【インタビュー】日々の業務を個人的な挑戦に:3Dアーティスト Oleg Bozhko 氏
ウクライナの Oleg Bozhko氏 が、制作ワークフロー、そして、インスピレーションを与えてくれる分野で働くことの大切さについて語ります

Q. 自己紹介をお願いします
皆さん、こんにちは。Oleg Bozhkoです。ウクライナのハルキウにある スタジオ Plarium で 3Dアーティストとして勤務しています。Plarium では『RAID: Shadow Legends』『Stormfall: Age of War』『Sparta: War of Empires』など、多くのモバイルやソーシャルゲームを開発しています。
ゲーム業界の前に、アニメーションスタジオ Animagrad で働く機会がありました。そこでさまざまな経験を積み、CG制作について多くの知識と確かな理解を得ることができました。
主にキャラクター制作という日々の業務において、過去の経験を活かし、さらに発展させるよう努めています。キャラクター制作には、モデリング、テクスチャリング、シェーディング、リギング、クロスシミュレーションなど、さまざまな分野のスキルが必要とされています。
「Sparta: War Of Empires」(3Dモデル:Oleg Bozhk /コンセプトアート:Maksim Bazhenov /アートディレクション: Stanislav Shchoholiev)Copyright © 2020 Plarium Global Ltd.
Q. 「Saracen warrior」の制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?
特別なプロセスはありません。「Saracen warrior (サラセンの戦士)」の制作は、2Dチームのコンセプトアートに沿って行われた標準的なワークフローでした。ブロッキングから始まり、アートディレクターの承認を得たあと、モデリングプロセスに進みます。
私は主に Maya と Marvelous Designer を使い、ZBrush は補助的なプログラムに過ぎません。仕上がりに満足したら、お気に入りの段階であるサーフェシング(表面処理)とルックデベロップメントに進みます。テクスチャはすべて Substance 3D Painter で作成し、最終的なシェーディングとレンダリングは Maya の Arnold を使用しました。
これらの段階が承認されたら、ポストプロセス(後処理)で微調整を行います。私は基本的にレンダリング段階で必要な結果を達成するよう心がけ、ポストプロセスでは必要なコントラストのみを追加しています。
「Saracen warrior (サラセンの戦士)」
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
私にとって どんな作品も小さな挑戦の連続で「前作よりも良いものを作ろう」と心がけています。どのような職業においても、それが「成長の鍵」だと思います。時間をかけて、すでに完成した作品を振り返り、改善できる点を分析して次の作品でそのアイデアを試すようにしています。
「Saracen warrior (サラセンの戦士)」は、金属板からなる多くの鎧の要素を含んでいます。この鎧はキャラクターの体型やポーズに合わせる必要がありますが、同時に金属板が変形して見えないようにしなくてはなりません。これは特に注意を払った課題の1つでした。
「Saracen warrior (サラセンの戦士)
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
通常、新しいソフトウェアの習得には慎重です。特にそれが Maya や ZBrush に取って代わるような基本ソフトであればなおさらです。しかし、R3DS Wrap や RizomUV のような、リトポロジーや UV作業を格段に楽にしてくれるソフトであれば、確実に学び、活用するでしょう。
「Celtic warrior (ケルトの戦士)
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください
最も有益なことは、興味を持てるプロジェクト/テーマ/スタイルに取り組める仕事に就いてしまうことです。そうすれば、日々の業務が個人的な挑戦になり、クライアントやマネージャーだけでなく、ウェブポートフォリオを通じてコミュニティにも作品を発表することができます。その結果、できる限りの努力をして、作品を最高の形で仕上げる必要が出てくるでしょう。
「Nell Bleckteeth. Raid: Shadow Legends」(コンセプトアート:Anton Ananin)
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?
SNS のサブスクリプションは一般的ですが、ニュースフィードには多くのCG作品や、伝統的なドローイングやチュートリアルが含まれています。空き時間に自主制作に取り組むのが好きなので、その多くは興味を引くものに偏っています。それ以外は、ニュース、スポーツ、一部のエンターテインメントコンテンツをチェックしています。最近では、YouTube の「Corridor Crew」にはまっています。VFX制作や映画制作についてもっと知りたい人には面白い内容かもしれません。
Q. 芸術的な目標はありますか?
まだまだ未熟ですが「常に成長したい」と思っています。何よりも、自分のスキルと表現力を高め、より深みのある作品を作ることが今の目標です。素晴らしいスキルを持ち、長い間見とれてしまうような見事な作品を発表しているアーティストはたくさんいます。しかし、最近は技術的な内容よりも、作品が生まれた理由やコンセプトに興味を持つようになりました。私は、中国の現代美術家 艾 未未(アイ・ウェイウェイ) のファンです。その作品は時に奇妙でショッキングですが、なぜ そんな表現をするのか、その背景や考え方にとても興味があります。
「King guard」
Q. 近年の作品についてお聞かせください
スカルプトとゲームアートにもっと集中したいですね。まだ未熟なスキルを早く磨き上げるため、よりシンプルな作品も作っていくつもりです。主な目標は、他の人のデザインを3Dモデルに解釈するのではなく、自分自身のデザインスキルを発展させることです。そうすれば、3Dアーティストとしてだけでなく、もっと広義のアーティストとして活動できると考えています。
「Hungerer」(アイデア提供:Iwo Widuliński、Bestiarum Miniatures)
編集部からのヒント:人型キャラクター制作のリファレンスには『アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス』を、制作テクニックを習得するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 やおすすめします。