【インタビュー】コレクター向けフィギュアの制作:3Dアーティスト André SiK 氏
ブラジルの 3Dキャラクターア―ティスト André SiK 氏 が、コレクター向けフィギュアの制作アプローチなどについて語ります

3Dキャラクターモデラー André SiK 氏 にインタビューし、コレクター向けフィギュアの制作アプローチについて語ってもらいました。『ゲーム・オブ・スローンズ』のキャラクター「ナイトキング(夜の王)」の高精度モデルも含め、詳しく紹介します
はじめに
ブラジル出身のデジタルスカルプター André SiK 氏 は、コレクティブル(コレクター向けアイテム)モデルメーカーの Prime 1 Studio で素晴らしい作品を数多く手がけています。彼は、2016年にアニェンビ・モルンビ大学でアニメーションデザインを専攻後、この業界で活動しています。今回、その制作プロセスについて詳しく話を聞きました。
「私はサンパウロに住んでいて、今はゲーム制作に携わっています。ゲームとコレクティブルは、僕が最も愛する分野の1つです。実際、3Dスカルプティングの一番の魅力は、本当に何でもできることですね。これまで、ゲーム、コレクティブル、アニメーションの分野で働いてきましたが、毎日何か新しいことを学んでいます。正直なところ、勉強をやめることはないと思います」
1. ナイトキング(夜の王)
『ゲーム・オブ・スローンズ』のナイトキングのモデルはとても印象的です。「このプロジェクトでは ZBrush を使用しました。最近ではソフトのバージョンアップにより、他のプログラムを使う必要を感じなくなりました。コレクティブル制作においては、ZBrush が私の生命線です。このプロジェクトについては、最初から最後まで大きな変更を施しました。初期のコンセプトはまったく違っていて、たくさんの死体の上にナイトキングが立っているというものでした。しかし最終的に、現在の死体を蘇生させているシーンの方が良いと判断しました。制作期間については、Mike Miranda、Gerson Rother、Jeronimo Duarte、Kubisi などのアーティストチームとの共同作業で、全体で約5ヶ月要しました」
ナイトキング(ゲーム・オブ・スローンズ より)
「コレクティブルで最も重要な要素の1つがシルエットです」と André は続けます。「シルエットを見れば、早い段階でその彫像が成功するかどうかを判断できます。シルエットから始めて、段階的により小さく細かいフォームに磨きをかけていきます。もう1つ考慮すべき重要なことは、プリントされる縮尺(スケール)です。これは、スカルプトディテールのサイズにとって非常に重要です。例えば、縮尺が小さいとTシャツの生地の質感なども埋もれやすいので、最終的なプリントで表現されるように、より大きく強いディテールを作る必要があります」
大きな作品の場合はどうでしょうか?
「1/2スケールの彫像のように作品が大きい場合は、より小さいディテールまで表現できます。ただし、ゲーム制作とは異なり、コレクティブル作品ではプリント・塗装後でもよく見えるように、スカルプト段階でメリハリのある強めのディテールを作っておく必要があります(デジタル上では完璧に見えても、実際の立体物にする過程でディテールが潰れてしまうため)」
André が完成作品を手に取るのはしばらく後になりますが、ZBrush 上や宣伝写真よりも、実物の方がさらに美しくなると確信しています。「Prime 1 の塗装部門のアーティストたちは非常に優秀です。完成したプロジェクトを実際に見ると、何の変哲もない球体から生命が吹き込まれるまでの苦労と努力が蘇ってきますね」
ポイズン・アイビー(バットマン アーカム・シティより)
2. 強いディテールの表現
André は、コレクティブルにおける強いディテール表現の重要性を強調します。「20cmサイズのキャラクターにチェーンメイル(鎖かたびら)を作る場合、ZBrush でそのディテールを大きなメッシュで表現します。そうすることで、プリントされて手に取ったときに、ディテールがよく見えるようになります」
「今度は、この作品を 90cmスケールで考えてみましょう」と彼は続けます。「その場合、ZBrush で作る同じモデルでも、チェーンメイルのディテールをより小さく作る必要があります。なぜなら、あまりにも大きなディテールだと、プリント後に不自然に見え、リアルに感じられないからです。そのため、担当するプロジェクトのスケールをクライアントに必ず確認することが重要です。スケールを念頭に置けば、顔の肌の質感、生地、金属、木材など、それぞれのディテールをどの程度詳細に作るべきかがわかります。この場合もリファレンスを探すとよいでしょう。通常、アーティストが作品を投稿する際は、説明文に必ずプロジェクトのスケールを記載します」
