【インタビュー】作品を通じてストーリーを伝える:シニア CGジェネラリスト Darko Mitev 氏

「普通の子供たちがスーパーヒーローの力を得たら」というアイデアから生まれた作品、その制作プロセスを Darko Mitev氏 が 紹介します。


Darko Mitev
シニア CGジェネラリスト | アイルランド


Q. 自己紹介をお願いします

CGジェネラリストの Darko Mitev です。マケドニアで VFXとコマーシャルの仕事でキャリアをスタートしました。その後、TVアニメシリーズや長編アニメ映画の業界に移り、現在は アイルランドのダブリンに住んでいます。Brown Bag Films で シニア キャラクターアーティストとして活動後、キャラクター・クリーチャー・環境・ハードサーフェスモデルを専門とし、テクスチャ、レンダリング、コンポジットまで、高品質な3Dアセット制作を一貫して担当しています。

Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?

キャラクター作品「Chloe (クロエ)」は、シリーズの一部です。「もし学校生活をおくる普通の子供たちが突然、超能力を得たらどうなるだろう?」という疑問から始まりました。「彼らはそれにどう対処するのか?」「怖がるのか?」「興奮するのか?」それは彼らの外見や性格に「どのように現れるのか?」ということを考えたのです。

Chloe は並外れた頭脳を持つ、地球上で最も賢い人間です。彼女は、ガジェットやテクノロジーをこよなく愛し、マーベルコミックの『アイアンハート』にインスパイアされ、独自のスーツを自ら製作することにしました。そのスーツは悪と戦うためではなく、彼女だけのまったく別の目的に使うためです。

常に人類の未来を危惧していた彼女は、火星探査プロジェクトへの参加を決意し、やがて自らこの赤い惑星に移り住むことを選びました。彼女の使命は2つ。1つは、火星で生命が生存できる可能性を探ること。もう1つは、いずれ地球が人類を支えきれなくなった時のために、テクノロジーとインフラを駆使して「第二の故郷」となる基盤を準備することでした。

彼女のスーツはナノテクノロジーを応用したもので、火星の苛酷な環境から身を守るため、必要に応じて瞬時に彼女の体を覆います。こうした技術を通じて、彼女は「真のヒーロー」とは眼前の危機を救うことだけでなく、自らの英知と一つひとつの発明をもって人類そのものの未来を救うことだと悟ったのでした。

Chloe (クロエ)

Silke (シルケ)

Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?

このシリーズは、3Dデザインスキル、とりわけ、総合的な3Dキャラクター制作の技術を高めるために制作しました。中でも Chloe は特に難易度の高いキャラクターでした。というのも、彼女には誇張的な超能力が一切なく、ただ「非常に賢い」という特徴だけが武器だからです。その内面や物語を表現する手段は、必然的に身にまとうスーツが中心となりました。

さまざまなタイプのスーツや、異なる生地とアーマーパーツの組み合わせを試行錯誤しながら何度も作り込みました。彼女の役割は他のキャラクターとは全く異なるため、「アイアンハート」の単なる模倣ではなく、独自のビジュアルを確立する必要があったのです。全体のプロセスには1ヶ月半ほどかかりましたが、大きな挑戦ではあったものの、最終的にはそれだけの価値がありました。今では彼女はこのシリーズの中で、私にとって最も愛着のあるキャラクターとなっています。

Max (マックス)

Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?

常に新しいソフトを探していて、Substance 3D Designer をワークフローに取り入れました。他にも、プロップとテクスチャの Megascans ライブラリ、Phoenix FD を使ったエフェクト制作など、挑戦してみたい分野はまだ数多く残っています。幸いにも、周囲にはエフェクトの専門家が何人もいるため、環境プロジェクトで行き詰まったときは助けを借りることができます。しかし、自分自身の手でエフェクトを操れるよう、日々少しずつでも技術の習得に努めています。

Old Workshop

★Old Workshop(5秒)

Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあれば おしえてください

私には、個人制作において常にモチベーションを保ち、飽きずに続けるためのシンプルなルールがあります。それは「仕事で専門としていることの真逆に挑戦する」というものです。例えば、仕事でキャラクター制作をしているなら自宅では環境アセットに取り組み、スタイライズ作品を手がけているならリアルな表現に挑むといった具合です。ただし、時には変化をつけて、キャラクターと環境の両方を1つの作品に統合することもあります。

私にとって最も重要なのは「作品を通じてストーリーを伝えること」です。だからこそ、そのストーリーを最も効果的に伝えるために、題材やワークフローを柔軟に調整しているのです。

★Darko Mitev Environment Generalist Demo Reel(1分53秒)

Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?

多くのアーティストと同じように、私も Facebook グループに参加しています。Ten Thousand HoursCG Character ArtsCG Environment Artist3D Modeling and Animation Group など。また、環境写真家や探検家のページもフォローしていて、例えば Rebecca Bathory Photography@abandoned_nordic(Instagram)などが好きです。

Ragnar (ラグナ―)

Q. 芸術的な目標はありますか?

芸術的目標は「昨日の自分を超えるアーティストであり続けること」です。現在はキャラクターやクリーチャー、環境制作において、リアリスティックかつシネマティックな表現の探求に力を注いでいます。このスタイルで語りたいストーリーがたくさんあり、それらは日中の仕事で手掛けるスタイライズされた作品との良い対比になっています。

Animal Behaviour Class - Jung Hoon Park Bear snow shot(環境、ルックデヴ、ライティング、コンポジットを担当)

★Animal Behaviour Class - Jung Hoon Park Bear snow shot(20秒)

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

伝統的なアーティストでは、レオナルド・ダ・ヴィンチ の比類なき技術力に深く敬意を抱いています。さらに、彼の「物事の仕組み」に対する飽くなき探求心には強く共感します。デジタルアーティストでは、David LesperanceMickael RiciottiDylan Ekren の作品に特に感銘を受けています。

Dublin 2047

★Dublin 2047 Trailer(2分29秒)

Q. 近年の作品についてお聞かせください

先ほども述べたように、リアリスティックな作品に焦点を当てています。たとえば、実験的な刑務所を舞台にした環境作品「The Experiment」を制作しました。そこでは囚人に対して非人道的な実験が行われるという設定で、レトロフューチャーを基調としつつ、ドラマチックな演出とほの暗いホラー要素を織り交せた世界観となっています。この作品はアニメーションとして仕上げ、物語の持つ不気味さと緊張感を動きによって演出しています。

★The Experiment(1分10秒)
★The Expeiment Breakdown(25秒)

 


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編集:3dtotal.jp