幻想的な 3Dの風景「雪に覆われた城」のメイキング

3Dジェネラリスト/アートディレクター Farid Ghanbari氏が、映画『アリス・イン・ワンダーランド』からヒントを得た作品、幻想的な 3Dの風景「雪に覆われた城」を紹介します(Maya、V-Ray使用)


Farid Ghanbari
3Dジェネラリスト/アートディレクター


はじめに

Farid Ghanbari です。中東のイランという美しい国で生まれ育ちました。そこでの良い思い出はたくさんありますが、数年前、アメリカのバージニア州リッチモンドへ移住しました。私は、ウェブサイト RenderBurger.com の設立者で、10年ほど 3Dジェネラリストとして仕事をしてきました。

建築を勉強しながら お金を稼がなければいけなかったので、大工、家具の塗装、石工、学生向けの建築模型 の制作など、さまざまなキャリアに挑戦しました! それなりのお金は稼げましたが、どれも満足のいくものではありませんでした。そこで、昔から興味があった建築の 3Dビジュアライゼーションに挑戦することにしました! このときに CGI と その業界のことを同時に知ったのです。

それでは、「雪に覆われた城」のメイキングを紹介しましょう。

01. リファレンス

この作品のアイデアが浮かんだのは、背景デザインが驚くほど魅力的な映画『アリス・イン・ワンダーランド』を見終わった直後でした。元々、ライティングに興味があったので、不思議な世界における寒暖のコントラストを描こうと思いました。

02. コンセプト

前述のとおり、映画を見終えたあと、コンセプトのアイデアが頭の中に浮かんできました。そこでまず簡単なスケッチを描いて、はじめのコンセプトを作っていきました。その後 Maya に移り、木 ・城の塔・主要な壁を作成しました。

スケッチ

アンビエントオクルージョン

最終的な雪のイメージ

明かりの灯った完成イメージ

03. アセットの作成

プロジェクトを進めるにあたって、多くの選択肢、利用可能な既製オブジェクトがあります(その多くはネット上で見つけることができます)! しかし、私はそれを「アート」とは呼びません。他の人が作った物を集めるよりも、自作の 3Dオブジェクトでシーンを埋め尽くすのが私の好みです。

この環境では、ボート、変わった木々、雪で覆われた低い壁、塔、そして、投石機をモデリングして、それらを必要な場所に複製しました。1つのベースモデルからさまざまなオブジェクトを作る場合は、シンメトリ、複製、スケール、回転などが便利です。塔は 1つだけモデリングして、それに微調整を加え、複数の塔を作成しました。

ボート

木、低い壁

投石機

1つの塔から複数の塔を作成

04. 変わった木

このプロジェクトで最も面白かったパートの1つが木でした。数本を除き、このシーンの木はすべて Maya の[ペイント エフェクト]で作成しました。これは非常に効果的であり、パラメータを調整するだけ、ジャングルだって作成できると思います。本当に面白いですよ!

Maya の[ペイント エフェクト]で木を作成

05. 雪

雪には 2種類の手法を用いています。地面の雪には V-Ray の2Dディスプレイスメントマップを、城と木に積もった雪には Maya の nParticle を使用しました。「地面の雪」にはあまり時間がかかりませんでした。きちんとしたマップがあれば、簡単に作れるでしょう。ただし、「城と木に積もった雪」には少し時間がかかるかもしれません! まず、エミッタのソースを管理し、どれくらいの量の雪が必要なのかを決めます。それは、あなたと 美的ルック次第です。

シミュレートはフレームごとに行われるため、大規模なシーンのすべてのオブジェクトを 1つのエミッタで制御するのは合理的ではありません。また、それぞれのオブジェクトに何百ものエミッタがあるのも良い考えとは言えません。そこで、時間を節約するために、シーン全体でいくつかのオブジェクトグループに数個のエミッタを定義しました。この方法を行うには、Maya で雪をシミュレートするプロセスを知っておく必要があるでしょう。まず[選択ツール]をダブルクリックして、[カメラベース選択]にチェックを入れます。

[カメラベース選択]をオン

次に 上面ビューで、オブジェクトの上面のフェースを選択します。選択したフェースを複製したら、それらにエミッタを割り当てます。[スピード]を 0、[レート]を適量に設定します。そして[重力]を 0に設定するのを忘れないように。あとはフレームを再生し、お好みのルックになったら停止します。最後のステップで、パーティクルをジオメトリに変換すると完成です!

雪のシミュレーション

06. マテリアル

正直に言うと、このプロジェクトではテクスチャにあまり時間をかけていません。私は 最も優秀で手軽な方法とも言える「手続き型マテリアル」や写真テクスチャを使用します。下図には、壁のマテリアルの最終セットアップが示されています。ベースの石のテクスチャは、フラクタルノードで作った白いセメントで覆われています。これにより、不均一で不完全に見せています 。

壁を構成するノード

07. ライティング

ライティングは最も面白いパートの 1つなので、いつも、時間をたっぷりかけて没頭します。完璧なライティングがなければ、アート作品は完成しません。私は大抵、シンプルなグレーマットとキーライトから始め、その後、小さなライトをピンポイントで加えて、プロジェクトの主役をハイライトします! 遠慮せずに多くのライトをシーンに加え、暖色や寒色など、さまざまなタイプのライトを試してみましょう。これは寒暖のトーンでバランスのとれたコントラストを作るのに重要です。ライトは、鑑賞者によく見てほしい場所や最初に見てほしい場所を伝え、アート作品のムードや雰囲気を決定します。そして、作品の裏側にあるストーリーを伝えることができます!

ライティングプロセス

シーンに配置したライト

冷たいライト

完成イメージ

 


編集部からのおすすめ:
正確なパース、色と光で作るムード.. 幻想的な絵を描くには、書籍 『Photoshopで描くSF&ファンタジー』を、絵における「感情、ムード、ストーリテリング」の技法を学ぶには、書籍『続 デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則』 をお勧めします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ (Atsu)
編集:3dtotal.jp