制作のスピードアップにつながるヒント&テクニック:「サイバーパンク都市」のスピードペインティング

06. ヴィジュアルを取り入れる

ここからが面白いところです。このステップは少し厄介なので、詳しく説明しましょう。何枚か写真を使って、街の灯りを抽出します。基本的に、手持ちの写真でも textures.com などで探してもかまいませんが、広い範囲の都市の風景を使用してください。また、その写真を そのまま都市として、アートワークに取り入れるわけではありません。必要なのは ライトと雰囲気だけです。このとき、1点透視のパースの正面写真を必ず使用してください。1点透視のパースを編集すれば、作品に合わせ、自由に変更できるでしょう。面倒ですが、作業自体はとてもシンプルです!

まず、写真を読み込み、[Command]+[T]キー/[Ctrl]+[T]キーを押して[自由変形]ツールを開くか、[編集]>[自由変形]を選択します。これで写真を自由に変形できますが、その前に[自由変形]モードの状態で写真を右クリック、[ゆがみ]を選択します。[ゆがみ]には、読み込んだ写真の各コーナーを操作できるという利点があります! 各コーナーを建物の角と平行に並べてパースを合わせたら、[Enter]キーを押して決定します。レイヤーの[描画モード]を[覆い焼きカラー]に変更して 結果を確認してください! とてもシンプルでしょう?

左から (1)写真を読み込む (2)[自由変形]の[ゆがみ]を選択 (3)各コーナーを建物(描いたパース)に合わせる (4)[覆い焼きカラー]モードに変更

暗い方がよく馴染むので、読み込んだ写真のコントラストを変更してみましょう。必要なのは、窓の明かりだけです! こういった賢い選択によって、コンセプトを素早く発展させるための時間が稼げます。ご覧のとおり、私は写真を取り入れ、このテクニックを使いました。2つめの図を見るとその違いが分かります。左が[通常]モードで、右が[覆い焼きカラー]モードです。

左:[通常]モード / 右:[覆い焼きカラー]モード

07. 新しいディテール

クールで雰囲気のあるライトをベース構造に加えたので、新しいディテールに取り掛かりましょう。1時間半のスピードペインティング(最終的なアートワークの描画には さらに30分程度)で形になるよう、時間を管理しながら、ステップ04 のテクニックで、ハンガー(乗り物の離着陸の施設)や建物にディテールを加えました。

下の図では、手前のハンガーは描き込まれ、ディテールが加わっています。しかし、遠くにある もう1つのハンガーには ほとんど時間を費やしていません。手前に描いたものをコピー&ペーストしただけです。また、ライトや船など全体的なディテールも追加しています。

手前のハンガーは描き込まれ、ディテールが加わっています

08. ナラティブ(鑑賞者が体験できるストーリー)に関して

何かを描き始めても、最終的にまったく別のものに変わることがよくあります。「スピードペインティング」では 時間管理がとても重要なので、変えない方がよいかもしれません。しかし、私たちはアーティストです。満足のいかないものを変えることは罪ではありません。このような考え方は、スピードペインティング以外にも役立ちます。問題に向き合うには 常に強い意志が必要です。多くの時間を費やした部分を切り捨てるのは難しい決断ですが、確実に自分自身の向上と、より大きな目的の達成につながります!

今回の目的は、深いストーリーづくりではなく、未来都市の雰囲気を表現したシンプルなスピードペインティングです。このイメージの場合、上手く溶け込んでいる要素はあるものの、宇宙往復船のように見えるシャトルは不要です! これにより、サイバーパンク都市というよりは、もっと広域のSF都市の雰囲気になっています。

そこで、私は この宇宙往復船を完全に削除して、どちらかというとヘリコプターに近い、新しい船をデザインしました。これだと、現在から40年後くらいにはありうるかもしれない(まだ 地球上に存在するであろう)サイバーパンク都市にぴったりです。下の図のように[なげなわツール]で形状を作成、その上をペイントして宇宙船を近未来のヘリコプターに変えました。それなりの価値があると感じられたなら、何かを犠牲にすることをためらわないでください。

宇宙往復船を完全に削除して、どちらかというとヘリコプターに近い、新しい船をデザインしました

09. 仕上げ

仕上げとして、煙などの大気、[オーバーレイ]モードのライト、黄色のかすみを追加すれば、悪天候の中のごみごみした都市という雰囲気が強くなります。何よりも重要なのは、ライトの色のオレンジ/黄色味を強くして、影の緑を強調することです。

こういった変更には[カラーバランス]などの調整がうってつけです。私はさらに、遠くに見える船などを描き、あちこちにワイヤーやブラシストロークを付け加えました。下の図でその違いが分かるでしょう。

遠くに見える船などを描き、あちこちにワイヤーやブラシストロークを付け加えました

10. 構図の分解/描画

最後に、このペイントで用いた効果的なテクニックをいくつか紹介したいと思います。まず、常にイメージを左右反転([水平方向に反転])させています。これは 1セッションで行うスピードペインティングなので、休まず最後まで連続して描かなければいけません! イメージを反転させると目が慣れにくくなるので、いろいろな問題点に気づけることでしょう。こうして、目と頭をリフレッシュさせるのです!

構図については、必ず[ナビゲーター]で確認してください。プラットフォームに立つ守衛を最終的に変更、より小さく見せています。また、コントラストを加えたため、構図が見映え良くなりました。下の図では、構図を分解して その重要性を示しています。それらは作品と鑑賞者の目をつなぐ役割を果たしています。このように実際に線を引くことはありませんが、構図の技法をいくつか知っておくと、マインドセットが明確になります。そして、知識と実践を積めば、常に無意識に行えるようになるでしょう。

青い円は 関心を引く部分。黄色い線は 中心(守衛などの要素)。緑の線は 三分割法(ヘリコプター)。赤い三角形は ライティングを示しています。あとは、この作品「サイバーパンク都市」に署名を入れて 完成です。

青い円は 関心を引く部分。黄色い線は 中心(守衛などの要素)。緑の線は 三分割法(ヘリコプター)。赤い三角形は ライティングを示しています

署名を入れて 完成です


編集部からのおすすめ: 正確なパース、色と光で作るムード.. SFや幻想的な絵を描くには、書籍 『Photoshopで描くSF&ファンタジー』を。フォトバッシュやブラシのテクニックで 素早く絵を仕上げる技法、スピードペインティングを学ぶには、書籍『スピードペインティングの極意』をお勧めします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ (Atsu)
編集:3dtotal.jp