著名キャラクターアーティストが語る Maya を学ぶことのメリット
キャラクターアーティスト Konstantin Gdalevich 氏 が、モデリングに Maya を選んだ理由とその利点を説明します
はじめに
すべてのソフトには長所と短所があり、Maya も例外ではありません。しかし、Maya には一般的なモデリングソフト以上のエコシステムがあります。大小さまざまなスタジオのパイプラインは Maya をベースに構築され、独自のプラグインを追加し、作業ルーチンを確立しています。
また、Maya は VFX(視覚効果)の世界で長年の実績があるため、豊富なドキュメント、チュートリアル、問題解決に関する投稿、プラグイン、スクリプトが存在します。これらは作業速度を大幅に向上させ、学習を簡単にしてくれることでしょう。例えば、私はあるクライアントのために、その強力なモデリング機能を使って以下のマップを作成しました。
モバイルゲーム用に Maya でモデリングしたマップ
01 バランスの取れた UI
一見すると、Maya の UI(ユーザインターフェイス)は少し威圧的に感じるかもしれません。ただ、パーツごとに分解してみると、実際には、それほど複雑でも難しいものでもありません。UI には主要な5つの設定があります:モデリング、リギング、アニメーション、FX(エフェクト)、レンダリングです。モデリングのサブメニューには、ポリゴンモデリングのための3つの主要タブ(メッシュ、メッシュ編集、メッシュツール)、そして、カーブとサーフェスがあります。もちろん、他にも多くのタブや機能へのアクセス方法がありますが、ここでは基本的な部分に焦点を当てましょう。
[CTRL]+[SHIFT]キーを押したまま、任意の機能をクリックすることで、カスタムシェルフを簡単に設定でき、自分専用のツールボックスをすぐに構築できます。冒頭で述べたように、Maya は 3D の各側面において多くの機能を持つ巨大なエコシステムですが、Autodesk は、それらすべてを論理的な構成で管理することに成功しています。
Messiahプロジェクトのスクリーンショット
02 モデリング ツールキット
モデリング ツールキットは、高速かつ効率的なモデリングに必要なものをすべて備えた、非常に強力なツールボックスです。さまざまな選択モード、オプション、コンストレイントのリストがあり、これは基本的にモデリングするときの主なものです(シンメトリ、オブジェクト選択、エッジ選択など)。
次に、メッシュオプションがあります。このセクションにはメッシュメニューの機能が一覧表示されているため、サブメニューを探し回る手間が省けます。メッシュに加えて、コンポーネント、ツールがありますが、これらもトップドロップダウンメニューから厳選した機能の一覧で、時間を節約するために用意されています。モデリング ツールキットは、本格的なモデリングセッションで非常に重要な役割を果たします。Maya で作業するのであれば、できるだけ早く使いこなせるようになるとよいでしょう。
モデリング ツールキット
03 MASH
MASH はもともと Maya 用のプラグインでしたが、Autodesk が買収し、現在は 標準搭載されています。これは、ノードベースのツールセットで、モーショングラフィックスやプロシージャル(手続き型)エフェクト全般に使用されます。サーフェスの周りにオブジェクトを散らしたり、面白いエフェクトを作ったり、クローンやデフォーマを活用したりしたい場合に、最適なツールです。
MASH の実装により、Cinema 4D でしか見られなかったような表現が Maya でも実現可能になりました。モデルを選択し、[MASHネットワークを作成]をクリックするだけで、この強力なエンジンで自由に操作を始めることができます。
MASH
04 デフォーマ―
冒頭で述べたように、Maya は単なるモデリングソフト以上のものであり、広範な機能を備えたエコシステムです。そのおかげで、モデラーであってもアニメーションなど他分野のツールを活用することができます。Maya には、アニメーションタブ内に優れたデフォーマのオプションが揃っており、モデリングツールと組み合わせて使用できます。メッシュを曲げたり、スカルプトしたり、ねじったり、といった多くの非破壊な操作を実行できます。
デフォーマは、低密度のメッシュだけでなく、高密度のメッシュを制御するのにも最適です。メッシュを選択し、デフォーマを適用。続けて、調整し、ヒストリを削除すれば、変形が反映されて作業を続けることができます。
ベンドデフォーマを適用する
ベンドデフォーマの「曲率」を変更する
05 UVツールキット
[UVツールキット]は、非常に多くの機能を備えた強力なツールボックスです。これを使えば、[UV エディタ]ウィンドウを離れることなく、すべての UV作業を完結させることができるため、作業スピードが大幅に向上します。個人的には、同じソフト内でモデリング、リトポロジー、UV作成が行える点が気に入っています。エクスポートやインポートを繰り返す必要がなく、いつでも 1ステップ戻って微調整ができるので便利です。
Fireflyプロジェクト スクリーンショット
UVエディタとツールキット
まとめ
どんなタスクにも対応できる完璧なツールは存在しません。そのため、作業によって適したツールは異なりますが、Maya はモデリングからリギング、アニメーション、レンダリングまで、パイプライン全体を処理できる機能を備えており、世界中の多くのスタジオで広く使用されている主要な3Dソフトの1つです。時間をとって Maya を学べば、将来的にきっと役立つでしょう。本記事では、その強力なモデリングツールについて簡単に紹介をしました。楽しんでいただけたなら幸いです!
キャラクターの服のモデリング
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