ペイントオーバー用 3Dモデルの作成:ペイント編(※データダウンロードあり)
コンセプトアーティスト Gregor Kari氏 が、ハードサーフェスの 乗り物 3Dモデルを作成。それにペイントオーバーしていくプロセスを紹介します(全2回:モデリング編 と ペイント編)

>>> 1. モデリング編
>>> データダウンロード:Ztool、FBX
はじめに
前回は ZBrush を使って、アイデア出しと制作を同時に進めることができました。これにより、通常ならサムネイル作成、スケッチ、イテレーション(反復作業)、適切なカメラアングルの探索、パースの構築に費やす時間を大幅に節約することができました。今回は、リファレンスを使って、他の2D素材に違和感なく溶け込み、描かれた背景に自然に馴染むペイントオーバーの作成方法を紹介します。
完成ショット:シンプルでスタイリッシュな背景と組み合わされています
01 しっかりとした線画の作成
まず、しっかりとした線画を作成することから始めます。私の過去のチュートリアルを見たことがある方ならご存知かと思いますが、線画をとても大切にしています。これは素晴らしい練習になるだけでなく、描く対象をディテールまで理解するための優れた方法でもあります。この段階に時間をかけておくと、後で報われ、明確で迷いのないペイントを実行できます。
リファレンス
この段階では時間をかけて、ディテールまで計画を立てることが重要です。
02 色のテスト
色のテストを行います。選択範囲を作成し、各要素を別々のレイヤーで塗りつぶします。素材ごとにレイヤーを分けておくと、色を素早く変更して、さまざまなアイデアを試すことができます。すでに使いたい色が決まっている場合でも、いくつかのバリエーションを試してみることをお勧めします。複数のアイデアを比較することで初めて、どれが最も適しているかを見極めることができます。
アイデアを比較し、デザインコンセプトに適したものを選択します
03 影を落とす
3Dモデルをリファレンスとして使用すると、このプロセスが簡単になります(※ダウンロードデータ参照)。特にタイヤの溝のような複雑な影を扱うときに効果的です。新しい影レイヤーに影をトレース(ペイント)し、レイヤーの描画モードを[乗算]、[不透明度]を70%程度にします。クロムや車の塗装面に落ちる影には少し色を加えることをお勧めしますが、基本的には黒のまま進めます。
左:影だけを表示したもの、右:色を塗った乗り物に影を適用
04 背景と反射
プレゼンテーション用のシンプルな背景を作成します。ここでは、乗り物を周囲の環境と調和させることも重要です。そこで反射レイヤーを追加し、背景から紫がかった青を選んで使い、描画モードを[スクリーン]に切り替えます。この時点で、ガラスの後ろの領域のディテールも描き込んでおけば、後で戻って作業する必要がなくなります。
左側には反射レイヤー単体が表示されています。タイヤの材質により、反射がより柔らかくなっていることに注目してください
05 アンビエントオクルージョン
アンビエントオクルージョンは 3Dソフトでレンダリングすることもできます。しかし、これはお気に入りのレイヤーなので、通常は自分で描いています。この作業がうまくいかない場合は、2段階に分けて描いてもよいでしょう。まず、小さな凹みをすべて描き、次に[なげなわツール]とソフトブラシを使って、より広い領域をカバーする2番目のレイヤーを作成します。
[なげなわツール]と選択レイヤーを使えば、暗くしたい領域を簡単にペイントできます
06 メインライトの追加
影を配置したので、次はメインライトを加えます。このレイヤーは比較的わかりやすく、反射レイヤーを描いたときと同じ方法で進めます。それぞれの素材を考慮することが重要で、タイヤは他の部品よりも柔らかい反射を示します。説得力のある鏡面仕上げの車体を表現するために、反射光をオレンジ寄りの色に近づけます。
それぞれの素材で光の反射が異なります
07 ディテールを描く
いよいよお気に入りの工程、ペイントオーバーの段階です。ここまで各レイヤーを丁寧に作成してきたので、影と色はすでに配置されています。ディテールを描き込む作業は非常にやりがいがあり、少し手を加えるだけでも十分です。私は、ハイライトをもう少し明るくして鮮やかさを加えましたが、それ以外に新しい色は入れていません。タイヤにも細心の注意を払いましょう。
いくつかのディテールを追加し、輪郭と形をきれいに整えて、次のレベルへと引き上げます
08 背景の輝きとライトの追加
イメージは完成しましたが、デザインを魅力的にして目立たせるには、さらにひと工夫が必要です。まず、背景に星を描き、グロー効果とモーションブラー効果を使って表現します。次に、夜空を演出するためにコンクリートのテクスチャを[オーバーレイ]モードで配置します。
続けて、事前に作成しておいたハイライトを[スクリーン]モードでインポートし、クロムにハイライトの効果を加えます。説得力を持たせるために[指先ツール]で満足のいく仕上がりになるまで調整を続けましょう。最後に、ヘッドライトを点灯させるためのグロー効果を適用して完成です。
背景の作成
追加で効果を加えると、画面から浮き出てくるような印象を与えることができます
完成ショット
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