【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード34:スピルバーグのツルの一声 – 映画『宇宙戦争』

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード34:スピルバーグのツルの一声 - 映画『宇宙戦争』

スティーヴン・スピルバーグ 監督、トム・クルーズ 主演の映画『宇宙戦争』(原題:『War of the Worlds』 2005年公開)のお仕事をしました

この頃の映画から、フルCG のキャラクターが蔓延し始め、この作品も例外ではなく、エイリアンは全てデジタルになりました。映画の最後の方に、宇宙船を開けたら、ぐったりしたエイリアンの腕が落ちてくるシーンがあるのだけれど、CGなのに、その重量感とリアリティに皆で感心したのを覚えています。

さて、そこで、私が何を作ったかなのですが、この映画の中では、人間が宇宙船に搾取され、体をバラバラに刻まれて、その養分(肉片)がそこら中に撒かれます。そして、地上にはびこる赤いツタが、視界中に広がる繭(エイリアンの胎児が入っている)に養分を送っているという恐ろしい設定(人間の養分がエイリアンを育てるための肥やしにされているという)がありました。その繭の中のエイリアンの幼体を造形したのです。

繭の中のエイリアンの幼体

繭の中のエイリアンの幼体

悪いエイリアンなので、顔を結構悪くしたところ、スピルバーグ監督が「もっと胎児のように幼くして欲しい」というので下の写真のように変えました。

胎児のように幼くしたエイリアンの幼体

胎児のように幼くしたエイリアンの幼体

しかしながら、スピルバーグ監督が撮影現場に何十とある胎児の入っている光る繭をみて「SFチックすぎる」という事で撮影せずに終わってしまいました。自分は、エイリアンの胎児の原型を1体と赤いツタをチャチャッと造形しただけだけど、他の多くの人たちは、その後、数ヶ月、そのエイリアンと光るドームとツタの大量生産に明け暮れていたのですが... その苦労の一切がなくなってしまう。

いやー、映画って、ホンッとに恐ろしいものなんですね。 というオチにまたまたなってしまったエピソードでした。しかし、結局、胎児と繭が映画の中にでてこないから「あの赤いツタは何なんだ?」って感じになってしまったのがちょっと残念である。

 

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