スーパーマン、バットマン、マイティ・ソー、ハルク.. ヒーローたちの学校!?『よくある学校生活』のメイキング

フリーランス 3Dアーティスト Eder Carfagnini氏が、教室の中の10代のスーパーヒーローたち、CG作品『an Ordinary School Day (よくある学校生活)』のメイキングを紹介します(ZBrush、CINEMA 4D、Marvelous Designer、V-Ray 等使用)


Eder Carfagnini
フリーランス 3Dアーティスト


『an Ordinary School Day (よくある学校生活)』は余暇に制作しました。他にやらなければならないことが多くて、完成までに時間を要しました。また、制作途中に使用レンダラーを CINEMA 4D のフィジカルレンダラーから V-Ray に変更しました。このメイキングでは、理解しやすいように制作プロセスを単純化して紹介します。

ステップ1:コンセプト

子供時代のスーパーヒーローたちを描く「Baby Comics」という CGコンテストに向けて制作を始めました。思いついたアイデアは「先生がやってくるまでの間、教室でくつろぐスーパーヒーローたち」です。ライバル同士の争いを描くために、ヒーローと悪役の両方を登場させ、元ネタに似たような特徴をつけることにしました。

スーパーマン:クラスのいじめっ子。運動神経がよく、クールな性格で、自惚れの強い自信家
ミスティーク:いじめっ子に魅かれるちょっと変わったチアリーダー。体には自信がありません
Dr.マンハッタン:自分と同じような青色のミスティークに恋する神経質な子供。ガラスでできた時計仕掛けの心臓を彼女のために制作中
ソー:野球好き(※バットはムジョルニア)。ミスティークが好きですが、彼女にはスーパーマンしか見えていません
レックス・ルーサー:ハンサムとは言えませんがお金持ち。この状況を利用して、嫌いなライバルのバッグにクリプトンナイトのビー玉を入れようと..(※クリプトンナイトはスーパーマンの弱点)
スパイダーマン:大人しい子供。大きな責任にどうやって向き合うかを学ぶのに忙しく、周囲を気にする余裕はありません
ミスター・ファンタスティック:頭脳明晰で好奇心旺盛。テスト結果を辛抱強く待てません
ロールシャッハ:クラスに馴染めない少年。決して場違いな場所に自分がいるとは思っていません(むしろ、他の子供たちが..)
ハルク:優秀だが少し鈍い大柄な子供(※映画『グリーンマイル』のジョン・コフィーの子供時代を想像して制作)
バットマン:自分のスーツとガジェットを制作中。少し臆病な性格
ジョーカー:問題児。常に学友のブルース(※バットマン)にちょっかいを出す機会を伺っています
アントマン:まあ、正直言って 特徴なし。小さな机とロープのはしごの制作を楽しんでいます!

ステップ2:キャラクターモデリング

各キャラクターの頭部に取り組みます。まず、スタイル決定のため、ZBrush のニュートラルヘッドから始めました。これが、さまざまなキャラクターのスカルプトベースになります。それぞれ個性的ですが、皆 同じ「世界」に属しています。

ZBrushで頭部をスケッチ

ほぼすべての顔や表情を決定した後、ベースボディを作り、各キャラクターのポージングをしました。ハルクを除き、すべてのキャラクターに同じボディを使用。ハルクには 大きく筋肉質なボディを用意しました。

シンプルなボディのメッシュ(ベース&ハルク)

ステップ3:構図

キャラクターモデリングの後、シーンの準備に取り掛かりました。机と椅子をモデリングし、ラフなキャラクターたちと一緒に配置、構図やフレーミングを決定します。カメラの焦点距離(focal length)、位置、被写体との距離(focus distance)を決め、設定はそのままに、構図に意識を向けました。前景の左に「メインの被写体」、そして、右に「メインに関連する被写体」、背景に「補助的な被写体」を配置しました。ミスター・ファンタスティックの腕の躍動感で、構成のバランスを取っています。

メインの被写体、メインに関係する被写体、補助的な被写体

ステップ4:キャラクターを洗練する

各キャラクターの配置が決まったら、頭部のリトポロジで洗練して、各キャラクターのボディにアタッチします。また、レンズの歪みを補うため、ミスティークの頭部とボディは縮小しています。メッシュは 目に見える部分のみを仕上げています。

キャラクターの頭部を洗練します(ビフォー&アフター)

ステップ5:衣装

衣装には、ずっと試したかった Marvelous Designer を使用しました。初めてだったので、あまり良い見映えになりませんでした(3つの衣装を作成)。そういうわけで、Marvelous Designer で作り始め、CINEMA 4D で完成させました。残りの衣装は CINEMA 4D で直接モデリング/スカルプティングしています。

衣装を作成

ステップ6:テクスチャリングとヘア

キャラクターに現実味を与えるため、そばかすやほくろなどの特徴をテクスチャに追加。遠くにいるキャラクターの特徴も分かりやすくなるようにします。

顔のテクスチャ

カートゥン系キャラの髪を作る場合、私は、モデリングではなく、シミュレートした髪をよく使います(※ CINEMA 4D用レンダラー V-Ray for C4D の髪のレンダリングがお気に入り)。ヘアスタイルを簡単に形作るため、ヘアオブジェクトをいくつか使用。毛の量を最小限に抑えるため、髪の数と太さを試して、目に見える髪の毛だけを手入れします。ミスティークの三つ編みは 3本のスプラインをガイドとして使用。シーンには、全キャラクター合わせて、200,000本近いヘアがあります!

ヘアスタイルとパラメータ

ステップ7:プロップ(小道具)

ほとんどのプロップ(小道具)はシンプルなオブジェクトで、最後にモデリングしました。CINEMA 4D のスカルプト機能で、スーパーマンとミスティークのバッグ、ミスター・ファンタスティックのペンケースを柔らかくしました。コート掛け 2つのマントは、CINEMA 4D のプラグイン Clothilde で作成(※11.5以前の古いプラグイン)、紫のジャケットは Marvelous Designer で作成しました。

完成シーンのワイヤフレームとシェーディングビュー