小説をもとに ナラティブに 表現:『Rats on the Loose』のメイキング
ニュージーランドの Gaboleps 氏 が、ネズミだらけの SFショートフィクションをもとに、レトロスタイルのイラストを制作します

▼ フラッシュフィクション(超短編小説)
ネズミたちが飼育されている その部屋は、まばゆい光に包まれていた。天井の細長いライトが室内を照らし、壁に埋め込まれた ガラスのケージ一つひとつから、保温ランプの温かい光が漏れ出している。ケージは壁一面に整然と並び、横に7列、縦に8段、合わせて 56個。もっとも、この宇宙ステーションでは「上下」というものに、さほど意味はないのだが。
反対側の壁にある丸窓の向こうに、広大な青い星の海が、神々しいほどに輝いている。その海面には、白いものがゆらゆらと浮かんでいるように見える ―― いや、違う。それはケージから逃げ出したネズミたちだ。扉という扉がすべて開き、白い体に長い尾を持つネズミたちが、重力から解き放たれ、まるで水中を泳ぐかのように空中を漂っている。壁を蹴って飛び跳ね、チカチカと点滅する計器からぶら下がるケーブルをかじり……やりたい放題だ。
白衣の裾をマントのように はためかせながら、科学者は彼らを捕まえようと必死で追いかけている。片腕を大きく振りながら、もう片方の腕で「ふわふわした白い塊」をギュッと胸に抱きしめていた。
▼ このテキストで注目すべき重要な要素は何ですか?
主な要素は「逃げ出したネズミ」「宇宙ステーション (人間が建造)」「宇宙環境」の3つです。目標は「これらの場面をそのまま描写するのではなく、概念(コンセプト)を表現すること」です。読者が自分の想像力で楽しめるように、具体的な場面はあまり描かずに、次のような置き換えをしました:
・ネズミ → 金魚鉢をかぶったネズミ(宇宙服のメタファー)
・人間 → コーヒーマグ(人物を登場させずに、存在を示す)
・宇宙 → 惑星
また、テキストに「青」という色が印象的に登場するため、シーン全体に青をたっぷり使うことにしました。
▼ 完成作品で何を伝えたいのですか?
先に述べたように、主な目標は、場面の説明ではなく、テキストを補完する概念的なイメージを作ることです。レトロなSFポスター風にしつつ、本の挿絵用のイラストとしての雰囲気も大切にしたいため、A4全体を塗りつぶすのではなく、ビネット(中心に向かって周囲が暗くなる額縁のような構図)で仕上げることにしました。
01 ラフスケッチ
まず、テキストを読んで、思い浮かんだものを大まかにスケッチしていきます。たとえ意味をなさなくてもかまわないので、とにかく手を動かして描きましょう。そして、その中から最も気に入ったものを選びます。
選んだスケッチ
02 スケッチを進める
このステップでは、ディテールにこだわらず、構図内のすべての要素を明確にすることに集中します。私は大きな要素同士をつなげるのが好きで、たとえば「マグカップからこぼれる液体を主役のネズミの足に重ねる」といった具合です。右上のネズミのように小さい要素は、あえて独立させることもあります。
色は、まだグレースケールのままにしておきます
03 コントラストを組み込む
アイデアが具体的に固まってきたら、次は コントラストを検討します。何パターンか作って見比べ、どの方向性で進めるかを決めましょう。このステップでは、あまり描き込まず、色も加えません。
右のバージョンを選びました
04 色を加える
いよいよ、色に取り掛かります。テキストに登場した色 と イラストをつなげることが重要なので、「青」を選びました。読者は、自分が頭の中で想像したもの と 実際のイラスト が思いがけず一致する瞬間に喜びを感じます。私たちは それぞれ独自のイメージを持っているので、そういった小さな共通点を下絵にいくつか気になる点があったので、インターネットで ネズミ や マグカップ のリファレンスを探して修正しました。
ご覧のとおり、私の進め方は行き当たりばったりで、レイヤーは2-3枚しか使いません。少ないレイヤーで進めると、特定のレイヤーを探す手間が省け、PCの動作も軽くなります。もし、どうしても修正が必要になったら、本物のキャンバスのように上から直接塗ってしまいます。大切にするのは良いアイデアです。また、私は補色関係にある色の組み合わせが好きなので、青を選ぶときは、オレンジ系も合わせて使います。もちろん、作品を通して何を表現したいかによって、色の選択も変わります。
ペイントプロセスの一部
05 テクスチャを加える
インターネットで探す方が手早く簡単ですが、アナログの楽しさも味わいたかったので、今回は 油絵の具を使ってテクスチャを描きました。素敵な質感の壁の写真を撮って、それをベースにするのも良いアイデアです。でき上がったテクスチャに薄い青みがかった色をつけ、描画モードを「乗算」に設定してレイヤーに重ねます。その後、消しゴムツールで一部を消したり、コピースタンプツールで整えたりして調整します。
この絵を描くために、油絵具と水を使いました
06 少ないレイヤーで進める
下絵にいくつか気になる点があったので、インターネットで ネズミ や マグカップ のリファレンスを探して修正しました。ご覧のとおり、私の進め方は行き当たりばったりで、レイヤーは2〜3枚しか使いません。少ないレイヤーで進めると、特定のレイヤーを探す手間が省け、PCの動作も軽くなります。もし、どうしても修正が必要になったら、本物のキャンバスのように上から直接塗ってしまいます。
ネズミとマグカップのイメージを検索する
私のPSDファイルの整理方法
07 ブラシ
ディテールの描き込みを続けながら、署名が構図の一部として自然に収まる場所を探します。それほど重要なステップではありませんが、楽しい作業です。ブラシは少ない数に絞り、シンプルに保ちます。描き込む前に使うブラシを決めておくと、作業がよりスムーズになるでしょう。
ベースブラシ、ソフトブラシ、ブレンド、指先ツール
08 微調整
この段階では 大きな変更を行わず、細かい調整を重ねながら 描き込んでいきます。最初のカラースケッチから現在までの変化を見ると、スケッチ段階の構図やシルエットがほぼそのまま維持されているのがわかります。
スケッチから仕上げまで
ほぼ完成
09 完成イメージ
最後にテクスチャをもう一度重ねますが、今回は描画モードを「ソフトライト」に設定し、不透明度をかなり低くして、わずかな質感だけ残します。仕上げにシャープ効果をかけてディテールを引き締めたら完成です。このメイキングが参考になれば嬉しいです。
完成イメージ「Rats on the loose(逃げ出したネズミたち)」
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