さまよう島の伝説:『Myth of the Floating Islands』のメイキング

バーレーンの Khalid Abdulla Al-Muharraqi 氏 が、その作品『Myth of the Floating Islands』のメイキングを紹介します


Khalid Abdulla Al-Muharraqi
アーティスト|バーレーン

01 コンセプト

私は シンドバッド の物語が大好きでした。特に、クジラの背中に乗った島の話には夢中になって胸を躍らせたものです。挑戦すべき、実にすばらしいコンセプトに思えました。私は日本で作られた シンドバッド の古いアニメーションに強く印象づけられ、同じく この物語を元にして、他の人の想像力を刺激するような作品を作りたい と考えたのです。その結果がこの「Myth of the Floating Islands (さまよう島の伝説)」です。

02 ワークフロー

Modo > ZBrush > Lightwave > Photoshop。スムースなワークフローは、作品作りにはとても重要です。アートは特定のプラットフォーム、ソフトウェア、システムに縛られるべきものではないと思います。以前の私は、仕上がりを最高にするために、手に入れることのできるあらゆるメディアを使っていました。現在出回っているツールでは、データをシームレスにやりとりできますが、それでも厄介な問題は必ず発生します。そうしたトラブルを最小限に抑えるため、本格的な作業に入る前に綿密に計画を立てておく必要があります。

コンピュータの電源を入れる前の段階で、私は、自分が作りたいと思うものをスケッチに描きます。私なりの言い方をさせてもらえれば、「地図」を描くのです。必要な要素(そして全体のポーズ)が頭の中でまとまったら、次は調査に熱中し、作品に必要なものに関する本 や Webサイト、芸術面でのヒントを探し回ります。テーマをより深く現実に結びつけることができると、作品がさらに説得力ある仕上がりになります(図01 - 02)。

図01

図02

03 モデリング

モデリングは Modo で開始し、Lightwave と行ったり来たりして作業を進めました(図03)。「行ったり来たり」というワークフローが重要でした。この2つのアプリケーションにはそれぞれに長所があり、両方が私の思う形にモデルを近づけるうえで役立ったからです。モデルが滑らかな仕上がりになり、あまり複雑に込み入っていないことを確認してから、Modo で UV のデザインに入りました。

図03

イメージが滑らかに落ち着き、皮膚の感じを表現するのに適切な方法を見つけるのは大切なことです。この作品ではUVをさまざまな形で使いました。特に ZBrush のスカルプトツールの段階でディスプレイスメントとディテールを作ろうと目論んでいたのが大きな理由です。そのため、この段階ではとても慎重に処理を進めました。繰り返しになりますが、後で「無理矢理」詰め込む羽目にならないように、A から Z まではっきりとした手順を決めておきましょう。この点はいくら強調しても強調し足りないくらいです(図04)。

図04

04 スカルプト

スカルプトの面白さにのめり込んでいたので、これは実に楽しめる作業でした。スカルプトではとてもリラックスできますし、作品をさらに上のレベルの表現に高めている気分がします。これは技術的なアプローチよりも芸術的な手腕の方がものを言う場面で、純粋に直感的な作業です。オリジナルのモデルを完成させたときの ポリゴン数は 約2,000で、レンダリング終了後は 約230万ポリゴンになりました。

私は Wacom Cintiq の液晶タブレットを使っていますが、ジオメトリが出来上がっていく手応えが感じられるので、オブジェクトがより身近になりました。ZBrush で作業するときは、まず全体的な外見から取りかかり、それから細部へと進みます。これは、要素のサイズの修正や筋肉の塊を追加してから、皮膚の感じやその凹凸、うねり、擦り傷といった感じの処理などをできるようにするためです(図05)。

図05

05 テクスチャリング

続いてテクスチャリングの準備に取りかかりました。全体のカラースキームから開始し、続いてすべてのディテールへと作業を進めていきます。このモデルでは、カラー処理のために ZBrushModo でテクスチャを5層使っています(カラー+バンプ+スペキュラ+反射+ディフューズエリア)。

また、LightwaveVPR(Fprime)で処理する別のテクスチャリング方法(手続き型テクスチャリングやグラディエントテクスチャリング)も使用しました。これは時間のかかる処理ですが、とても重要です。さらにテクスチャを描きながら、石や木といった他のディテールも加えています。たとえば木や岩は独自の UVテクスチャで作成していますし、Modo のメッシュスプレーツールを使ってクジラのサーフェスにオブジェクトを吹き付けています。

これにより作業のスピードが上がりましたし、ランダムな仕上がりになるので、見た目の自然な感じを高めるうえでも役に立ちました。全体としては、このシーンのイメージはモデル上の 62 のエリアに適用され、合計サイズは 630 MB を越えました(図06)。

図06

06 シーンの設定とライティング

私の考えでは、この2つは分けることができません。この処理になると、自分が昔やっていたような写真撮影、つまり撮影者が被写体と光とカメラを考慮して撮影していた時代を思い出します。まずカメラを設定してから被写体のポーズを決めますが、このキャラクターにぴったりな感じを出すために、領域内にボーンを数本作る必要がありました。

次に海水を満たして船を配置し、カメラの種類とレンズを調整してからライティングに移ります。イメージを最終的なレンダリングに変身させるうえでライティングは最も重要な要素です。ライトは 3本使いました。1本はメインのライトで、残り2本はシーンの劇的な雰囲気を盛り上げるために使っています(図07-08)。

図07

図08

07 レンダリングとポストプロダクション

レンダリングは 3D処理の最後の段階ですので、手直しするならこれが最後のチャンス。問題がなければ「これで出力」です! この作品ではありとあらゆるディテールに手を加えました。たとえばアンチエイリアスの度合い、最終的なファイルサイズ、レンダリング時間の最適化などです。さらには、ポストプロダクションの前に完成イメージをさまざまなコンポーネントに分割して、それぞれを異なるパスでレンダリングすることもしています。最後に、カラーコレクション、必要な部分のレタッチ、レイヤーの配置といったポストプロダクションの段階を経て、作品が完成しました(図09)。

図09

08 おわりに

作業の終わりには、仕上がりにとても満足できました。「シンドバッドの物語を自分なりに描く」という子供のころからの夢が叶った気がしています。また、さまざまな面で独自の機能を持ちながら、他の製品と簡単に連携できるプラットフォームを作り上げたソフトウェア開発者の方々にも感謝します。おかげで私のようなアーティストも、自分のビジョンの実現を手助けするツールとしてこうしたソフトウェア製品を活用できるのです。

 

完成図 © Khalid Abdulla Al-Muharraqi, Muharraqi-Studios (www.muharraqi-studios.com)

 

※このチュートリアルは、書籍『Digital ART MASTERS Volume 2 日本語版』に収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。

 


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編集:3dtotal.jp