【インタビュー】新しいアイデアを探し続ける:キャラクターアーティスト Nabil Chequeiq 氏
キャラクターアーティスト Nabil Chequeiq 氏 が、自身の経験について語ります

「忙しくしていると、プロの仕事や日常生活に埋もれてしまいがちですが、私はアーティストです。新しいことを学び、自分自身に挑戦するための新しいアイデアを探し続けることを常に心に留めています」
Q. 自己紹介をお願いします
こんにちは、モロッコ出身の 3Dキャラクターアーティスト、Nabil Chequeiq です。2020年に REEL FX のチームの一員として3D映画『弱虫スクービーの大冒険』の制作に参加し、2024年にはフリーランスとして『アバター: 伝説の少年アン』の制作に参加しました。現在は、Thought Pennies でリード キャラクターアーティストとして勤務しています。
「Lina 2020」
Q. 制作ワークフローをおしえてください。「Lina 2020」のアイデアはどこから生まれましたか
私のワークフローはとてもシンプルで、特別なテクニックは使っていません。まず、ZBrush のダイナメッシュヘッドで、顔のプロポーションをブロックアウトすることから始めます。最初のうちはできるだけシンプルに保ち、プロセスを進めながらイテレーション(反復)を繰り返して、ディテールを追加します。その後、Maya に移して リトポロジーを行い、UVを作成します。「Lina 2020」の元々のアイデアは「解剖学の研究として リアルな女性の頭部を作ること」でした。そして、制作を進めていくうちに、キャラクターとして完成させることにしました。
「Lina 2020」
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
本作では、ディテールや肌の色、レンダリングによって、かっこよくリアルに見せることが課題でした。特に難しかったのは「どのように見栄えを良くするか」という点です。リアルな作品は失敗しやすく、うまく仕上げるのにいつも苦労します。このプロジェクトでは、顔の構造、毛穴のディテール、XGen について、多くの貴重な学びがありました。
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
通常、高解像度メッシュやスケッチには、ZBrush を使っています。以前はトポロジーの作成に 3DCoat を使っていましたが、今ではほとんどのリトポロジーやレンダリングに Maya を使っています。最近のプロジェクトでは、布のテクスチャに Substance 3D Painter、肌や目に Mari、より複雑な布が必要な場合には Marvelous Designer を使っています。さまざまなソフトを知ることは、作品にリアルさと生命を吹き込むのに大いに役立つでしょう。
「Reyna valorant Fanart」
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください
アイデアは文書やノートに書き留めています。また、Pinterest を使って、コンセプトアートや新しいイメージのアイデアも保存しています。忙しくしていると、プロの仕事や日常生活に埋もれてしまいがちですが、私はアーティストです。新しいことを学び、自分自身に挑戦するための新しいアイデアを探し続けることを常に心に留めています。インスピレーションは至るところにあります。3dtotal のギャラリーや ArtStation、その他のアーティストの作品などは、私が個人制作に取り組むための大きな刺激となっています。
「Vaiking」
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?
ハッシュタグはあまり使いませんが、Facebookグループの Ten Thousand Hours、Arnold renderer3d、3dtotal など)はいつもチェックしています。Facebook で見逃した場合に備えて、Instagram でも同じアカウントをフォローし、新しい作品や新人アーティストの最新情報を得るようにしています。
ゲーム『The Dark Occcult』のキャラクター
Q. 芸術的な目標はありますか?
自分自身を常に向上させ、新しいテクニックやツールを学んで、自分の作品を特別なものにしていきたいと考えています。一緒に仕事をしたい企業や、実現させたいと思っているプロジェクトなど、まだ達成できていない目標もいくつかあります。
「Mermaid」
「Lady Mequa」
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
伝統的なものからデジタルなものまで、多くのお気に入りのアーティストがいます。尊敬するアーティストがいれば、常に良い仕事を続けて追いつこうと努力するものです。例えば、2Dアーティストでは、Hong SoonSang、Serge Birault、Lois van Baarle、Richard Lyons、David Ardinaryas Lojaya、Sergi Brosa、Ramón Nuñez、Nesskain hks、Igor Sid、Wangjie Li、そして、Nicola Saviori です。
3Dアーティストでは、Dylan Ekren、Frank Tzeng、Adam Skutt、Alessandro Baldasseroni、Victor Hugo Queiroz、Gabriel Belluco、Mathieu Aerni、そして Rafael Grassetti です。彼らの作品は本当に素晴らしく、私にとって業界最高基準です。もし彼らの3D技術を習得できるなら、これほど嬉しいことはありません。
Q. 近年の作品についてお聞かせください
私のポートフォリオにはハードサーフェスのキャラクターが足りないと感じるので、そういった作品を作りたいですね。以下の作品は、映画『ロード・オブ・ザ・リング』を見直したときに、クリーチャーを作りたくなり、ハードサーフェスの鎧を着させて完成させたものです。
「ORC general」
編集部からのヒント:人型キャラクター制作のリファレンスには『アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス』を、制作テクニックを習得するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 やおすすめします。