スピードペインティング『SF:夕暮れの探検』のメイキング

10:シルエットに質感を加える

時間を掛けてスペースシップにブラシストロークを追加、ボリュームを表現します。このとき、胴体にある重要なパーツをペイントしておきましょう。シルエットは丸みを帯びた流線形のスタイルになっています。ストロークをさらに追加して、機械類・チューブ・エンジン部の後方につながっているワイヤを描き、舳先を丸くします。

図10:平面的なストロークを少し追加、スペースシップの初期の外観をはっきりさせます

11:最初のディテールパス

クリッピングマスクでディテールを追加しましょう。テクスチャを移動、拡大/縮小して、鑑賞者の目を引きたい領域に抽象的で微妙なディテールを作成します。スペースシップには光が直接当たらないので、写真を追加する際は[比較(明)]レイヤーで、環境光に照らされた領域のみにハイライトを加えましょう。このデザインでは、色や光だけでなく各形状のサイズにおいても、コントラストが重要になります。大・中・小の形状でバランスを上手く取ると、絵の魅力が高まります。

図11:最初のディテールに使用した数枚の写真には、格子・パイプ・スクリューなどの良いディテールがたくさん詰まっています

12:2次ディテールパス

ステップ11と同じ方法で写真のテクスチャをさらに追加。拡大/縮小、回転して均一にしていきます。配置する場所は十分考慮してください。イメージとゆっくりブレンドさせるため、素材に応じて異なるブラシでテクスチャ上をペイントしましょう。最初のディテールに使用した数枚の写真には、格子・パイプ・スクリューなど使い勝手の良いディテールがたくさん詰まっていますスペースシップの胴体デザインには繰り返しのテクスチャを使用しますガラスをペイントする際は不透明度を変更します。

図12:スペースシップの胴体デザインには繰り返しのテクスチャを使用します

13:さらなるディテールの追加

スペースシップには必ずパイロットが座るコックピットがあるので、少し時間をとってこれを作成しなければなりません。別レイヤーに好みのコックピットの形状を作成し、クリッピングマスクでテクスチャと色を追加しましょう。ガラスの外観に関しては、最上位にレイヤーを作成、不透明度を落として、下にペイントしたものを浮かび上がらせます。

図13:ガラスをペイントする際は不透明度を変更します

14:人間との相互作用

このステップにおける人間要素の役割は、ストーリーテリングではなくスケール感を与えることです。これによって鑑賞者はスペースシップの大きさを簡単に把握できるようになります。私たちの脳は人間のフォームを認識するようプログラムされているため、通常、真っ先に人間をとらえます。では、機械を操作している人間の写真を見つけ、イメージに追加してみましょう。統一感を高めるため、武器や整備ツールなどをペイントすると良いでしょう。

図14:人間を追加すると、スケールがより明確になります

15:焦点の強化

[覆い焼きカラー]描画モードのソフトブラシを使い、スペースシップに光をペイントします。ディテールと目立つ領域を加えてリアリズムを強めましょう。舳先に温かみのある強い光を配置し、2 人のキャラクターにも焦点を当てます。反射やライトを考慮して、シーンに上手く統合させましょう。また、夕陽から放たれるハロ(光輪)をスペースシップのまわりに追加。コックピットを明るい緑でペイントし、青やオレンジを少し弱めます。

図15:強い光などのディテールは焦点を強調させ、リアリズムを強めてくれます

16:スペースシップの複製

このような種類のペインティングで簡単にダイナミズムを生みだすには、飛行物体を追加すると良いでしょう。今回は主役のスペースシップをいくつか複製・縮小して遠方に配置。これによってパースを強めています。このとき、複製したスペースシップの明度をそれぞれ調整してください。最も遠くにあるスペースシップはコントラストが弱く、彩度も低くなります。また、ハイライトを少し加え、胴体に反射した夕陽の明かりを表現しましょう。複製したスペースシップを夕日の近くに配置すると構図が良くなり、注目を集めたい領域から鑑賞者の視線がそれるのを防いでくれます。

図16:主役のスペースシップを複製して飛行物体を追加、ダイナミズムを生み出します

17:光の調整

焦点から注意がそれてしまうようなディテールはあまり加えず、シーン全体に集中しましょう。太陽光を調整して奥行きを与え、色を統一します。これによって、イメージはよりリアルで説得力のあるものになるでしょう。まず、[覆い焼きカラー]のエアブラシで太陽の上に層を追加。次に、[散布][テクスチャ]のブラシで層を全体に追加し、空気中の粒子を表現します(これも[覆い焼きカラー]モードで行います)。

図17:ほとんどの作業が終了したら、柔らかい光のレイヤーをすべてのレイヤーの上に追加、全体を統一します

18:仕上げのVFX

画像をフォトリアルな見た目にするには、[ぼかし]や[レンズ補正]などのPhotoshopフィルターで調整します。まず、すべてのレイヤーを統合し([Shift]+[Ctrl]+[E]キー)、その上に[オーバーレイ]描画モードのレイヤーを配置、[粒状]フィルターを適用して、色とエッジをさらに統一します(P.167も参照ください)。次に、[レンズ補正]をわずかに施し、イメージの輪郭を暗くして、[色収差]スライダを調整します。仕上げに[虹彩絞りぼかし]を追加、画面隅のディテールを取り除きましょう。

図18:Photoshopのフィルターを調整して、映画のような雰囲気を与えましょう

19:追加の微調整

ほんの数分でも時間に余裕があれば、もう少しディテールを加えてみましょう。たとえば、主役のスペースシップの一部パーツがはっきりしていないので、微妙な線・点・形状を加えて、異なる構造を示します。この微調整をもって、作業は完了です!

図19:完成イメージ

プロのヒント:写真の選択

フォトバッシングでイメージを作成する際は、適した写真を見つけることが極めて重要です。完全に異なる光源を持つ写真を含めると、その問題の修正に多くの時間を割くことになるでしょう。場合によっては、最終的にすべて破棄することになりかねません。

※このチュートリアルは、書籍『スピードペインティングの極意』に収録されています。


翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp