【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード80:ティニアン島 -ツワモノどもが夢のあと

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード80:ティニアン島 -ツワモノどもが夢のあと

 

今回は、片桐さんの初監督 長編映画『ゲヘナ ~死の生ける場所~ (Gehenna Where Death Lives)』(7/30~8/5 渋谷ユーロライブで公開。※詳細・申込みは こちら)の撮影で訪れたティニアン島の話です

 

>>> 詳細・申込みは こちら

映画『ゲヘナ ~死の生ける場所~』の舞台はサイパン島で、屋外でのシーンは、実際にサイパン島で撮影しました。その中で「ラテストーン」という遺跡が出てくるのですが、それは、サイパン島を含むマリアナ諸島に実際に点在する遺跡で「昔の住居の土台」と言われています。

 

グアムにある本物のラテストーン

しかし、その石の下から大量の人骨が見つかったりもしていることから「何か呪術的なことに使われたのではないか」という説もあり、もちろん『ゲヘナ~死の生ける場所~』では「呪術的なもの」という設定にしましたよ!

面白いネタなので脚本に組み込んだのですが、調べたところ、サイパン島にはラテストーンはほとんどないため、ロケ探しでラテストーンを求めて、隣のティニアン島に飛びました。ティニアン島は、サイパン島からセスナで 20~30分です。セスナには、パイロットを含めて、4人(前に2人、後ろに2人)乗ることができます。

かなり小さい!

体重を測って、左右バランスが取れるように人を乗せるのですが、私は、パイロットの隣の席に座ることになりました。パイロット気分を味わいながらウキウキしながら出発です。

セスナが動き出すと、何やら足元で動くものがあります。見ると、そこにはペダルがあり、それはパイロットが使ってるペダルと連動しています。セスナの左右の動きは足でコントロールするようなのです。つまり、助手席でもセスナの進行方向をいじることができるのです。そんな説明もないなんて、島の人は非常に緩い。

さらに動き出しても、ドアをちゃんと閉めません。自分のすぐ横のドアが開きっぱなしなのです! 窓ではありません。ドアです! 「こんなんでいいのか! 怖え~!」と思っても、セスナは情け容赦なく滑走路を疾走し始めます。そして、離陸する直前パイロットが手を伸ばして、ドアをバタンと閉めたのでした。

このセスナには クーラーなどないため、離陸する直前までドアを開けて、空気を入れていたようです。やはり この島の人は緩い! そして、あっという間にティニアン島に到着しました。

戦時中、ティニアン島には 日本軍の空港がありました。ここを奪われたら、アメリカ軍の爆撃機が日本本土を直接爆撃できるようになるため、日本軍は必死にここを守り、日米双方に大変な犠牲者を出す悲惨な戦場となったのです。結局、アメリカ軍が奪い、ここに、当時 世界最大の空港を建設することになります。

サイパン同様、かつて、ティニアン島にも大量の日本人移民が住んでおり、日本人町も栄えていて、当時の写真を見ると、日本と変わらないほどの町並みができていたようです。観光マップには「日本人村」と書いてある場所がありますが、しかし、そこには もう、ジャングルしかありません。

かつて、日本人町にあった神社の跡

この上には 社が立っていたようです

島の一番大きい道路も半分はジャングルに迫られ、片側が通れなくなっているほどです。町だけではなく「かつて、日本軍がジャングルを切り開き、道路を通して武器庫や弾薬庫を作った跡がある」というので、そこに向かいましたが、その切り通した道も 80年近くたった今では、ジャングルが盛り返しており「"人間のすごさ" を知ると同時に "自然のすごさ" も感じられる」という ものすごく不思議な場所になっていました。

そして、弾薬庫を見つけましたが、ここは戦時中に大爆発を起こして、ダメになってしまったそうです。中に少し入って覗いてみましたが、未だかつて こんなに恐怖を感じる場所は体験したことがないくらい気味の悪い場所でした。

弾薬庫の中。恐ろしい!!

さらに、かつて世界一の大きさを誇った空港の滑走路もヒビだらけで、草が生えまくっており、どこもかしこも非常に虚しさを感じる 何とも言えない不思議な島なのでありました。

とてつもなく美しい海に向かって砲台が残っています

観光マップにラテストーンの絵が描いてあり、そこを目指してみました。海沿いにあるはずなのですが、そこに辿り着いても、道がありません。ジャングルになっています。どうやら、それは、海から少しジャングルに入ったところに存在するようなのです。

島には予算がなく、管理する人もいないようなので、荒れ放題でした。そこに神秘を感じた私は、プロデューサーと2人でジャングルの中に足を踏み入れることにしました。

「私の前には道はない。しかし、私の後には道ができる」を座右の銘の1つにしている私としては「前に道がなくても、なんとなく、ここに道があるんじゃないかな?」と適当に歩いて、ズンズン進んでいきました。そうしたら、なんと進みすぎて、帰り道がわからなくなってしまったではありませんか!!

予想外のプチ遭難

周りを見ても 2メートルちょっとくらいの高さの木に覆われて、周りが見えない。その微妙な高さに油断がありました。「私の前には道はない。しかし、私の後にも道はない」という状況になりながら、頼りになるのは波の音だけ。

とにかく、見えない海の方に向かうしか抜け出す方法はありません。湿度がひどく、まさに、滝のような汗をダラダラ流しながら、30cm くらいのヤドカリの存在にビビりながら、どうにか脱出する事が出来たのでした。結局、そこでは、ラテストーンは見つからず、そことは違うラテストーンのある他の場所を撮影場所に決めたのでした。

 

この島には、かつての日本軍の指令基地が未だに残っています。コンクリート製のボロボロの廃墟で、爆撃の跡なども残っており、自由に見学できてしまいます。『ゲヘナ~死の生ける場所~』の日本軍の基地のセットも、一部、ここでの撮影写真をもとに作っています。

 

ここも他の場所と同様なんとも言えない虚しさを感じる場所でありました。そして、この場所で、実際に撮影した時に奇跡が起こります。そのとき、我々は「あのような奇跡」を体験しようとは予想だにしませんでした。

次週は、その奇跡について書こうと思います。
>>> エピソード81:ティニアン島の奇跡

 

▼『ゲヘナ』メイキング&裏話(GEHENNA ~その軌跡)
https://3dtotal.jp/?s=GEHENNA+%EF%BD%9E%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%BB%8C%E8%B7%A1

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