チェーンメイル
3. 台座
印象的な台座は、コレクティブルスカルプトを引き立て、ストーリーを語る確実な方法です。「Prime 1 は台座の制作方法を進化させてきました」と André は説明します。「以前はもっとシンプルでしたが、時が経つにつれて、プロジェクトの台座はますますディテールが豊かになっています。友人の Giovanni Grecco と一緒に取り組んだ『ベルセルク』プロジェクトには多くのディテールがありました。台座の背面に3つの頭部、ガッツの仲間を殺そうとする聖職者たち、ワニ、その他のモンスターなどです」
「尊敬しているアーティストたちがいます。彼らはキャラクターから台座まで、制作の全工程において情熱を注いでおり、実は私の友人でもあります。Caio Fantini、Giovanni Grecco、Steferson Rocha といった面々です。また、Daniel Bel もとても尊敬しています。彼は本当に素晴らしいアーティストで、作品の隅々までディテールにこだわっており、プロジェクトに込める愛情が伝わってきます」
ガッツ(ベルセルクより)
4. キャリアを切り開く
André は常に3Dの世界に魅力を感じてきました。「私は頭部を作るのが本当に好きなんです。頭部が良くなければ、プロジェクト全体の美しさが損なわれてしまいます。頭部こそが、見る人の視線を作品に引きつける最も重要な要素だと考えています。もう1つの重要な要素は、キャラクターが立つ台座です。台座はストーリーを語るものなので、キャラクターが感じている感情やエネルギーとうまく合わせる必要があります。プロジェクトに注目を集めるためには、しっかりと作り込まれた台座が欠かせません。最後の要素は、ディテールの品質です。プロジェクトにディテールを追加する際に、適切な配慮と愛情を注ぐことで、間違いなく好奇心に満ちた視線を引きつけることができます」
頭部制作に重点を置く André は、ZBrush を開いて、まずモデルを高解像度にし、その後リトポロジーを行なって調整します。「ベイクしてテクスチャを作成し、その後 Unreal や Frostbite EA などのエンジンに読み込みます。ゲーム業界への参入を考えているなら、これらのソフトの知識は欠かせません。そして SNS(Artstation、LinkedIn など)の活用も大事です。一般的に、企業はこういった場所に求人を掲載することが多いです。私の場合、Facebook の投稿を見て応募しました。企業サイトにアクセスし、ポートフォリオを投稿して見てもらい、その後、会社から連絡をもらいました」
業界への参入を目指す人たちに向けて、彼からのアドバイスがあります。「ゲーム業界では、取り組むプロジェクトごとに異なるドキュメントがあり、作業の進め方や1日の終わりにどう報告するかが示されています。各プロジェクトにはリードアーティストがいて、疑問があるときはサポートしてくれます。しっかりとした体制が整っており、これは働く上でとても心強いでしょう」
アトレウス(ゴッド・オブ・ウォーより)
ブレイド
5. 今後の展望
André には多くの刺激的なプロジェクトが控えています。「3Dプリント用コレクティブルでは、ある会社向けにカスタムメイドで制作した「ブルース・ウェイン」プロジェクトのレンダリングに取り組み、個人プロジェクトとしてバットマンも制作しています(Instagram で画像を投稿しています。今のところ時間があまり取れないのですが、時間ができ次第完成させたいと思っています)。リアルタイムでの個人プロジェクトとしては、民族の女性の頭部の研究があります。これは継続的に取り組んでいるテーマであり、モデリング、テクスチャリング、ヘアカード、そして仕事を通じて学んでいる新しいトレンドの適用をさらに向上させるためです」
「ゲーム制作では、Roarty Digital でフルタイムのリモートワークをしています。彼らと働くのはとても素晴らしい経験です。すでに複数のプロジェクトに取り組んでいます。守秘義務により詳しくは言えませんが、素晴らしい作品が控えています。お楽しみに!」
ブルース・ウェイン
Nath(頭部の習作」
XGen (Maya)で作成した へア・ストランド(髪の束)。ベイク処理して ヘア・カード(髪のカード) に変換される前/small>
編集部からのおすすめ: ハイクオリティな写真&図で解説。"人" を描く/造るための1冊。書籍『アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス』

























