『メトロイド』より、「ゼロスーツサムス」のメイキング
Bungie のキャラクターアーティストのAllan Lee氏が、ファンアートCG作品「ゼロスーツ サムス(Zero Suit Samus)」のメイキングを共有します(Maya、ZBrush、Keyshot、Photoshop 使用)
皆さん、こんにちは! 私の名前は Allan Lee。現在、Bungie でキャラクターアーティストとして働いています。これから、個人プロジェクト「ゼロスーツ サムス」の制作プロセスを共有したいと思います。私は『メトロイド(Metroid)』シリーズの大ファンで、ずっと、サムスのファンアートを作りたいと思っていました。この記事が皆さんに役立つヒントになれば幸いです。
ステップ01:リファレンス収集
プロジェクトを始める上で、リファレンス収集は重要な要素です。作業中に簡単に探せるように、収集後は整理して保存するように心がけています。また、このプロジェクトのために 3dtotal の Female Anatomy Figures (女性の人体模型)も購入しました。作業中に実物のリファレンス(参考資料)があると便利です。
リファレンスの一部
ステップ02:サムスの人体構造をスカルプト
スーツの下にある要素を考えながら、そのベース上に組み立てていく方法で進めます。私は Maya のベースモデルから始めて、ZBrush でスカルプトを仕上げることが多いです。女性の解剖学について理解を深めたかったので、このプロジェクトは人体構造の練習としても位置付け、プロポーションとさまざまなヘアスタイルを何度も繰り返しました。
サムスのモデリング
ステップ03:キャラクターコンセプト
ベースの身体ができ上がったら、スクリーンショットを撮って Photoshop で上からペイントを始めます。ZBrush での作業の前に、2D で欲しいルックを考えておきましょう。目指すビジュアルクオリティにたどり着くために、インスピレーションとなる画像を手元に置いておくことは重要です。
Photoshop でコンセプトを作成します
ステップ04:スーツのスカルプト
Photoshop と ZBrush を行き来しながら、ようやく、表現したいサムススーツのルックになりました。機能を考えて、興味を引く部分とその他の部分を共存させるように努めてください。最終レンダリング用に KeyShot Bridge でモデルを Keyshot に読み込みました(KeyShot のプロセスについては、後のステップでもう少し解説します)。
ゼロスーツサムス
ステップ05:ポージング
ポージングには、ZBrush のトランスポーズマスター(Transpose Master)を使用。Pixologic の ZClassroom に良い資料(※英語)がたくさんあるので、トランスポーズマスターの使用方法については省略します。モデルは最終ポーズと一緒に、反復ポーズも含んでいます。このポーズに決める前に、少しちがったポーズも試しました。ポージングでは、リファレンス写真を収集しておくこと、友人や同僚のフィードバックをもらうことも大切です。
サムスのポージング
ステップ06:ポリペイント(PolyPaint)
ポーズを決めたら、Jon Troy氏のスキンマテリアル Hazardous Skin Matcap を開始点として、肌をペイントしていきます。カラーパレットは手持ちにあるもので一貫性を保ちながらペイントします。また、スカルプトにおいても、他のブラシも使用しました(下図参照)。
使用したポリペイントブラシ
ステップ07:KeyShotとマテリアルの分離
ZBrush の KeyShot Bridge でメッシュとポリペイントをすべて KeyShot に移動。この際、ZBrush の SubTools に名前をつけておくと、時間の節約になります。
最終レンダリング。KeyShot の UIのスクリーンショット
ここでの目標は、鑑賞者に全体像を見せるためマテリアルをきれいに分類することです。作成したマテリアルタイプが分かるように、サンプルを以下に示します。KeyShot のおかげで「UVでさまざまなテクスチャリングを考える」という従来の方法を省略できました。ここでは、どちらかというと「さまざまなマテリアルについて考え、それらにビジュアルコントラストを作成する」という作業になります。
最終レンダリングのクローズアップ
ステップ08:Photoshopで最終イメージを合成
色選択のパス(clown pass / クラウンパス)があると、明度とコントラストの簡易補正に役立ちます。上から下へのグラデーションパス(gradient pass)も、キャラクターを配置させるための良い方法で、絶妙なアンビエントオクルージョンとして機能します。また、バックライト(リムライト)パスも作成、50%の不透明度でレイヤーを明るくするのに使用。最後に、カラーライトパス(color light pass)でライティングに色を加えます。微妙な効果ですが、こうすることでライティングが白っぽくならずにすみます。
レンダーパス
ステップ09:最終イメージ
ウェブ用イメージを作成するときに出てくるグラデーションアーティファクトを軽減するため、オーバーレイとノイズを使用。サムスに焦点を当てるため、背景はシンプルにしてコントラストを作りました。私のプロセスを楽しんでいただけたなら幸いです。最後まで読んでくれてありがとう!
ゼロスーツサムス(正面)
ゼロスーツサムス(背面)
完成イメージ
編集部からのヒント
フォトリアルなCGキャラクターの制作テクニックを学習するリファレンスには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 や 『MAYA キャラクタークリエーション』をお勧めします。