お絵かき が アルバムのジャケットに:『Save our souls』のメイキング

フランスの Rolando Cyril 氏 が『Save our souls』のメイキングを紹介します


Rolando Cyril
デジタルアーティスト|フランス

はじめに

おかしなもので、取るに足らないようなスケッチでも、よく注意して見ればそこからたくさんの意味を感じ取れることがあります。『Save our Souls (魂を救え)』の元になったのは、インターネットの「Oekaki board (お絵かき掲示板)」の友人たちに送った誕生日プレゼントのお絵かきでした(図01)。

それから2カ月後、カナダの The Dooks というヘビメタバンドから「彼らの曲「Archaic」をイラストにしてもらいたい」という依頼を受けました。そこで前に描いたお絵かきを元にして、ただし今回は Photoshop で作品を作ることにしました。

はじめは、お絵かき掲示板 で描いたこの不出来なスケッチに、大きな可能性が潜んでいるように思えたのです。それに、このキャラクター(名前は、私のハンドルネームと同じ「Sixio」)を深い意味をもった本格的な作品に描いてみたいと思いました。この作品は、Sixio のある瞬間の物語を描かなければなりません。つまり、頭に矢のついた少年が混乱した危険な世界(であると同時にとても魅力的な世界)をさまよう場面です。たとえて言うなら、ロウソクの火を その熱さにもかかわらず手に持とうとするような感じです...。

図01

01 ラフスケッチ

すべてを頭の中で描き、そのアイデアを忘れないうちにキャンバスに描かなければなりませんでした。スケッチのサイズを 400×500 ピクセルから 1,200×1,500 ピクセルに拡大して、もっといろいろなことができるようにしました。キャンバスが大きければ大きいほど、ディテールをうまく処理できるようになります。元のスケッチでは青と赤のコントラストがあまり良い結果ではなかったので、よいカラースキームを選ぶのが最初の課題でした。

前に描いた空は大きなサイズのブラシを使って消し(図02)、明るい「日の出」を描こうと思いました。図03 では再び画像のサイズを変え、4,500×6,000 ピクセルに広げています。オレンジ色の海、傘とそこに縄でつながれたボトル数本、Sixio のポーズ、空の大まかな構造といったメインの構図ができあがったからです。

図02

図03

02 雲を美しく描く

「赤い雲を描くのは白い雲よりも難しい」と思うかもしれませんが、そうとも限りません。赤のグラデーションをさまざまに調整し、光を示すオレンジ色を少し描き加えるのは実に楽しい作業です。ちょうどバラの花びらが開いてその美しい芯の部分が見えてくるようです。こうしたわけで、雲の構造が発展していった様子をお見せしましょう(図04)。

上の拡大図は、抽象的な雲を形成し始めたところです。抽象的に描くことの長所は、社会的通念(形、色、構図)に毒されることなく想像力を働かせられることにあります。右上の拡大図は青と赤のコントラストをさまざまに調整しているところで、さらに黄色の輪郭を足して区切りを強調しました。まるで太陽を抱きしめているかのような「生きている」雲を描きたかったのです。

図04

03 傘に乗ってさまよう

今度はキャラクターを細部まで描きます。Sixio には 頭の矢タキシード という2つの特徴がありますが、この作品では傘の上に乗せてみました。今にも壊れそうで、それでいて素敵なボートというアイデアが気に入っていたからです(図05)。

図05

水の処理は、こんな風に荒れた海がどう見えるのか分からなかったので、最も技術的に難しい部分でした。そのため、よき友人である Google イメージ検索 に助けを求めると、幸いなことにいくつかの例を見せてくれました。キャラクターに関しては、自分の解剖学的な知識が乏しく、手間をかけても無駄になるのではと不安になったため、ポーズを変えずにディテールだけを処理することにしました(図06)。

図06

04 ライティング

注意すべき重要な点は、光の影響でした。この点については、「逆光」(図07) にするか、それとも光源を2つ(太陽を Sixio のずっと後ろに置く)にするのか、どちらか選ばなければなりませんでした。

図07

私が選んだのは前者です。画像はやや暗くなりますが、オレンジと黒のコントラストを高めるには逆光が一番だと考えました。この効果は、傘、キャラクター、波、雲の輪郭に黄色を微妙に描き加えることでさらに高まりました。図08 をご覧ください。

図08

最終段階

25時間後「作品が完成した」と判断しました(図09)。それから、制作中に考えていたことを説明する文章を書きました。次の文章は Sixio の絵の締めくくりとなる文章で、作品を見る人の解釈に委ねるためのものです。

なぜなら、これは終わりではなく、実は始まりだからです。The Dooks はこのイラストを気に入っただけでなく、アルバムのジャケットにまで使ってくれました。この作品についてはとても誇らしく感じています。私の作ったキャラクター(Sixio)のよいお披露目になりますし、ついには この作品が 私の人生のメタファー(暗喩)になったからです。

たくさんのものが 海に浮かんでいる
でもそれに気づいている人は いるだろうか?
たくさんのものが 黙って助けを求めている
そのメッセージを受け取る人は いるだろうか?
僕はボトルをいくつか見つけた
でも困ったことがある
今度は誰が僕を助けてくれるのだろう?
S.O.S.

これが私が望んでいた、意味のある作品です。作品を見た人からたくさんのコメントをもらいましたが、Sixio と困難の多い人生に共通点を感じているのは私だけではないようです。つまるところ、誰が私たちの魂を救ってくれるというのでしょう?

 

完成イメージ

※このチュートリアルは、書籍『Digital ART MASTERS Volume 2 日本語版』に収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。

 


編集部からのおすすめ: 「マジック:ザ・ギャザリング」や「ダンジョンズ&ドラゴンズ」などのイラストレーター グレッグ・ルトコフスキ をはじめ、著名アーティストたちが、アートの必須知識、「構図」や「ナラティブ」の理論と実践を徹底解剖します! 書籍『構図とナラティブ:絵にストーリーを語らせる秘訣』

 


編集:3dtotal.jp