『Rajak – 優しい巨人』のメイキング

メディアモレキュール社のインターン Emilie Stabell 氏が、愛嬌のある巨人Rajakの制作方法を共有します(Maya、ZBrush使用)


Emilie Stabell

現在、Emilie Stabell 氏は学位の一環としてUKに滞在しています。メディアモレキュール社のインターンシップ生として働いていますが、卒業後はデンマークに戻る予定です 。
現在、Emilie Stabell 氏は学位の一環としてUKに滞在しています。メディアモレキュール社のインターンシップ生として働いていますが、卒業後はデンマークに戻る予定です 。

現在、Emilie Stabell 氏は学位の一環としてUKに滞在しています。メディアモレキュール社のインターンシップ生として働いていますが、卒業後はデンマークに戻る予定です 。

このチュートリアルでは『Rajak – 優しい巨人』の制作プロセスを共有します。使用したテクニックや難しかったポイントを説明しながら、イメージ制作を成功させるためのアドバイスとトリックを紹介します。さらに、Peregrine のツールYeti を使用したクールなファー(体毛)の簡単な作成方法についても触れ、ポスプロと見せ方の重要性ついてもお伝えします。このチュートリアルが皆さんに役立ち、作品の改善に貢献できれば幸いです。

ぴったりなコンセプトを探す

自分でコンセプトデザインをしないプロジェクトに取り組むのは、これが初めてです。やってみようと決意した理由は、コンセプトに関連する初期アイデアやスケッチが手元にない状態で、他のアーティストの考えを3D変換する作業に挑戦したかったからです。Brandon Tyler Cebenka 氏の美しい絵と出会って、「これだ」と直感しました。このコンセプトに含まれる形態言語(シェイプランゲージ)からカラースキームまですべてが、最近のアートで滅多に見られない魅力を放っていたので、3Dで生命を吹き込むことにしました。

Brandon Tyler Cebenka 氏のコンセプト『Rajak』

ZBrushでブロックアウト

Image Plane と ZSphere を基にして、ZBrush で基本形状を作成します。[perspective]をオン/オフの両方でコンセプトと比較し、プロポーションのチェックを続けます。そこそこのシルエットができたら、解剖学と骨格上の目印を加えていきます。解剖学を常に考慮して、モデルに重さと信憑性を加えるのに役立ててください。また後で、ファー(体毛)を追加するので、あまり骨太にスカルプトしないようにします。ファーによって、シルエットのボリュームが増すのを想定しましょう。

ZBrush でのモデリングプロセス

テクスチャリング

大まかにリトポロジをかけるには[四角ポリゴン描画(Quad Draw)]を使います。モデルのリギングやアニメーションはしないと決めていたので、[ZRemesher]でリトポロジをかけ、Maya で調整しました。テクスチャリングでは、いつも基本色でブロッキングを開始して、微妙なグラデーションを追加。その後、タトゥー、傷、斑点などのディテールを作成していきます。最後に、変化をつけるため最上位に写真のテクスチャによる微細なレイヤを追加します。全体的に、テクスチャリングのワークフローは、クリーンかつシンプルに留めます。テクスチャリングプロセスが半分過ぎたころ、モデルにポーズをつけるのが私の好みです。今回は、ZBrush の[Transpose Master](トランスポーズマスター)を使いました。

テクスチャリングの各プロセス(上)とテクスチャマップ(下)

ファーの作成

ファー(体毛)は、Peregrine のYeti で作成します。Scatterノードをメッシュに適用後、Growノードを接続してファーの全体的な長さを決定します。通常であれば、Groomノードを足して、手動で方向性、密集度、長さなどを決めていきたくなるでしょう。しかし、締め切りもあったので、ファーはすべてプロシージャル(手続き型)で作成し、ZBrush でエッジに磨きをかけることにしました。ZBrush で長さを決定するマップをペイントして、randomizer(ランダマイザー)と direction(方向)ノードを組み合わせて適用、希望するルックにしました。

追加ヒント:Yeti を学習したい場合は、Bjørn Blaabjerg Sørensen氏制作のYeti チュートリアル  をご覧ください。11 の詳細なチュートリアルに、このソフトで知っておくべき内容がまとめられています。

この画像から、Yeti のノードエディタで作成したファーのセットアップとビューポートでのルックを確認できます

レンダリングとコンポジット

ファーをしっかりと見極めていくには、レンダリングのテストを繰り返す必要がありました。FlippedNormals のセットアップを使用して、ライトを設定。V-Ray for Maya でレンダリングしました。最も大変だったのが、レンダリング、ファーの微調整と Photoshop での画像修正にかかる作業時間のバランスでした。時間の制約があったので、いつものワークフローと比べると、Photoshop での作業により多くの労力を費やしています。しかし、最終レンダリング後のポスプロを侮ってはいけません。私は法線(ノーマル)、反射、拡散、マットといったレンダリング要素を選択して使い、仕上げイメージを洗練させます。

コンポジット前の仕上がりイメージ。ポスプロの重要性がよく分かります

最終イメージ

コンポジット前/後の仕上がりイメージを見比べると、作品が大きく変わることが分かります。ファーでは、[指先ツール]で作業して、毛束をよりソフトで自然なルックにするため、エッジをぼかしています。肩と前腕には、通常のハードブラシで長く細い毛束を追加して、ソフトブラシとダークグリーンの色で腹部を隠しました。背景はかなり暗くして、キャラクターを際立たせました。最後に少し粗いレイヤを追加して全体をまとめました。

最終イメージ


翻訳:STUDIO LIZZ (Nao)
編集:3dtotal.jp