リアルなゲームキャラクターの作成:「マックス」のメイキング

08 リギング

リギングには、Maya 用プラグイン Advanced Skeleton を使っています。これを使えば、最小限の労力で実用的なキャラクターリグを素早く作成できます。今回はポーズをつけることが目的なので、リグにあまり時間をかけていません。ポージングで発生したエラーを、[ブレンドシェイプ]や Maya のスカルプトツールで修正しただけです。ヘアは別のスカルプ(頭皮)メッシュ上に作成し、[ラップデフォーマ]でスカルプとメインジオメトリをアタッチしました。

Advanced Skelton でリギングします

09 衣服の作成

本来ならテクスチャリングの前に衣服を作るのですが、今回はプロジェクトを2つに分けたので、アナトミーショーケースを公開したあとに始めました。

まず Marvelous Designer ですべての服を同じプロジェクトに作り、現実的な方法でインタラクション(相互作用)が得られるようにします。結果に満足したら、衣装を Maya に読み込み、リトポロジーを実行します(Marvelous のフラットバージョンに[四角ポリゴン描画ツール]でトポロジーを再描画します)、その後、[アトリビュートの転送](Transfer Attributes)でシミュレーション版の形状に合わせました(※1)。最後に ZBrush で厚みを加え、さらにディテールを追加しています。

Marvelous Designer で衣装を作成します

ZBrush で厚みを加えた最終スカルプト

※1:[アトリビュートの転送](Transfer Attributes)に関しては、こちらの記事もご参照ください。「成長したエリーのメイキング(『The Last of Us』より)」

10 衣服のテクスチャ

衣服のテクスチャリングにも Substance Painter を使用します。まず、衣服の各アイテムについて、Substance Source で適切なマテリアルを見つけることから始めます。ベースとなるマテリアルを決めたら、他のプロシージャルパターンや分解したものを重ねていき、タイリングの繰り返しでなく、より自然になるように調整します。衣服はきれいな状態なので、生地の擦れや汚れを感じさせないようにディテールを加えるのが大変でした。

Substance と Maya を行き来しながら調整し、最終レンダリングのルックを確認する作業が多くなるとわかっていたため、できるだけプロシージャルで非破壊的な作業を心がけました。

Substance Painter で衣装をテクスチャリングします

11 衣服のシミュレーション

まず、ニュートラルポーズから最終ポーズへと移行する 60フレームの短いアニメーションを作ります。次に、アニメートされたキャラクターメッシュを、Alembicキャッシュとして Marvelous Designer にエクスポートし、最終ポーズに合わせて衣服を素早くシミュレートします。そして、ポーズをとった状態の衣服を Maya にエクスポートし、[ラップデフォーマ]とブレンドシェイプで、ポージングメッシュに合わせてレンダーメッシュをリシェイプしました。

[ラップデフォーマ]とブレンドシェイプで形を整えます

12 ライティング

柔らかい影を作るため、大きな「キーライト」を使います。顔の右に微妙なレンブラントの三角形が出るように片側の高い位置に配置し、反射する部分で露出オーバーになるように露出を上げています。寒色の色温度に設定したのは、彼女の表情のムードに合うと感じたからです(※2)。「リムライト」は、髪や肩の輪郭がきれいに出るように高い位置に配置し、輪郭が暗い背景に映えるように露出を高くします。色温度はキーライトとのコントラストを出すため、暖色に設定しました。他の2つのライト(「フィルライト」「スカイドームライト」)は、不自然な暗い影を照らし、反射光をより詳細に表現するためのものです。

リムライト、キーライト、フィルライト、スカイドームライト

※2:Arnold の露出と色温度については Arnold for maya ユーザガイドをご覧ください https://docs.arnoldrenderer.com/display/A5AFMUGJPN/Lights

完成イメージ。ライティングが絶妙に表現されています

完成イメージ

アナトミーショーケース

制作のためのヒント

1. 非破壊的な作業を心がける:あとで何が変更されるかわからないので、できるだけ非破壊的に作業します。こうして、事前に少し手間をかけておけば、あとで大変な思いをしなくて済むかもしれません。

2. 素数を使ったテクスチャ:テクスチャをタイリングして重ねるときは、タイルの値に素数を使いましょう。これにより、完全一致しなくなり、タイリングの繰り返しを隠せるため、最終テクスチャのあらゆる部分がユニークになります。

3. フィードバックを得る:作業がうまくいき、フィードバックは必要ないと思っても、他の人の意見には価値があります。同じプロジェクトをずっと見ているとそのルックに目が慣れ、欠点が見えなくなるので気をつけましょう。

 


編集部からのヒント:フォトリアルな CGキャラクターの制作テクニックを学習するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』『MAYA キャラクタークリエーション』をおすすめします。

 


編集:3dtotal.jp