【インタビュー】制作活動の軌跡:3Dアーティスト Mohsen Hashemi氏

ベルギーの Mohsen Hashemi氏 が、アーティストとしての道のりにおいて 常に自分を高め続けることの重要性について語ります


Mohsen Hashemi
3Dアーティスト|ベルギー


3Dアーティスト/建築ビジュアライゼーションのスペシャリスト Mohsen Hashemi 氏 が、アーティストとしての道のりにおいて常に自分を高め続けることの重要性について語ります。技術を磨き、自分の作品をより深く理解することが成長につながると 氏は強調します。その創作活動の変遷と進化について詳しく見ていきましょう

Q. 自己紹介をお願いします。またアートの道を目指したきっかけをおしえてください

よくある話かもしれませんが、アーティストとしての原点は随分昔に遡ります。紙に絵を描いたとき、周りの人たちが「あなたの絵は他の人とは違う」と評価してくれたことがきっかけでした。しかし、私はすぐに気づきました。「単に人と違うというだけでは真のアーティストにはなれない」と。そこで、試行錯誤を重ね、3Dアートに可能性を見出してからは、本格的に学び始めました。

現在、建築家 兼 インテリアデザイナーとして、クライアントのために 3Dイメージ制作に励んでいます。日々成長し、より良いものを創り出すことに喜びを感じています。私の作品の多くは、その時々の気分や感情から生まれるインスピレーションを表現したものです。

これまでの私の作品を時系列で見ていただければ、だんだんと成熟していっていることがわかるでしょう。特に習得してきた技術は、私の成長過程における重要な転機となっています。

「Awaiting in the nature」いつか君は戻ってくるだろうか?この豊かな自然、この息をのむ美しさにおいて記憶に残るのは、ただ2人の紡いだ愛の物語だけ。私たちが分かち合った愛が、この場所にさらなる輝きを与えていた。しかし今は、その美しさのすべてが深い霧の中へと溶け込み、見えなくなってしまった

Q. 初期作品はまだありますか? それらを見て、今どのように感じてますか?

建築やインテリアの仕事を請け負う商業プロジェクトに取り組む一方で、定期的に個人的な創作活動も続けています。なぜなら「アーティストの魂は自由な創作を通じてこそ輝きを保つことができる」からです。商業プロジェクトで本当に満足のいくアートを作るのは容易ではなく、時には純粋に自分の感情や芸術的ビジョンを形にする作品を生み出す必要があります。私にとって、いくつかの作品はコロナ禍のロックダウン中の隔離生活に影響を受けており、それは精神的にとてもつらい時期でした。しかし、川のせせらぎが美しく聞こえるのは、水が岩や石に当たることで生まれるように、困難があるからこそ生まれる美しさもあるのだと思います。

私が考える価値ある作品とは「見るたびに心に響くもの」です。それが特定の感情を引き起こすものであれ、何かを伝えるメッセージであれ、人生の指針となるようなものであれ、あるいは見る人だけが理解できる秘密を含むものであれ、心に何かを残す作品こそが真のアートだと思います。

「Awaiting in the nature」 君はもう戻らない。それでも、この儚い人生には、まだ見出すべき独自の美しさが息づいている

Q. はじめの頃、どのようなトレーニングや学習をしましたか? 自分の成長を実感できましたか?

もう ずいぶん前のことなので、あまりよく覚えていませんが、記憶している限りでは「次の作品では前作よりも良いものを作ろう」と努め、それが 進歩、上達へとつながりました。また、役立つチュートリアルや記事をフォローしたり、新しいヒントやコツを探したりしていました。技術と並行して進めるように、特定のソフトもフォローしていました。

Q.作業中のアートワークを見せていただけますか。苦手な部分、改善すべき部分はありますか?

風景や環境を作ることが好きなので、個人作品2点を通して進歩を確認できると思います。最初の作品(Forest villa)と2つ目の作品(Hrensko)を見てください。構図、植物の種類のバリエーション、雰囲気作り、散乱、ライティング、カラーグレーディング、そして最も重要なシーン管理において、数年で進歩を遂げることができたと感じています。

制作スタイルでは、常に写実主義を大切にしてきました。これは単なる好みではなく、建築やインテリアの専門家として、現実の空間や素材を正確に表現することを重視しているからです。実在しない架空の素材や非現実的な表現よりも、実在する空間や素材の美しさや質感を忠実に再現することにこだわっています。

「Forest villa」(2017年の個人制作)

「Hrensko」(2020年の個人制作)

Q. 自分の作品に満足していましたか? それとも「これだ!」と思うターニングポイントがありましたか?

はい、実際に過去の3D作品を見返すと「もっと良くできた」と思える部分がいつも見つかります。しかし、そのときは多くの労力と時間を費やしたため、さらに時間をかけるのを避け、そのままにしておいたのかもしれません。あるいは、他のアーティストから間違ったインスピレーションを受け、それが作品に影響したケースもあったと記憶しています。近年の作品は、こうした年月で経験したすべてのミスと学びの集大成だと思います。

Q. 自信作とその理由をおしえてください?

「自信作」というのは大げさかもしれませんが、私のプロのキャリアに大きく影響した作品を1つ挙げるとしたら、「dark-side of the room」シリーズと言えます。これらの作品では「漂う孤独感」を強烈に表現しました。今でもイメージを見るたびに、制作当時と同じ感情が蘇ります。

大抵の場合、作品が多くの人から評価され支持されていても、自分ではまだ満足できません。この完璧を求める姿勢こそが、私をさらなる高みへと駆り立てる原動力になっています。常に「もっと良くできるはず」という思いが、私の創作活動を前進させているのです。

「dark-side of the room」シリーズ

Q. 現在も改善に取り組んでいることは何ですか。作品を生き生きと見せるコツはありますか?

「日々 少しずつでも新しいことを学ぶこと」が、私の強みになっていると感じています。だからこそ、常に新しい技術やアプローチを探し続けています。私はライティングやムード作りが得意です。また、空間に感情を宿らせ、見る人の心に残る作品づくりにもこだわっています。

「Diamond Shell」

Q. これから制作活動を始めようとしている読者にアドバイスをお願いします

ようこそ、世界で最も刺激的で、同時に最ももどかしさを感じる業界へ。ここでは、決してあきらめず、大きな夢を持ち続けることが大切です。「もどかしさ」とは、この業界に対する不満ではありません。ただ、努力を怠れば、すぐに置いていかれてしまう、それほどスピードの速い世界なのです。

「The Bridge」

Q. 近年の作品についてお聞かせください

現在、視覚的にインパクトのある新たなプロジェクトに取り組み、最新のテクノロジーを積極的に取り入れながら、自分のスキルと表現の幅を広げています。特に力を入れているのは、3D制作のワークフローをより効率的にし、クライアントにとっても理解しやすく、扱いやすいものにすることです。この業界では技術革新が急速に進んでいるため、常に最新の動向をキャッチアップすることで、より洗練された作品制作が可能になると確信しています。最後に、継続的なサポートと創作者同士交流できる機会を提供してくれる 3dtotal に感謝します。

「Drive your dreams into an image」

「Kisses In the Rain」

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編集:3dtotal.jp