Blenderなどのオープンソースツールで作業を高速化:『ミスディレクション』のメイキング

フィリピンの3Dジェネラリスト Julian Santiago氏が、CGコンテスト THU Golden Ticket Challenge の入賞作品『ミスディレクション』のメイキングを紹介します(Blender、ngPlant、Photoshop、Krita 等使用)


Julian Santiago
3Dジェネラリスト|フィリピン

この『Misdirection (ミスディレクション)』は、CGコンテスト THU Golden Ticket Challenge(2015)のために制作、3位に入賞しました! 応募締切までのきびしいスケジュールでも品質を損なうことなくワークフローを高速化するため、テクニックをいくつか駆使しました。また、メインツールとして はじめて、オープンソースの3Dツール Blender を使用。大きな学びとなりました。

デザイン

コンテストのテーマは "The Tribe" (部族)だったので、すぐに「複数のキャラクターを作成する必要がある」と感じました。キャラクターたちを前景と中景に配置。背景はシンプルにしたので、さまざまなプロポーションと性格のキャラクターを作成することが重要でした。アイデアは「はみ出し者たちが、屈強な身体をした敵に立ち向かう」というものです。そこで「戦士のように見えない戦士のグループ」をデザインすることにしました。

力強いヒーローたち

スカルプティング

Blender の[多重解像度 (multi resolution)]スカルプティングと[ダイナミック トポロジー (dynamic topology)]スカルプティングでキャラクターの制作を開始。Sculptris に慣れている人なら[ダイナミックトポロジー]もすぐに受け入れられるでしょう。これにより、トポロジを気にせず、シルエット・プロポーション・デザインに集中できます。前景の女の子、ローマの兵士、馬の頭部のみスカルプトしました。これらの内の 2キャラクターを 残りの3キャラクターのベースにしました。

3つのスカルプトモデル

モデリングとリトポロジ

スカルプティングの後、Blender のリトポロジツールでリトポロジします。このプロジェクトは「静止画のみ」なので、ジオメトリの均等な配置やアニメーションのためのメッシュの最適化を意識していません。作業の高速化のため、まず、以前作成したモデルのパーツの一部(目、歯、手)を再利用しました。その後、モデルを再形成して組み合わせ、全キャラクターを完成させるというシンプルなプロセスです。

リトポロジしてパーツを組み合わせ

完成キャラクターモデル

シーンのレイアウト

基本的な構造でキャラクターをポージングしました。また、この段階で、髪の毛を生やして、衣服と表情のスカルプティングを行い、変形を調整します。スカルプティングした衣服はそのままレンダリング、リトポロジは行なっていません。レンダリングのために RAM を増やして(代価を払って)、ワークフローを高速化しました。このステップの後、このプロジェクトは「ロックダウン フェーズ」に入ります。つまり、これからのテクスチャ作業のために、キャラクターポーズやカメラの配置を大きく変更することはできません。

ポーズをつけ、スカルプティングを行い、髪の毛を生やしたキャラクター

木は、無料プログラム ngPlant で作成。Blender には、Sapling という独自の葉の生成アドオンがありますが、ngPlant を使えば木の外観をより詳細に制御できると分かりました。木のバリエーションをいくつか生成、グループをインスタンス化してシーンに配置します。

ngPlant で作成した木