元 工業デザイナーによる印象的なCGメカデザイン

3DジェネラリストLee Souder氏が、中華風の戦闘用ドローンを題材にしたSFイメージの制作について、テクニック、デザインの考え方、プロセスを共有します。作品には、インダストリアル・デザイナー(工業デザイナー)ならではの着眼点、発想が取り入れられています


Lee Souder

Lee Souder は3Dジェネラリストとして、Treyarch(トレイアーク、アクティビジョンのゲームブランド)に勤務しています。Reebok(リーボック)やSamsonite(サムソナイト)のインダストリアル・デザイナーとして、そのキャリアを開始。しかし、プロダクトデザインだけでは満足できなくなり、ゲーム業界へと転身しました。
Lee Souder は3Dジェネラリストとして、Treyarch(トレイアーク、アクティビジョンのゲームブランド)に勤務しています。Reebok(リーボック)やSamsonite(サムソナイト)のインダストリアル・デザイナーとして、そのキャリアを開始。しかし、プロダクトデザインだけでは満足できなくなり、ゲーム業界へと転身しました。

このチュートリアルでは、どんなソフトでも応用可能な「デザインの考え方」に焦点を当てます。現実味のあるメカを1から作成する方法について、段階的にたどりましょう。

インスピレーション

デザインはあらゆる方向に進めることができるので、まずゴールを定めることが大事です。私は、1つの疑問「商用のセキュリティメカはどのような見た目になるだろうか?」を念頭に置きました。

最初のインスピレーションは、ABBRaytheon などの実在のロボット企業から得ました。ABB社のロボットアームが、車を製造したり、展示会で人々を楽しませている姿を見ると、それらが軍事利用されたときの見た目を考えずにはいられません。

ロボットの工業アームは、感覚のある生命体のような動きをします。現代のロボット技術におけるディテールは、軍用メカのインスピレーションにぴったりです。Raytheon社も防衛部門で驚異的なメカを製造しています。

地に足をつけ、主題に関連するインスピレーションを探しましょう。集中して、概念的なアイデアに囚われないようにします

3Dスケッチ

私は2Dよりも3Dの方が得意なので、3Dでのスケッチの方が楽です。今回はフォームの簡易的な検証に ZBrush を使いますが、あなたは、好みのソフトでユニークなコンセプトを作ってください。ZBrush では、まず[ShadowBox]で原型を作り、次に[Slice Curve]ブラシ、[Move]ブラシ、[Planar]ブラシ、[Insert Cylinder]ブラシ、[Insert Box]ブラシで、より大きなディテールをつけていきます。

満足できたらメッシュを Marmoset Toolbag に移し、ライトのある環境でフォームの見た目を簡単に把握します。程よいシルエットやプロポーションが得られたら、メッシュを間引いて、Maya に移りましょう。

コンセプトアートを作成するときは、あらゆる方法(フォトバッシュ、スケッチ、オーバーレイ画像など)を用いましょう。私は ZBrush でフォームを探りました

基本シェイプ

Maya で作業を開始します。まず、ZBrush のメッシュを Maya の基本シェイプ(主にボックスとシリンダ)でトレースします。これで、メカが完全なジオメトリのフォームになります。それらを分析して、方向性と追加要素を決定。私は ABB や Raytheon から得たリファレンスを見ながら、作業を進めました。

過去に学んだことの1つは「ディテールを詰め込み過ぎない」ことです。すべてのデザイン要素ではなく、いくつかにしぼって集中しましょう。その方が目に優しくなります。今回、ブレードの足が細くなるのは嫌でした。ロボットの見た目を威嚇的にしたかったので、半人半獣のサテュロスのようなクリーチャーを模倣して、ひづめのデザインを加えました。

クリーンでシンプルなジオメトリから始めて、力学的に動作するかを確認。思いどおりにいかないときは検証してください

エッジのクオリティ

現実味を加えるためにディテールを追加します。ディテールで説明することを心がけましょう。また、ロボットに情報を詰め込み過ぎないように、パーツによって、ディテールを少なめに抑えましょう。

今回のケースでは、頭部に最も多くディテールを加え、胸と胴体はシンプルな円と四角形にしました。

マシンにとって最も重要な要素は「エッジの品質」と「円形のフォーム」です。さまざまなエッジ処理(丸みのあるエッジ、面取りしたエッジ、シャープなエッジなど)を施しましょう。これは、優れた人物スケッチにさまざまな種類、品質の線があるのに似ています。真円、円柱、球ほどメカを彷彿させるものはありません。完全な円形は、人工的なメカのルックを感じさせます、また、見る者に遠近感を把握させるのにも役立ちます。

エッジ処理を施せば、人物スケッチのようにディテールが楽しいものとなります!

