『Childhood’s Bravery – 勇敢な子ども』のメイキング

Giorgio Lorenzetti氏が、Think Tank Training Centre の学期末プロジェクトで作成した『Childhood’s Bravery -勇敢な子ども』について、その制作を解説します


Giorgio Lorenzetti

イタリア生まれの Giorgio Lorenzetti は、ローマの ISIA でインダストリアル/プロダクトデザインを学びました。しかし、その真の情熱はCGへと向いていたため、Think Tank Training Centre で学ぶためにカナダのバンクーバーへと渡りました。
イタリア生まれの Giorgio Lorenzetti は、ローマの ISIA でインダストリアル/プロダクトデザインを学びました。しかし、その真の情熱はCGへと向いていたため、Think Tank Training Centre で学ぶためにカナダのバンクーバーへと渡りました。

Think Tank Training Centre での学期末プロジェクトとして、私は『Childhood’s Bravery -勇敢な子ども』を制作しました。このプロジェクトの目的は、3Dの静止画の制作です(期間:5週間)。このメイキングでは、作品にかかわる体験談、プロセスの共有、そして、このプロジェクトに生命を吹き込んだアイデアと考え方を説明します。

コンセプト

プロジェクトの第一段階として、まずはコンセプトの選択です。これは、多くの理由から難しいプロセスになります。以下のことに留意してください。

①自分が好きなものを選ぶ(制作過程で情熱をなくさないように)
②挑戦しがいのあるものを選ぶ(できるだけ多くを学べるように。挑戦とはいえ、必ずしも複雑なものである必要はありません!)
③ストーリーを描く(最も重要な点はストーリーにあると私は思います)

私がインスパイアされたコンセプトは「DIXIT」というボードゲームの絵です。この美しいゲームは、言葉ではなく絵がベースとなっているため、インスピレーションの宝庫でした。特に注意を引いたのが「ドラゴンと対峙する子どもの絵」で、そこから多くのアイデアを得ました。

インスピレーションとなったイメージ © Libellud

ストーリーを探る

イメージだけでは不十分です。それはインスピレーションに過ぎません。私はストーリーを描きたくなったので、ブレーンストーミングを試みました。2分ほど時間をとり、白い紙にできるだけ多くの単語を書き出しました。たとえば ”子ども” と書いた下に、おもちゃ、ストーリー、寓話、勇ましい、小さい、子守歌、テディベア、絵、鉛筆、イマジネーション、クリエイティビティなどを加えました。

リストができたら、パズルのようにすべての言葉をつなげていき、「なぜ、この子どもはドラゴンと戦っているのか?」といった関係性や疑問に対する答えを見つけ出します。思い付いた答えは「ドラゴンに大切な何かを取り上げられた子どもは、立ち向かうことで対抗している」でした。大切なものすべてをドラゴンに取られてしまったため、子どもは危険を冒す必要があると思ったわけです。

ストーリーができたので、テディベアなどの面白い品々を追加していきます。テディベアは、子どものお気に入りのおもちゃで、「何があっても守り抜きたいもの」としました。子どもは、戦士のようにヘルメットをかぶり、勇ましさを象徴しています。この時点で、私は満足したので、シーンの大枠を作り始めました。

確固たるメッシュを作る

プロジェクトにおいて最も重要なことは、確固たるベースであり、それをどう生かしていくかです。すぐに ZBrush での作業を始めて、ベースメッシュや素晴らしいスカルプトを制作することも可能ですが、これは問題に直面することになるでしょう。

適切なスタートを切るためには、作業手順やワークフローの準備と計画が必要です。私の場合、作品をカートゥン調にしたかったので、制作過程の中で、ずっとそれを心に留めておきました。

この他の重要なプロセスは、手がけるシーンの中で最も重要なピースを探ることです。私の場合、それは「子ども」でした。シーンの主役は子どもなので、すべての要素はその周辺に位置付けるようにしました。

シーンの大枠を作りながら、おもちゃ箱などのディテール、時間帯を考え、ストーリーをさらに明確に理解していきました。

おおまかにシーンを作り出す

子ども

ZBrush で子どものスカルプトを始めた時、最も重要な部分は顔だと考えていました。鑑賞者の目を引くのは顔なので、カリスマ性、あふれる感情、小さなディテールも必要です。一方で、滑稽さや様式化も表現する必要があったので、スカルプト前にリファレンステーブルを作りました。

子どもをスカルプトする

ドラゴン

シーンにおいて、子どもの次に重要なピースであり、敵役です。形を決めあぐねていたために4回ほど違う形にモデリングしました。多くのアドバイスを得て、最終的に求めていた形にたどり着きました。「子どもの想像力から飛び出したドラゴン」という事実をふまえ、恐怖色は抑え、丸みを帯びた形を多く取り入れました。

ドラゴンの大枠作り