ZBrush 使用、魔力をもつ 隣の少年「Z Magical」のメイキング

インドの デジタルスカルプター Vichar が、魔力をもつ 隣の少年「Z Magical」のメイキングを紹介します


Vichar
デジタルスカルプター|インド


はじめに

Vichar です。伝統的な彫刻を専門とする美術の修士号を持っています。20年以上の実務経験があり、Technicolor India のゲーム部門でディレクターを務めています。3dtotal から「現代の魔女/魔法使い」をテーマにした作品を依頼されたとき、ZBrush で魔法エフェクトを使ったスタイライズキャラクターを制作しようと決めました。

主な目標は「ZBrush で魔法のようなエフェクトの作り方を見つけること」でした。ありきたりの魔法のキャラクターをとは一味違うものを試したくなり、「魔力をもつ 隣の少年」を作れば、見る人を惹きつけれると思いました。

魔力をもつキャラクターは魅力的です。彼らは魔法の使い手、魔法の生み出す者です。通常、強大な力から単純な呪文まで、さまざまな種類の超能力を持っています。

「マジシャンが種明かしをしたとき、それは芸術になる – ベン・オクリ」

01 リファレンス

写実的であれ、スタイライズされたものであれ、3Dアート制作では、リファレンスの準備が最重要パートです。どのようなアートアセット制作も、リファレンスの構築から始まるため、最終品質は、最初のリファレンス構築に費やした努力に比例すると言えるでしょう。つまり、リファレンスを集めることがプロセスの第一歩なのです。

写真の分析に、少なくとも 制作時間の 1/3 を費やしました。私はたいていコラージュを作ります。そうすることで、被写体のことをよりよく知り、何をすべきかを明確にイメージできるようになります。この段階がどれほど重要か、いくら強調してもしきれません。

リファレンスのコラージュ

02 キャラクターのブロッキング

ZBrush で頭部から始めます。ボディは[IMM PrimitivesH]ブラシを、手は[IMM Bparts]ブラシを開始点にしました。それらを調整したら、低解像度のダイナメッシュにして、スカルプトし、洗練させていきます。スカルプトが一定の段階に達したら、ポリグループに[Zメッシャー]を実行してポリッシュし、さらに、ディテールを加えます。髪の毛と歯も[IMM]ブラシで作り、髪の毛と衣装にはサーフェスノイズを加えて、表面を崩しています。

IMMブラシ

ブロックアウトの段階では、[Move]ブラシ、[Clay Tubes]ブラシ、[Dam Standard]ブラシ、[Inflate]ブラシといった基本的なツールを使いました。それ以外にも、マスクとポリグループを使い、トポロジーをできるだけシンプルにして、形を操作・移動するのが簡単になるようにしています。

03 魔法エフェクトのスカルプト

• 魔法エフェクトのベースにはファイバーメッシュを使い、開始点として2つの異なるルックを作ります(1)(2)
•[Inflate]ブラシで太いものから細いものへグラデーションになるように、ベースの下部に厚みをつけ、煙の感じをスカルプトで模倣できるようにします(3)(4)
• 結果に満足したら、[ギズモ3D]>[ユニオンでリメッシュ(Remesh By Union)]で結合します
• 1つのソリッドメッシュにしたら、[ギズモ3D]>[スムース]でエフェクトの形を整えます(5)
• きれいな形になったら、[ZModeler]>[ナノメッシュを挿入]でナノメッシュを作成し、パーティクルエフェクトに見えるように調整しました(6)
• ナノメッシュの分布に満足したら、再び[ギズモ3D]の[スムース]を使い、パーティクルエフェクトをきれいにフェードさせます(7)
• 最後に、エフェクトをよりリアルに見せるため、アルファ付きの[Move Topological]ブラシ([Spray]ストローク)で、メインシェイプからパーティクルを広げます(8)

注:[ギズモ3D]の[スムース]モディファイアは、[ツール]>[変形]>[スムーズ]にある関数と同じ方法で、現在のオブジェクト(またはマスクされていない部分)に、バウンディングボックスの辺の向きに基づいて、スムージングを適用します。その効果は、円錐をドラッグして100%から0%まで、徐々に変化します。

ギズモ3Dの機能

04 ユニコーンのスカルプト&エフェクト

• ユニコーンが魔法エフェクトから出てくるような感覚を出すため、ZSphereモデルからユニコーンのポーズを手早く作ります(1)
• ZSphereモデルをアダプティブスキンに変換し、基本的な形とフォームをスカルプトします(2)(3)
• プロポーションを微調整し、解剖学的特徴を加えて、素早く[Zリメッシャー]を実行します(4)
• きれいな形になったら、[ZModeler]でナノメッシュのようなエフェクトの粒子を作ります
• ナノメッシュの分布に満足したら、[ギズモ3D]>[スムース]を使って、パーティクルエフェクトにきれいなフェードとブレンド感を出します(5)
• 最後に、ユニコーンに動きと煙を加えるため、ファイバーメッシュを使用します(6)
• ユニコーンエフェクトのルック&フィールに満足したら、[Sculptris Pro]モードと[Smooth]ブラシと[Alpha 23]を組み合わせて、特定の部分にフェード効果を作り、よりスモーキーな感じを出します(7)

注:スカルプトの効果やルック&フィールを理解するために、「BPRレンダー」のスカルプトを理解してください。

05 KeyShot のレンダリング設定

[発光マテリアル(Emissive)]を使い、色は金のグリッター画像を使います。また、魔法のような感じを出すため、[不透明度]には銀のグリッター画像を使います。

金と銀のグリッター(キラキラ輝く)画像を適用

少年のボディには[ペイント]マテリアルを使い、色を変えて[屈折率]を下げます。環境には、KeyShot のデフォルトのHDRIマップを使い、明るさを調整しました。さらに、金のグリッター画像を[カラー]に適用したエリアライトを追加し、スカルプトを照らしています。

HDRIとエリアライトでシーンをライティング

私が この制作を楽しんだように、あなたが この記事を楽しんでくれることを願っています。皆さんの魔法のスカルプト作品を見るのを楽しみにしています。読んでくれてありがとう!

完成イメージ

 


編集部からのヒント:人型キャラクター制作のリファレンスには『アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス』を、制作テクニックを習得するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 やおすすめします。

 


編集:3dtotal.jp