【インタビュー】たくさんの線で 人目を引く形 を描く:イラストレーター Maksym Kopylov氏
イラストレーター Maksym Kopylov氏 が、作品によるストーリーテリング、そして、独自の形 や 想像の世界を表現することについて語ります

Q. 自己紹介をお願いします
自分が何者で何をしているのかを答えるのは難しいですね。イラストレーションやビジュアライゼーションの仕事をしています。言い換えれば、私は「嘘つき」なのです。作り出すものは、想像の世界(より正確には映像の世界)にしか存在しません。私にとってイラストレーションで最も重要なのは「物語(ストーリー)」です。
基本的に、私は「物語(ストーリー)」を語ることが好きで、時には、制作過程そのものが物語になることもあります。さまざまな方法とスタイルで物語を創作し、作品やシリーズそれぞれに独自の形を見つけ出そうと努めています。私は これまでウクライナで過ごし、作品の大半は ここウクライナの市場向けに制作してきました。
ドラゴン退治の勇者 Mykyta Kozhumyaka を描いた古いウクライナ民話のスケッチ
Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?
ドラゴン退治の作品のアイデアは、友人から拝借したものです。私は そのアイデアを発展させて、まったく新しいものに変えました。隙間時間を見つけては描いていましたね。コーヒーを飲みながら、タクシーや電車で移動しながら、子どもたちと遊びながら、どこにいてもスケッチしていました。そうした瞬間すべてが作品に影響を与えています。
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
主な目標は、たくさんの線で 人目を引く形を描くこと。直面した課題は、目を閉じて眠りに落ちないよう我慢することでした。大量の線を描いていたので筋肉が疲れてしまって... というのは冗談ですが、実際は楽しい作業でした。
制作では 言葉によって説明できない、とても重要なことを学びました。それは、ただ見て感じるしかないものです。基本的には「線だけで光と形の組み合わせを表現すること」についてです。
このドラゴンは 小さくとも死をもたらす
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
さまざまなソフトを使っています。私は実験が好きで、新しいソフトを見つけると試してみたくなりますね(テクノロジーには大きな可能性を感じています)。仕事と個人プロジェクトで異なるアプリケーションを使うこともありますが、それらはすべて繋がっていて互いに影響し合っています。仕事と個人の制作を分けることで、違う自分になれる機会が生まれます。それが創作活動において新鮮さを保つ秘訣です。
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください
ポートフォリオの更新について特別に考えたことはなく、ただ仕事をしているだけです。私の場合、ポートフォリオは受注した仕事で構成されていますが、何かを練習していて、それがシリーズになることもあります。旅行中に描いたスケッチも、ポートフォリオに加えています。キャリア初期の頃から、幸運にもポートフォリオ用に特別な絵を描く必要はありませんでした。私からのアドバイスは「ただ目の前の仕事をすること」です。
「The last lady」
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?
SNS にはあまり積極的ではありません。仕事に時間の大半を取られて、残った時間はすべて家族のために使っています。ただ、新しいアーティストや面白いアイデアを求めて、Artstation や Behance はよくチェックしています。専門書もよく読みますが、その多くは 3dtotal のものです。ありきたりかもしれませんが、私のお気に入りのハッシュタグは #inktober です。
Q. 芸術的な目標はありますか?
将来に向けてさまざまな計画を立てています。ただ、今直面している現実がそれらを変えてしまうことも多いのですが、それでも何か新しいものを作り、観客を驚かせ、人々の注意を引くような物語を語りたいと思っています。
ストーリーテリングと雰囲気作りにおいて、「音」は重要な要素です。将来作る作品は、おそらく非商業的なアニメーションになるでしょう。商業的でない作品の方が、創作において自由度が高いですから。
ドラゴンの頭部デザインは面白いです。たくさんのドラゴンの頭部を描いたことで、新しい見方ができるようになりました
ドラゴンに舌があるのかどうか気になります。自分の舌を噛まないなんて賢いですね
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
お気に入りのアーティストを言うのは難しいですね。年齢やそのときの気分に大きく左右されがちです。学生時代は グスタフ・クリムト、H・R・ギーガー、Anatolii Bazylevych、ジャン・ジロー(メビウス)に魅了されました。キャリア初期には ヒエロニムス・ボス、ヴェルナー・クレムケ、Soyfertis Leonid、クロード・モネ に憧れていました。
美術史をできる限り理解するようになってからは、同時代のアーティストに興味を持つようになりました。現在は Jean-Baptiste Monge、寺田克也、ニコラ・ネミリ といった興味深い作品の作家たちをフォローしています。
Vlad ドラキュラは唇を裂くほどの鋭い牙を持っています
Q. 今後の活動ついてお聞かせください
仕事を続けながら、常に変化していきたいですね。時間に余裕ができれば、SNS に積極的に参加するかもしれません。今はコミュニケーションと情報共有の時代ですから。YouTube で自分の経験を共有することも考えています(伝えたいこと、見せたいことがたくさんあるんです!)。未来が皆さんにとっても、私自身にとっても、面白いものになることを願っています。
「bull's head」
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