ライティング&プレゼンテーションのヒント10

傑作のスカルプティングに取り組んでいるなら、冴えないレンダリングで、その力作を台無しにしてはいけません! デジタルスカルプター James W. Cain氏が、ライティング&プレゼンテーションのための10のヒントを紹介します


James W. Cain
フリーランス デジタルスカルプター


今日では、作品のプレゼンテーション(発表)をする方法が数多くあります。そして、初心者だけでなく、ベテランアーティストでも、そのプレゼンテーションにおいて、挫けそうになることがあるでしょう。いい感じでスカルプトを終えた後、ZBrush の基本的な BPR レンダーだけで終わらせてしまうことは簡単です。今回は、テクスチャは抜きにして、スカルプト作品について述べたいと思います。表面のディテールや深さを強調して伝えるのに、ライティングとプレゼンテーションは特に重要です。

ここでは、デジタルスカルプトから最終イメージを制作するための10のヒントを紹介します。特定のソフトウェアパッケージやワークフローにこだわらず、レンダリングの基礎知識があることを前提として進めます。これらは、過去に自分の作品のプレゼンから私が学んできたことで、ライティングと仕上げの全般的な面にフォーカスします。一般的にプレゼンテーションは主観的なものですが、次のスカルプティングに役立つ何かを見つけていただければ幸いです!

ヒント1: エリアライトから始める

まず、スカルプトにハードなシャドウを作成するのは避けた方が良いでしょう。それらは、劇的かつ人工的に見えすぎることがあります(もちろん、それが狙いであれば別ですが!)。エリアライトはソフトなライトを追加できる素晴らしい方法で、配置と強度にも豊富なオプションがあります。

エリアライトでソフトなシャドウを作成

ヒント2: 3点照明のセットアップ

3点照明は最適なスタートです。私のスカルプトのライティングの初期設定においても、これが定番の手法です。まず、頭上に下向きのキーライトを配置、次に、シャドウのコントラストをコントロールする絶秒なフィルライトを追加。最後に、スカルプトの斜め後ろからカメラに向けてリムライトを配置します。これらの組み合わせによって3点照明がディテールをきれいに照らして、プロフェッショナルなルックになります。

3点照明の設定例

ヒント3: HDRI とカスタムライトの組み合わせを試す

イメージベースドライティングは単体でも素晴らしい効果を出せますが、追加のカスタムライトと組み合わせると、さらに上手く機能します。私は、大きなスカルプトに3点照明を設定する際、まず、フィルライトの代わりに Keyshot でHDRI ライティングを使います。微妙な効果をつけるため、HDRIの明度(Brightness)と露出(Exposure)を試した後、頭上に下向きの強いキーライトを追加してシャドウを作ります。

従来のライティングとイメージベースドライティングを組み合わせる

ヒント04: 強めのキーライトを入れる

メインライトで主要なシャドウや描写を作り出します。これを最も強く支配的なライトにしましょう(ディテールが飛んでしまうほど強くしてはいけません)。ほとんどの場合、このライトは頭上から下向きに設定しますが、たまに片側から、ごく稀に下から照らすこともあります。試行錯誤に時間をかけて、適切な位置を探り、スカルプトの焦点や特徴・造作を強調しましょう。

印象的にするため、強めのキーライトを入れる

ヒント05: ライティングに温度や色のコントラストを追加する

ライティングに温度や色を追加して、雰囲気やムードを調整できます。メインライトに強めの暖色を使う場合は、対比色の微妙な寒色をフィルライトやリムライトの位置に入れると上手く機能することでしょう。逆に、強めの寒色のフィルライトやリムライトでは、対比色となる暖色、または、中間色のライトにすると良いでしょう。

ライトの温度を変更した効果

ヒント06: ポーズと面白いアングルをつける

特に求められていないのに、スカルプトの完成イメージを正面ビューやTポーズでプレゼンするのは、力作を見せ方として魅力的ではありません! スカルプトのポージングに時間を費やし、さまざまなカメラアングル、ショットの決定に試行錯誤することは重要です。キャラクターでは、腕を自然なポジションに動かし、頭を傾けるだけでも大きな違いが出ます。胸像では、視線を動かし、肩を傾かせれば面白さが加わることでしょう。

スカルプトにポーズをつけると視覚的なアピールが増します

ヒント07: 微妙な被写界深度を適用する

被写界深度の効果を使えば、リアリズムやレンダリングのインパクトが増しますが、やり過ぎに注意しましょう! 結局のところ、好みにもよりますが、私は「過ぎたるは及ばざるが如し(less is more)」の精神を反映させることが、最適なアプローチだと思っています。

被写界深度が強めの設定(左)、微妙なアプローチ(右)

ヒント08: 最適なマテリアル

テクスチャなしでスカルプトをプレゼンするのであれば、最適なマテリアルを選ぶようにしましょう。オブジェクトの種類によって、特定のマテリアルが他のマテリアルよりも上手く機能すると分かることでしょう。ハードサーフェスにはプラスティックのように粗さ(roughness)の低いマテリアルが、胸像やキャラクターには粘土のようなマテリアルがよく合います。

作業に最適なマテリアルを選択

ヒント09: 最適なトーンと色

ヒントに従い、マテリアルに中間のトーンを設定すれば、ライトとシャドウをオフセットできることでしょう。トーンに関しては、シャドウとのコントラストになる明るさ、ライトとのコントラストになる暗さが必要です。ただし、明るくし過ぎるとハイライトがなくなり、暗くし過ぎるとシャドウがなくなるリスクがあります。

誤ったトーンのレンダリング例

ヒント10: 背景やフロアの使用

背景やフロアを使って、スカルプトを接地させ、奥行きを加えましょう。KeyShot では簡単に追加できますが、どんなソフトウェアでも簡単行えるのは、スカルプトの後ろにジオメトリを配置する方法です。

Modo の背景でライティングを設定

最終イメージ


翻訳:STUDIO LIZZ (Nao)
編集:3dtotal.jp