ZBrushとPhotoshopで作るコンセプトアート:『伝説の瞬間』のメイキング

イランの3Dコンセプトデザイナー Mohammad Hossein Attaran氏が、その作品『The legendary moment (伝説の瞬間)』の制作ワークフローを共有します


Mohammad Hossein Attaran
3D コンセプトデザイナー


皆さんこんにちは! このチュートリアルでは、ZBrush と Photoshop を使った空想シーンの制作について解説します。ここしばらく、私は、スカイダイビングの写真にハマっていたので、独自の手法で、そのようなシーンを作成することにしました。このプロジェクトは、保存さえしていなかったシンプルなイラスト(スカイダイバーの魚眼ショット)から始まりました! コンセプトは事前に描かず、ZBrush の ZSphere からスカルプトを始めました。しかし、最終的な仕上がりが SFスーツになることは直感的に分かっていました。

ステップ1:モデリング

モデリングは私の自由時間に行い、3週間ほど時間をかけました(ZBrush 使用)。最終レンダリングでは背中側は見えないので、ディテールは作成しません! しかし、ここからが本当の挑戦の始まりです。当初の構図コンセプトには満足できなかったので「何らかの意味や裏話のような要素を持たせたい」と思い、理想の構図(過去に達成できたことはありませんが!)を追い求めることにしました。さまざまなポーズ、カメラアングルと関連要素でかなりの数のコンセプトを試し、1つにまとめるまで50日ほどかけました。制作期間中は四六時中、そのことを考え、さまざまなコンセプトを検証。最後の数日は、気が変になりそうで自暴自棄になっていました。ある日に満足できた構図でも別の日には失敗に思えることもありました。

モデルの前面

モデルの背面

ステップ2:構図

背後にストーリーを感じさせながらも、浮遊感やめまいを感じさせるようなイメージにしたかったので、さまざまな焦点距離を活用。モデル周りの調整と焦点距離の修正に多くの時間を費やした結果、いくつかのポーズと構図のアイデアが生まれました。最終ポーズが決まったら、キャラクターを仕上げてレンダリングします。

構図の試行錯誤

ポーズの決定

ステップ3:レンダリング

いつも、この段階では、(さまざまなマテリアルとライティング設定を適用しながら)多くのパスを書き出し、Photoshop でまとめ、合成します。テクスチャ、色、エフェクトも、ここで追加しています。

決定した構図でレンダリング

イメージ制作のためのさまざまなパス

ステップ4:修正

まだ理想的な構図の追及は終わっていません。イメージを何度も修正し、垂直フレーミング、水平フレーミング、反転を繰り返し試します。

複数のアングルとアイデアを試す

ステップ5:ドラゴン

手の届く範囲に小さなドラゴンを配置すると面白くなると感じたので、早速、ドラゴンをスカルプトして試しました。結果は良好ですが、ドラゴンに何かひっかかります。そこで、母の胎内にいるようなドラゴンのデザインに修正して、背景に怒った母ドラゴンを薄く加えることにしました。

子ドラゴンの追加で、イメージにまとまりが出ました

胎内にいるドラゴンにデザイン修正

ステップ6:背景

「上手くいった!」と感じたので、フレーミングを決定して、アスペクト比を水平の16:9に設定。これらを適用しつつ、古代の天体衝突でできた巨大なクレーター、ジャングル、大峡谷、雲海、田園など、さまざまな背景を試しました。最終的に田園を選び、曲がりくねった川をシーンに描画。このような選択や変更に関して、私はいつも、気の合う友人たちに相談します。彼らのアイデアはいつも刺激となっています。

さまざまな背景で試行錯誤

ステップ7:最終イメージ

これが最終イメージです。ストーリーに関して、鑑賞者やアーティストから多くの素晴らしいクリエイティブなフィードバックをいただきました。そのいくつかは、私が思い描いていたものと違っていましたが、それでも有益なインスピレーションとなります。このアイデアを基に、ショートアニメーションを制作してみたくなりました。まだ、構図に満足できていませんが、目標は達成できたと思います。たった1つのストーリーではなく、鑑賞する人の数だけストーリーがあるような空想シーン、それこそが、アート作品に価値と普遍性をもたらすのではないでしょうか。

最終イメージ


翻訳:STUDIO LIZZ (Nao)
編集:3dtotal.jp