ディテールの模倣

デザインを進めながら、他の部分のディテールを模倣することも忘れないでください。これにより、モデルに一貫性が保たれ、時間も節約できます。アイデアや、他のパーツに行き詰まったときは、モデル上の複製できそうなパーツを探します。全く同じようにコピーしても、かみ砕いて修正を加えてフィットさせても良いでしょう。

私は、素早い決断ができるように、自分のルールを決めています。例えば、アーマープレートには、スポーツカーにあるような角張ったスタイリングを使います。回転関節には、ボルトリングや ABB のロボットの関節に似た要素を使うことになるでしょう。

他のフォームを複製して、時間を節約。モデルに一貫性を保ちましょう。見る者にとっても、このような調和が心地よく感じられます

アシンメトリ(左右非対称)

フォームをさらなる段階に進めるため、私はいつも、最後にアシンメトリの要素を追加します。それは、ワイヤ、布、部品、デカール、欠損パーツなどです。キャラクターの傷や肩に乗ったオウムが功を奏するように上手く調和します。

実際、完全にシンメトリ(左右対称)なマシンは少なく、通常、何らかの機能的な部品がついているでしょう。私好みの例をあげるなら、スポーツカーのボンネットにあるふくらみ(バルジ)です。アシンメトリは目立つので、注目させたい部分に作成してください。このメカのアシンメトリは、肩の部品、頭の後ろにある数本のワイヤです。

モデリングを終えたら、アシンメトリで完璧さを消します。ほとんどの軍用マシンは、左右対称ではありません

nCloth

手早く修正を行いたいときは、問題のある部分にnCloth を使います。これは時間を節約できる簡単な方法です。例えば、滑らかに接続できない2つのパーツがあれば、クロス(布)で覆います。まず、問題のある部分周辺のジオメトリをコピーして拡大、分割してメッシュの密度を上げると(クロスにしたときに)きれいなひだができます。拡大して分割したメッシュに nCloth アトリビュートを適用。元のメッシュにはコライダ アトリビュートを加えてください。約200フレームにキーを設定して、後は CPU に任せましょう。布で覆った関節でマテリアルが区分され、メカに面白みが加わります。

メカを部分的に布で覆っても問題ありません。クロス(布)によって、金属のロボットに現実味が加わります

シェーダボール

レンダリングする前に、HDRIライティングを設定しましょう。大げさな質感にならないように、4色、4つのマテリアルに絞りつつ、つや消しブラック、光沢のあるブラックなど、2、3アクセントを加えます。色が調和し過ぎないように、階層的に使ってください。

ドローン全体に暗いガンメタル、二次的なパーツにはシルバー/グレイ、ボルトにはクロム、ディテールには赤を主に使います。さらに重要なのは、選択したHDRIセットアップにシェーダボールを配置して、マテリアルのテストを行うことです。レンダリングが良好で見た目も良ければ、ドローンにマテリアルを適用しましょう。

最終レンダリング設定の前に、シェーダボールでHDRI環境におけるマテリアルを確認

ヒント

小さなベベルの適用で時間を節約するには、V-Ray の[Round edges]を使いましょう。メッシュを選択、[アトリビュート エディタ]下の[Attributes]>[VRay]>[Round Edges]オプションをオン。次に[Extra V-Ray Attributes]>[Round edges]に進み、ベベルのサイズを変更します。残念ながら、それぞれのメッシュで行う必要があります。

私は Maya で V-Ray とお気に入りのレンダリングツール HDR Sets を使用します。HDR Sets は、手早くHDRIのリグを作成できます(無料で3つの高画像度シーンを入手できます)。また、ツールには、対応するバックプレートがついてくるので、大幅な時間の節約につながります。

完成イメージ


翻訳:STUDIO LIZZ (Nao)
編集:3dtotal.jp