は「そこに明確なコンセプトがあるか?」ということです。「どんなに上手に一枚の絵を仕上げたところで、そこにコンセプトが無ければ すぐに見抜かれてしまうだろう」と思って作っていました。

そのため、ポートフォリオに載せる作品は「何を聞かれても具体的に説明できるもの」だけにしました。例えば、ファンタジーの世界を描くにしても「いくつの種族が存在していてどんな武器を使うのか?」「なぜ この衣装でどんな魔法を使うのか?」「どの時間帯で、なぜ このライティングなのか?」などコンセプトを出来るだけ細かく絞っていました。そうすると、より説得力のある作品になりますし、制作する時も悩みにくくなるということにも気がつきました。

逆に、その事に気がつく前は「良い作品を作りたい!」と思うばかりで、画面の美しさばかりに気を使っていた時がありました。そんな時はたいてい進みが悪く、どっちの方が良いのかと迷って、結局 面白くない作品になってしまうことが多々ありました。

そんな経験から、常にクリアなコンセプトを意識して制作することは、結果的にポートフォリオのクオリティを上げることに大きく貢献しますし、作業自体のスピードも上がるのではないかと思います。

2. ジャンルの多様性

 

特定のジャンルだけを目指していない限り、基本的にポートフォリオに加える作品の種類はいくつかあった方が良いと考えています。

その理由は2つあって、1つは「会社によって全く異なるプロジェクトを同時進行することもある」ということです。例えば、INEI では、常に複数のプロジェクトを同時進行しており、その都度 テイストの違うコンセプトに携わることになります。

もう1つは「自分の得意なジャンルだけをやっていると、表現やデザインが限られてきて、結果的に似たような作品ばかりになってしまう可能性がある」ということです。そのため、ポートフォリオを制作している現時点で、色々なジャンルの作品に挑戦しておくと、会社に入る前も入った後も、選択肢が広がって良いのではないかと思います。

3. テクニカルプロセスではなく シンキングプロセスを載せる

ポートフォリオに載せる作品は、必ずしも1枚の完成された絵だけとは限りません。同時に「シンキングプロセス」を加えておくことも、実力を示す手段になるかもしれません。

「シンキングプロセス」とは、作品を作るうえでの思考の成り立ちのことです。これは「自分がそのコンセプトをどう考えたか」「例えばどんなモチーフから発想を得たか」「いくつかのサムネイルスケッチからなぜそのアイデアに絞ったか」等のプロセスをビジュアル化したものです。場合によっては、自分が参考にしたリファレンスを加えて説明しても良いかもしれません。私の場合は、作品の横に写真や図を加えて、どんなモチーフから発展させたかの簡単な説明をつけたりしていました。

ここで注意することは、「テクニカルプロセス」はポートフォリオには載せない方が良いということです。「テクニカルプロセス」とは技法的な工程という意味で、簡単に言うと「最初にパースラインを描いて、その次に下描きをし、色を塗って...」などの作業的な手順のことです。これらの過程はあくまで作品をアウトプットするための手段に過ぎないですし、プロの方は完成した作品を見るだけで、ある程度その制作過程は想像がつくと思います。そのため、プロセスを載せるのであれば、アイデアやコンセプトをどう発展させたかが分かるものにしたほうが良いと思います。ただ、制作プロセスを公開したり、他の方のやり方を見たりことはとても楽しいですし、モチベーションも上がります。ですので、掲載したい場合は、ポートフォリオとは区別しておくといいかもしれません。

4. 旅に出る

最後にメンタルの面から、私が気をつけていたことを紹介します。

ポートフォリオを作る上で、冷静な判断をすることは絶対に欠かせないことだと思います。しかし、長期間集中して制作していると、自分の作品に目が慣れてしまい、どこかおかしい所があっても気づかず そのまま進んでしまうことがよくあると思います。これではポートフォリオに加える作品を冷静に選ぶことが難しくなります。また、これはコンセプトアーティストだけに限らず、すべてのクリエイターにとっても同じかもしれません。

冷静さを失うと、どういうことが起きるかという一例を紹介します。私が美術予備校で石膏デッサンをしていた時に「どう考えても悪いところが見つからない絵が出来上がった」と思った時がありました。しかし、1時間休憩して戻って見てみると、それまで完璧だと思っていた形も調子も全く合っていないことに気づくのです。そのため、また1から描き直して、大きく時間と労力を無駄にしてしまうということがよくありました。つまり、集中すると、細かいところに気がいく傾向があり、全体を見ることを忘れてしまいがちだということです。

そして、この「勘違い」は 1作品だけにとどまらず、ポートフォリオ制作全体で考えてみても、当てはまることだと思います。 そのため、実際に制作している以外の時間を有効に使うことも、より良い作品を作ることに繋がるのではないかと感じました。「旅に出る」と書いたのは、その中のアイデアの1つです。(実際、私はバックパッカーをしながらポートフォリオを制作していたので、場所を変えること自体が良い気分転換になっていました) それだけでなく、友達と遊んでも、映画を見ても、本を読んでも良いと思います。また、自分のポートフォリオを、絵のことなんか全く知らない母親や友人に見せて、ピュアでフレッシュな意見を求めてみるのも良いかもしれません。

とにかく、常に冷静な気持ちでいられるような環境を 意識的に作ることを目指してみましょう。

次回はポートフォリオの「組み立て方」についてです。
(掲載作品:INEI Inc. / 文:大曽根 純

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