奇妙な『キノコの森』のメイキング

デンマーク出身のキャラクター&エンバイロメントアーティスト Emilie Stabell氏が、風変わりな作品『キノコの森』のメイキングを共有します(Maya、Nuke等使用)


Emilie Stabell
アーティスト | ヴィボー、デンマーク


プロジェクト開始前に、最初に行なったのは、膨大なリサーチです。作りたいものに関連する多くのリファレンスを探しました。CreatureBox のアートをはじめ、映画『クルードさんちのはじめての冒険』 やビデオゲーム『Bastion』 のアートからインスピレーションを得ました。そして、他にも現実世界のリファレンスを多数集めました。私は、リファレンス集めに重点を置いています。もし、他のアーティストが創作したイメージばかり見ていたら、新鮮で独創的なものを果たして作れるでしょうか? これから分かると思いますが、現実世界にも想像以上に奇妙で面白いことがあるのです。

ステップ1:コンセプトとスケッチ

リサーチを終えたらスケッチを始めましょう。私は、カートゥン調のマッシュルームがたくさんある環境を作りたいと思っていました。この段階では、結果を恐れずに試行錯誤してください。すべてをきれいに見せようとすると十分に物事を試すことができず、初期アイデアに捕らわれてしまうことでしょう。私は、環境を作るとき、それをキャラクターのように扱います。「100年前にはどのような感じだったか?」「中央に立つとどう感じるか?」「天候は?」「何か住んでいるか?」 これらはすべてデザインに影響を与えます。

初期スケッチ(左)、完成コンセプト(右)

ステップ2:モデリング

モデリングはスムーズに進みました。ご覧のとおり、シルエットを後で簡単に参照できるように Maya でモデルを作成、コンセプトに近づけていきます。さまざまな形のマッシュルームを入れたかったので、最終的に小さなライブラリを作成。これは UV展開済みで、必要に応じて岩の上への複製・配置ができるよう、いくつかのパーツから成ります。こうしておけば、楽しく柔軟に作業を進められます。多くの形状は似ているため、前もってUV展開しておくと良いでしょう。

モデリング経過とさまざまなマッシュルームの配置方法

ステップ3:UV

UVに関しては「モデルが布でできていたとしたら、シーム(継ぎ目)はどこにあるか?」を想像しながら行います。通常、私は UV展開を ZBrush で行いますが、このモデルはシンプルなので、Maya で行う方が簡単です。また、UV展開した後は、異なる色のバリエーションを作りやすいようにレイアウトを調整しています。ここでは、土台や岩などの大きな要素のタイル、カサのタイル、茎のタイルに分けています。

UVタイル、さまざまなキノコを作るために複数のシェルに分けています

ステップ4:テクスチャリング

テクスチャリングの前にリファレンスに戻って、最も役立ちそうなものを探しましょう。私は通常、最終的に使いたい現実世界の要素とテクスチャリングスタイルから選びます。今回は、PCゲーム『リーグ・オブ・レジェンズ』 の対戦マップ「Summoner’s Rift(サモナーズ リフト)」にインスパイアされました。シンプルなカラーパレットに集中して、テクスチャにシンプルかつ手描き感が出るようにしました。

面白みのあるテクスチャとペイントに使ったリファレンス

ステップ5:シェーディング

Maya の[トゥーン]メニューで[シェーディング ブライトネス 3トーン](threeToneBrightnessShader)を選択、カートゥン調のシェーディングスタイルを取り入れましょう。これは、かなりシンプルなシェーダです。設定も簡単でセルシェーディングのクールなルックを表現できます。モデルにシェーダを割り当て、暗い色、中間色、明るい色にテクスチャを接続するだけです。これが済んだら、テクスチャの[カラーバランス]に進み、[カラーゲイン]を調整、シェーダのライトとシャドウカラーをコントロールします。ここでは、テクスチャマップの元の色の中間トーンに保つことをお勧めします。

適切なルックに調整するプロセスとシェーダの設定

ステップ6:レンダリング

レンダリングでは、合成段階でスタイルを自由に試すことができるように、さまざまなパスを作成します。私はよく、Photoshop へ移動して、手持ちのレンダーパスで求めるルックが実現可能か見てみます。場合によっては、完成イメージの簡単な概要を確認できるので、時間の節約にもなることでしょう。

最終イメージのために使用したさまざまなパス

ステップ7:コンポジット

コンポジット(合成)の力をあなどってはいけません。レンダリングのみで適切な色を出すのに費やされる時間を節約。上手くやれば、次のレベルに作品を引き上げることができます。明確な黒や白を使いすぎず、中間トーンを多く使うようにしましょう。私の個人的な考えでは、これによって画像が「3D」っぽくなり過ぎず、目に優しくなります。コンポジットとは、色彩調和にフォーカスして、すべてを1つにまとめていく段階でもあります。

コンポジット前/後のイメージと、NUKE の設定のスクリーンショット

完成イメージ


翻訳:STUDIO LIZZ (Nao)
編集:3dtotal.jp