スケール感と雄大さ:『Of Sun and Steel』のメイキング
オーストラリアの Gerhard Mozsi 氏 が、その作品『Of Sun and Steel』のメイキングを紹介します
はじめに
私には「スケール感と雄大さを呼び起こす作品を作ってみたい」という願望がありました。以前から シド・ミード や ジョン・ハリス の作品に大変感銘を受けてきたので、この作品ではそうしたアーティストの作品と同じような荘厳さと量感を出そうと試みています。
01 作画
最初は、厳密な意味でのテーマはありませんでした。「SFでもファンタジーでも、ジャンルは何でもかまわない」と思っていました。単純に、奔放で雄大なものを描きたいと考えていただけです。この作品は「Of Sun and Steel (太陽と鋼)」と名づけられましたが、もともとは抽象的な形状やテクスチャ(どれも Photoshop で作成したもの)の連なりでした。何か面白いものになるまで形状やテクスチャをいじってから、それを生かした作品作りに取りかかりました。
そう、手早く大ざっぱに Wacom のタブレットで落書きをして、単に何かが出てくるのを待っていたのです。形式としてきちんと決まっていた要素は、水平線の設定だけでした。これはすべての風景画の出発点として、基本的な要素です。満足できる形状の連なりができたら、一見したところランダムに見える形状、線、テクスチャにかすかな物語の兆候が見えてくるまで、さらに強弱をつけていきました(図01)。
図01
02 カラーパレット
満足できる構図に落ち着いたら、今度はカラーパレットの検討に入ります。カラーパレットの設定は、作品に統一感を出し、光の性質と色を定めるうえで役立つという点で重要です。実のところ、これは構図全体の一部です。基本的な形状が定まったら、次はその形状の見栄えとレンダリング方法を決めることになるからです。
カラーパレットは、自分のイメージをはっきりと表現できるようにする視覚的要素の1つにすぎません。パレットを決めるために、まず時間帯を決め、それに応じて光源も決めました。ここでは午後の光を描くことにしました。そのため、暖かなパレットを使用し、低い太陽と濃い影という設定になりました(図02)。
図02
03 空
パレットを設定したら、通常は空から描き始めます。空は作品の雰囲気を決める要素です。残念ながら以前のファイルは既に統合していたので、レイヤーの中身は失われていました。このため逆戻りして、建物をマスクしなければなりませんでした。この問題を解決した後は、前景の要素を上書きする心配もなく、空を描くことができました(図03)。
図03
ドラマチックな空が必要だったので、コントラストを高くして(空想の世界のような雰囲気が出ます)、彩度も高くしました。リアリズムは、純粋な意味ではこのイラストの目的ではありません。このため、自分が表現したい一定レベルの緊張感が出るまで、素早く大胆な筆致で描きました。
一般的に空を描くときは、画像の上方を暗く、地平線に近い方を明るくするのがコツです。特に雲が関係する場所はこの原則がよく当てはまります。また、一般的に、地平線近くよりも空の上方にある雲の方が大きくなります。さらに斜線を取り入れると、さまざまな雲の帯を「結びつける」ことができます。暖色系と寒色系を補い合うように、または互い違いに空に配置すると、その色がより豊かになり、空の緊張感が高まります。
私は作業中に、キャンバスを左右または上下に反転させることがよくあります。そうすると何らかの矛盾がある場合はそれが強調され、作品を新鮮な視点で見ることができますし、重要な判断を下すときにも、より明確に把握することができます(図04)。
図04
04 ディテール
空が適切にまとまると、作品の雰囲気が明確になり、それが発想の刺激になりました。それから、反射や地平線の処理に取りかかり、ディテールを積み重ねていきました。さらに作品の仕上げに入り、最初にこのイメージを通じて呼び起こそうとしていた雄大さの表現に取り組みました(図05)。
図05
この作品は「現代的な(おそらくは未来風でさえある)都市にしよう」とすでに決めていましたし、頭の中ではイメージが形になりつつありました。そのため、パレットに一工夫を加え、さらに輪郭をはっきりさせ、ライティングも明確に設定しています。こうした要素がゆっくりとできあがってきた状態で、建物のディテールに取り組み始めました。
シーン内の細かい部分に肉付けし、物語性を高めていきました。遠くに道路を描き込むと遠近感を出すのに役立ちましたし、こうした道路はこれから描こうとしていた人物たちにとっても便利な通路になりました。
反射はとてもシンプルです。空のレイヤーを複製して自由変形ツールを適用し、上下を反転させてソフトライトモードに設定しました。最後に不透明度を落として、ビルや地面の上に配置しています。重要なのは、適切な場所に配置して、不透明度をどれだけ落とすかを把握しておくことです。試行錯誤を少し繰り返すと、満足できる結果になりました。
作品の内容をいろいろと試行錯誤した結果、基本的な構図とカラーパレットが定まりました。そこからイメージの統一感を出して、さらにディテールを描き込む作業を始めています。特に目立つ部分2 箇所にはハイライトを足して、もう少し「勢いのある」雰囲気を演出しました。
こうしたハイライトは反射をよりリアルに見せるうえでも役立ちましたし、作品内のさまざまな平面を明確に描き出すことにもつながりました。最も目立つのはビルそのものに描かれたハイライトで、ビルの反射性をさらに高く見せる働きをしています。さらにスケール感を出すため人間を追加し、視線を誘導してイメージ上にノイズを加えるための鳥も描き込みました。
05 仕上げ
作品の仕上げに、レベル補正とカラーバランスを使ってコントラストを高めています。カラーバランスは、暖色と寒色の色相のバランスをさらに調整することができ、作品のドラマ性を高めるためにとても役に立ちました。最後は、すべての作品で最高に困難なテクニックの出番です。つまり作品から手を引いて、これ以上さわるのを止めにすることです(図06)。
図06
※このチュートリアルは、書籍『Digital ART MASTERS Volume 2 日本語版』に収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。
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