CGでリアルな動物をつくるために :「アフリカゾウ」のスカルプト

ギリシャ出身の3Dモデラー/ジェネラリスト Stavros Fylladitis氏 が、CGのリアルな動物「アフリカゾウ」の制作ワークフローを共有します(Maya、ZBrush等使用)


Stavros Fylladitis
モデラー / ジェネラリスト


このチュートリアルで、私の個人プロジェクト「アフリカゾウ」の制作プロセスと使用テクニックを紹介できることを嬉しく思います。この制作から私は多くを学ぶことができたので、その得られた知識と経験の一部を CGコミュニティに還元できればと思います

ステップ01:リファレンス

多くの人はプロジェクトの初期段階で興奮し過ぎて、楽しく興味深いものに、すぐに手をつけたいと考えるようです。しかし、私が学び、大きな手助けになったのは、まず、これから制作を始める内容の研究に時間を取ることです。「その動物はどこに住んでいますか?」「生まれたとき(または年老いたとき)どう見えますか?」 これらは、その動物の体型や歩き方に大きく影響しています。そして、それらのリサーチは、制作する動物に個性を与え、生き生きとさせてくれることでしょう。

さて、私の結論ですが、作成モデルの出来栄えはリファレンスに左右されます。解剖学の本を読んだり、動物園に行ったり、ドキュメンタリーを見たり、Pinterest を閲覧して、最高のリファレンスを見つけるために時間をかけてください。そして、「80:20」のルール(はじめに行う20%の作業が、残りの80%の見映えを決定する)を念頭においておきましょう。リファレンス収集を終えたら、画像表示ソフト PureRef を立ち上げて、常にリファレンスとして表示しておきましょう。PureRef は無料の画像ビューアで、作業を邪魔することなく多くの画像を表示できます。

PureRef でリファレンス素材を表示します

ステップ02:骨格

動物を理解するための最良の方法は、体内から作業を始めることです。私はよく骨格から始めますが、同じように作業を始めて発狂する必要はありません。基本フォームと骨のボリュームのあるシンプルなジオメトリで構いません。今回は、私の個人プロジェクトであり、時間に余裕があったこと、骨を作るのが私自身大好きなために、少し作り込みました。このプロセスでは ZBrushMaya の間を行き来します。通常、Maya で骨のローポリシルエットを構築して、ZBrush のダイナメッシュ(DynaMesh)と ZRemesher でディテールを作成します。

骨格を手始めに、ゾウの構造を構築します

ステップ03:筋肉

骨格構造の見映えが良くなったら、次は 筋肉に取り掛かりましょう。ここからは多くのアプローチを取ることができます。私の好みは、ダイナメッシュの球で主要な筋肉を大まかに作る方法です。こうすれば、骨の上にある主要な筋肉群を示す十分な情報になります(想像で描くことを避けられます)。

ゾウの骨格に筋肉を追加します

ステップ04:ボディ

筋肉や骨格が整ったら、ダイナメッシュですべてを1つにまとめます。メッシュの密度で大事なのは、筋肉が見えるように十分な情報を持たせながらも 大きなフォームを簡単に動かせるように 密度を低く保つことです。まず、ボディの基本構造を作り、そこから フォームの構築を始めることがポイントです。そして、ここで、体型を決めなければなりません。たとえば「骨や肋骨が表面に浮き出ているくらい痩せている」「筋肉や骨を覆うのに十分な脂肪を蓄えている」といった風にです。

ボディの表面フォームを構築する

ステップ05:使用ブラシ

象の表面ディテールがどのように構築されたかを図で確認してください。大きなフォームが、ディテールを追加する前に整っているのが分かることでしょう。主に、全体のスカルプティングで使用している基本ブラシは、[Smooth][Smooth Valleys][Clay Buildup(squareアルファあり/なし)][Move][Move Topological][Dam Standard][Inflate]などです。

スカルプティングとディテールの作成の流れ

複数のブラシでスカルプト

ステップ06:リトポロジとUV

リトポロジには、ワークフローを高速化できる便利な Maya のリトポロジツールを使用しました。象の頭部のクローズアップ画像が手元にあったので、頭部に、より多くの情報を持たせ、身体に比べて細かなディテールをスカルプトしています。また、UV作業には UVLayout を使用しました。

リトポロジしたモデルとUV

ステップ07:肌とディテール

象の肌は最も扱いにくい挑戦的な部分であり、その制作は最も楽しい作業でした。できるだけリアルになるように、私は心がけています。ゾウのモデリングとそのアプローチについて、インターネットで多くのチュートリアルを見ましたが、どれも正確でリアルな肌ではありませんでした。多くの人は、すぐにアルファに頼る傾向がありますが、それだと求めている結果になりません。私は、肌の機能、伝統的な彫刻家のアプローチ研究に時間をとり、その結果、表面のほぼすべてのディテールを手作業でスカルプティングすることにしました。細かなディテールにのみ 16ビットのアルファを使用して、サーフェスノイズを少し加えています。

フォーム、筋肉、大きなひだが不正確、あるいは、まったく存在しない場合、モデルのディテールがどれだけあったとしても、奇妙で不快に見えてしまいます。ディテールに夢中になる前に、サブディビジョンレベルを行き来して、すべてがあるべきところにあるように確認してください。

肌のディテールとしわのスカルプト

ステップ08:体毛

体毛は複雑にしたくなかったので、ZBrush の FiberMesh を使用。私の求めているファーを見事に実現することができました。

FiberMesh でゾウの肌に体毛を追加

ステップ09:レンダリングとポストプロダクション

レンダリングには Maya と V-Ray を使用しました。シンプルなエリアライトを加え、希望のカメラアングルを見つけるために時間をかけ、求めていた結果を達成しました。少しコントラストを持たせるため、Photoshop を使用して、イメージのトーンを調整して完成です。

最終イメージ(クローズアップ)

最終イメージ

最終イメージ

編集部からのヒント

解剖学を学ぶには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 を、CGキャラクター制作を学ぶには、書籍 『MAYA キャラクタークリエーション』をお勧めします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp